イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

リリー・ペラドンナの戦い

リアクション公開中!

リリー・ペラドンナの戦い

リアクション

「ウェスペル!っぐ!」
 一瞬だけリリーの声が戻った、だがすぐさま彼女は男の声で言う。
「よく戦ったなリリー。すまなかった。背教者などと言ったことを謝るぞ。後は私に任せるがいい」
 それは、ドグマ教のボスのウェスペルだった。
彼はペステの中に魔力化した自分の意識を流し込んでいたのだ。
「ちょっと待って!これは私の戦いだわ、余計な手出しはしないでちょうだい」
「いや。もはやお前だけの戦いではない。私たちドグマ教の戦いだ。お前は気持ちは分かった。お前はドグマ教の一員だ」
「ぐっ!これは一体どいうつもり……なっ!体が勝手に!ネックレスが!ぐわあああ!」
 リリーは苦しみながら首のネックレス引きちぎった。そして中に放り投げると炎を放ちネックレスを消滅させた。
「……っく!言ってることがおかしいじゃない!ネックレスがなくなったら私は!」
「ドグマ教の一員と認める。だが生かしておくことはできない。戒律を破ったお前には死の罰を受けてもらう」
「なんですって…・・・」
「ネックレスを失ったお前は死ぬ。だがたとえお前が死んだとしても、魂だけは永遠にドグマ教徒だ」
「……なるほど、私が勝とうが負けようが生かしておくつもりはなかったようね!」
「大事なのは命ではない。信念だ。お前の信念は確かに聞き入れた。お前は勝ち、お前は死ぬ――後は私に任せるがいい!相応しい最後を飾ってやる」
「っく!まさか私が操られるなんて……逃げなさい!あなたたちじゃウェスペルに適わない!」
 リリーは必死に抗うが、
「来い!契約者!!」 
 再び現れたウェスペルの意思にかき消されてしまう。彼女は体から黒いオーラを放ち、剣を握って契約者を睨み付ける。

「ここは私に任せて!」
 意気込んだクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)は手にした【熾天使の焔】を大きく振りかぶってリリーへ向かった。
「たああーっ!」
 掛け声とともに斬りつけるがリリーは回避する。戦いが始まった。剣と剣がぶつかり、そのたびに花火が散る。
「リリーさんから離れて!」
「断る。私はリリーを勝利させる!ドグマ教は契約者などに負けぬ!」
 クレアは【ライトブリンガー】を放った。しかしリリーは攻撃を回避し詰める、そして魔力を貯めたその手をクレアにかざした。
【エンシェントブレス】で相殺を試みようとするが間に合わない、至近距離で炎が炸裂、勢いのままに吹き飛ばされ地面に転がった。
「大丈夫か!」
涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)が慌てて駆け寄った。問題ない。クレアに火傷も傷跡もない。【オートバリア】の効果はまだ続いている。
「涼介さん……ええ、なんとか」
「よかった。でも……よくもやってくれたな!」
 涼介は睨み付けるが相手は怯まない。
「ふむ。やはりリリーの肉体ではこの程度か……」

■■■

「私が相手だ、いくぞ!」
 涼介は呪文を唱える。彼の手前に魔方陣が現れる。
そこから姿を現したのはミョルニル握った大男。北欧神話のトールだった。
「行け!トール!!」
 トールはリリーへ向かって走る。
そして手にしたハンマーを次々と振り落とす、だが回避される。ハンマーは標的の体スレスレのところに何度も落ちる。
「舐めるな。そんな大振りの攻撃など当たるものか」
 トールはその場で相手を見据えた、そしてハンマーを頭上高く掲げ力任せに振り落とした。
リリーは握った剣を下から斬り上げる。
 武器がぶつかった、互いの武器に秘められた魔力が衝突し、放たれた眩い光で2人は白く染まる。
衝撃に耐え切れず粉々に砕け散る武器。
 トールは驚いた。そのとき一瞬隙が生まれた。
「はああぁっ!」
 炎の魔法を放つ、直撃すると瞬時に火だるまにしトールは跡形もなく消え去った。
「――呪文?」
 リリーは気がついた。数メートル先で涼介が【禁じられた呪文】を唱えていることに。
「はあああっ!!」
 涼介の両手から【トリニティブラスト】が放たれる、眩い光線はリリーへと突き進み彼女に直撃した。
「何!」
 涼介は声を上げてしまった。いや、違う。直撃ではない。
【トリニティブラスト】が押し止められていた。リリーの直前のところで停滞している。
「私を気絶させるつもりだったか!甘いぞ!」
 魔法で攻撃を受け止めているのだ。片手で受け止めている。しかも余裕の表情だ。
彼女の放つ魔法もまた【トリニティブラスト】だった。
 光線が押し返される。涼輔の右足が一歩後退してしまったが、なんとか踏みとどまる。
リリーはさらに魔力を込める、涼介はすけは負けじと魔力を加える。
「笑止。その程度の力で私をたおすつもりか、ぐっ!!」
眉間に皺がよった、もう片方手を突き出し、両手で涼介の攻撃を抑え始めた。
「なんだ!?この魔力!――先ほどよりも数倍の!?」
「負けないで涼介さん!」
 涼介の傍らに立つクレアが言った。彼女も彼と同じように手のひらをかざして魔法を放っている。
 クレアだけではない。涼介の近くに契約者たちが互いに集りエネルギーを供給していた。
「――うぅ!でもどうしよう!だってこのまま押し切ったら!」
 美和が不安げに言ったそのときだった。

「構わない!そのまま攻撃をしなさい!」

 突如リリーの声が響いた。ウェスペルの精神支配に抵抗するリリーの声だった。
「大丈夫!私は奈落人よ!この世界の人間よりも魔法の耐性は優れてる。
ダメージはあるかもしれないけど魔法の直撃で命を落とすことはないわ!」
「リリー!」
 優里は叫ぶ。
「私を信じて!」
 リリーも叫んだ。
「――このまま押し切ろうみんな!」

■■■

互いの魔力は拮抗していた。どちらかが少しでも気を緩めればそれが最後だろう。
「っく……耐性は優れているだと!命を落とすことはないだと!抜かせ、そんな嘘をついてどうするつもりだ!」
「こうでもしないと私の力に押し切られるわ。私の力でみんながやられるなんて絶対に嫌」
「ぐっ!負けるか!私は勝つ!お前はドグマ教の一員だ、私が勝利させてみせる!」
「ほんと昔からね。頭がいいくせにホント馬鹿。あなたのこと嫌いじゃなかった」
そしてリリーは一言告げる。
「ありがとう」
「リリー!」
彼女のその一言で隙が生まれた
「ぐっ!不覚ッ!!」
契約者たちの【トリニティブラスト】に押し込められリリーの体へ直撃した。