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【第六話】超能力の可能性、超能力の危険性

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【第六話】超能力の可能性、超能力の危険性

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 数分前 迅竜 第二格納庫

「……はぁ……っ……! はぁ……っ……!」
 彩竜のコクピットで庭坂 まりあ(にわさか・まりあ)は荒く息を吐いた。
 パートナーの国吉 遥(くによし・はるか)は既に気絶しかかっている。
 超能力を持つ遥には、機体の増幅機能による過剰なフィードバックがかなりの負荷になっているのだろう。
 いわば超能力のエネルギーが逆流してくる状態は、遥に相当のダメージを与えていた。
 
 それとは逆に、超能力者や魔法使いと違って多量の投薬が必要なまりあもまりあでかなりのダメージを強いられているようだ。
 荒く息を吐いたのを最後に、コンソールへと突っ伏す。
 
 それを期に、二人の集中力が切れたのか、システムダウンする彩竜。
 外部からモニタリングしていた整備班の面々が一斉に駆け寄る。
 強制解放されたコクピットハッチから担ぎ出される二人。
 彼女達へと一人の女性が駆け寄る。
 整備班に混じって様子をモニタリングしていたアヴドーチカ・ハイドランジア(あう゛どーちか・はいどらんじあ)だ。
 医療班班長である彼女は、すぐさま的確な指示を出しつつ、予め用意しておいたストレッチャーに二人を寝かせていく。
 そして、同じく様子をモニタリング、もとい監視していた大熊 丈二(おおぐま・じょうじ)ヒルダ・ノーライフ(ひるだ・のーらいふ)に手早く指示を出した。
 
「ホラ! とっとと二人を医務室まで運んで! 監視役のアンタたちがやるんなら防犯体制とやらの上でも問題はないだろう!」
「了解であります!」
「了解!」
 アヴドーチカの指示に敬礼で応えると、丈二とヒルダはすぐさま二人を運んでいく。
 
「さて――」
 空になった彩竜のコクピットから目を移すアヴドーチカ。
 その先にいるのは交代要員であるウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)清 時尭(せい・ときあき)の二人だ。

「はっきり言って。この機体に乗るのは医者として勧められない。正直に言えば、たった今、あんな状態になったパイロットが目の前で担ぎ出されてるのを見ておいて、また別の誰かが乗ろうとするのを看過するのも気が進まない」
 目を逸らさず、アヴドーチカは言う。
 持ち歩いているバールを右手で持ち、それを掲げて見せるアヴドーチカ。
「本当だったら、このバールでひっぱたいてでも止めたい所だけどね。そうはいかないんだろう?」
 
 ウォーレンと時尭は同時に頷いた。
「この機体は念竜と並び、“ヴェレ”に対抗できる数少ない有効な手段」
 そう前置きした上で、時尭は静かに、そしてはっきりと言った。
「希望の芽、ならぬ目を潰される訳にはいかないでしょう。なればこそ、この機体をここで眠らせておくわけにはいかない」
 時尭が言い終えるのを待ち、ウォーレンのもう一人のパートナーであるジュノ・シェンノート(じゅの・しぇんのーと)もアヴドーチカに頼み込む。
「俺からもお願いします」
 そして、ジュノはウォーレンへと向き直った。
「馬鹿ですね。大人しく裏方してれば良いのに」
「辛いのは承知の上、覚悟は出来ている」
「――知ってますよ。貴方は仲間の為に動く時こそ。頭と状況把握が冴えるお馬鹿さん」
「……うむ」
「だから、今貴方は分かってません。まだ体験した事のない事を推測など不可能」
「たしかにな……」
「でも一番辛い状況に成った時こそ仲間の為に模索し足掻くのでしょ。弱音など死んでも許しません」
 
 そう言って、にこりと笑うジュノ。
 
「誰かの為に生き残りなさい。貴方が守りたい人が守りたい者達の為に」
 
 ジュノの言葉に対し、ウォーレンははっきりと答えた。

「“ヴェレ”を倒す要になる」
「ええ、情報科の意地を見せる時です、さぁ情報を力に!」