イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

学生たちの休日18

リアクション公開中!

学生たちの休日18

リアクション

    ★    ★    ★

「さあ、ミッドナイトシャンバラ。楽しいお便りが続いていますけれど、ここでゲストにおいでいただきましょう。スーツアクターで、仮面ツァンダーの中の人、風森 巽(かぜもり・たつみ)さんです」
「どうも、中の人です」
 ここは、空京にあるラジオシャンバラのスタジオ。ミッドナイトシャンバラの生放送中です。いつも通り、シャレード・ムーン(しゃれーど・むーん)の司会で、番組が進んでいます。
「風森さんは、先日、著名なアクション監督さんからインタビューを受けたとか」
「はい。地道な活動の結果だと思っています」
「凄いですねえ。いったい、どんなお話をなされたのですか?」
「今まで演じてきたヒーローの話とか、プライベートを少々……」
「プライベートですか? それはちょっと気になりますねえ」
「いやあ、それがちょっと調子に乗ってしまいまして、意中の人はいますかと聞かれたときに、その場の雰囲気でプロポーズを……」
「なんと!」
「まあ、オフレコだと思ったんですが、その後、そのままノーカットでネット配信されてしまいまして……」
「もう、取り返しがつかないですね。ご愁傷様です。先日のゲストだった吉井 真理子(よしい・まりこ)さんが叫びそうな話題ですけれど。それで、どんなことを言ったんですか?」
「いや、それは、勘弁してください」
 必死に黙秘する風森巽ですが、そのとき、調整室でバイトをしていたジェイムス・ターロンがシャレード・ムーンに合図を送ってきました。
「あっ、どうやら、その動画が用意できるようです。音声だけになってしまいますが、さっそく聞いてみましょう」
「ちょ、ちょっとぉ!!」
 風森巽をガン無視して、件の動画の音声が流れ始めました。

『で、この間、知り合いの結婚式に行ったときに、うっかり花嫁のブーケをキャッチしてしまったんですよ。いつもの撮影の癖が出たと言うかなんと言うか、ほら、よく武器の受け渡しとかで空中キャッチするじゃないですか』
『ほほう、それは分かりますね。空中換装は、男のロマンですから』
『そうでしょう』
『しかし、それは、その場にいた女の子たちから酷く恨まれたのでは?』
『そうなんですよ。それで、早く結婚して、自分たちにブームを投げろと拳で説得されたわけです』
『拳で説得ですか?』
『ええ。それは、もう、ボコボコに』
『パラミタの女性は、結構過激なんですね。それで、結婚するんですか?』
『ええっと、それは、ココさん次第で……』
『それはおかしいでしょう。ヒーローたるもの、自分からプロポーズせねば。そんなヒーローでは、私は撮影しないですね』
『い、いや、それは……。今、プロポーズしようと思っていたんですよ、今』

「完全に、誘導尋問に引っ掛かっていますね」
「だから、止めてください、止めてえー!」

『ココさん、愛してます! 結婚しましょう!!』

「ああ、言っちゃいましたねえ」
「ああああ……」
「でも、結婚したいって言うのは、本当のことなんでしょう?」
「ええ、まあ……」
「じゃあ、ここはびしっと決めちゃいましょうよ」
「ええっと、じゃあ、あらためて言います! ココさん、結婚してください!!」
「はい、今のことは、しっかりと全シャンバラに流れました」
 またもや誘導尋問に引っ掛かって、まさに退路を断たれた風森巽でした。

    ★    ★    ★

「ミッドナイトシャンバラ、最後はゲストコーナーのお二人目です。魔法少女アマテラスこと、赤城 花音(あかぎ・かのん)さんにいらしていただいています。こんばんは」
「こんばんはー」
 シャレード・ムーンによって、今度は赤城花音が紹介されました。
「赤城さんは、最近ミュージックファイターとして売り出し中ですが、どのように作曲をなさっていらっしゃるのでしょうか?」
「ボクが楽曲を創り続けてこられたのは、音楽の世界がフロンティアだと思ったからかな。だから、挑戦することに燃えていたんだよ。振り返って言えることは、デビューしてからは、それまで一ヶ月必要だった作業が一週間、一週間の作業が、六から八時間でできるようになっていったってこと。自分なりに勉強になったことは多いと思うよ」
「プロの実感というわけですね。では、最近の活動はどうでしようか?」
「最近のことといえば、グランドアイドル決定戦の結果は、率直に悔しいと思ったよ。まだまだ、創意工夫と試行錯誤の余地は残っているんだ。課題としては、作曲作業に余裕を作って、横の繋がりと関係を密にすることかな? だから、これからも、このフロンティアの世界へ、ボクは挑んで行きたいな!」
「それは、頼もしい限りですね。そろそろ時間ですので、赤城さんの曲をかけつつお別れしたいと思います。お相手は、私シャレード・ムーンと……」
「アイ・アム・ミュージックファイター! 赤城 花音でした☆♪ ありがとうございます!」

    ★    ★    ★

「よし、OKですよ」
 番組の最後に赤城花音の曲が流れるのを確認してから、調整室で赤城 リュート(あかぎ・りゅーと)がOKをだしました。
 こうしてラジオ番組に生出演して曲をかけてもらえることは、アーティストとしてはとても大事です。欲を言えば、テーマソングとして採用してもらえればベストではあるのですが。まあ、そうそう贅沢を言ってもいられません。
「おつかれさまでしたー」
 シャレード・ムーンや大谷文美らのスタッフにお辞儀をしながら、赤城花音がスタジオから出てきます。
「よかったですよ。お疲れのところすまないけれど、次への移動に時間がないんです。急ぎますよ」
「は、はい。では、またよろしくお願いいたします」
 赤城リュートに急かされて、赤城花音は再度お辞儀をすると、急いでラジオシャンバラを後にしました。

    ★    ★    ★

「えっと……、またやっちまった?」
 空京のホテルで目を覚ました水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)は、隣ですやすやと眠っているマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)を見て頭をかかえました。
「というか、やられた!?」
 曖昧な記憶を手繰りよせて叫びます。
 確か、出張先の空京で、そのまま休暇に突入して、二人でショッピングを楽しんで、美味しい物を食べて、のんびりとホテルに帰ってきたところで……、パートナーにヒプノシスをかけられたあ!!
 で、じきに目を覚ましたわけですが、そのときはすでに全裸で、何がなんだか分からないうちに……。
「あうううう……」
 なんで最近はこのパターンなんだと、自己嫌悪半分、まんざらでもない気持ちが半分……。もう、どうしていいかよく分かりません。分かりませんから続きをしましょう、そうしましょう。
「んっ? カーリー?」
 マリエッタ・シュヴァールも目を覚ましましたが、この状況はまんざらではないようです。むしろ、計画通り?
 ということで、暗転。

「ああ、また……」
 自己嫌悪に陥りながら水原ゆかりがシャワーを浴びていると、部屋の中からマリエッタ・シュヴァールの声が聞こえてきました。
「ねえ、カーリー……あたしのこと、好き? いきなりこんなこと聞かれて、戸惑ってる? そうよね、あたしたち女同士だし、普通、こんな風に愛し合ったりしないし……。でも、あたしは……、あたしは、カーリーが好き。あたし……カーリーをずっと愛していたい。カーリーは、あたしのこと、好き?」
 その言葉に、ついに来ちゃったと壁に頭を打ちつける水原ゆかりでした。
 どうしよう……。