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10年もしないうちに


 2024年9月時点で十九歳だった天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)は、その後大学を卒業した。
 卒業後彼女はシャンバラを出て、かねての予定通り世界中を旅していった。
 色々なものを見て回ること数年、ふと受けた電話は恋人のイングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)からのものだった。
「百合園女学院から、お茶会の招待状を頂きましたの。結奈さんもご一緒にいかがかしら?」
 誘われて、結奈は二つ返事で了承した。
 旅をしている時でもこまめに連絡を取っていたが、直接会うのは久しぶり。
「楽しみだなぁ」
 結奈は早速荷造りを始めてシャンバラへ向かう。
 イングリットに会うのも久しぶりだったが、シャンバラも久しぶりだった。そしてヴァイシャリー、百合園女学院はもっと久しぶりだ。
 懐かしい母校の門を潜ると以前より少し大人になったイングリットの笑顔が迎えてくれた。
「いんぐりっとちゃん、久しぶり!」
「ええ、本当に。なかなか会う機会もなくて……しばらくはヴァイシャリーにいらっしゃるのでしょう?」
「うん、まだどれくらいかは決めてないけど」
 イングリットに会場である中庭まで案内されると、
「懐かしいね。今日はゆっくりしていってね」
 校長桜井 静香(さくらい・しずか)ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)も微笑んで迎えてくれた。
 他の生徒たちの見覚えのある顔は少しずつ年齢を重ねているのに、二人の姿は変わらないように見えるのは不思議だった。
「きっと長旅でお疲れですわね、今お茶をご用意致しますわ」
 イングリットの隣の席を空けてもらって結奈はそこに座ると、在校生にいれてもらったお茶とお菓子を食べながら、イングリットに旅の話をした。
「旅の間に色々なものを見たんだよ、電話でも話したけど、オーロラとか、とある秘境を探検したり」
「どんな冒険をされたんですの? ずっと詳しく聞きたいと思っていましたのよ」
「それはね――」
 話をしながら、イングリットにもたれかかったり、お茶のお代りを貰ったり、お菓子を食べさせてもらったり。
 旅ではできなかったこと、イングリットにしてもらいたかったことをしてもらって、存分に甘える結奈だった。