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【DarkAge】空京動乱

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【DarkAge】空京動乱
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●塔の高みへ

 ルカルカ・ルーを先頭にしたレジスタンス部隊は、『塔』と呼ばれるテレビ塔に突入した。
 警備の量産型を一掃して扉を閉鎖し、わずか数分の休息を彼らは取っている。
 ダリル・ガイザックはゴーグルの目をルカルカに向けた。その顔はどことなく、金鋭峰団長の側近であった羅英照参謀長を彷彿とさせるものがあった。
「計画通り我々はここで別行動を取り、コンピューターシステムの端末を探す」
 ダリルは端末を発見次第その電子防壁を壊し、自分を管理者と誤認させた上で『電子変化』して放送システムを乗っ取るつもりだ。
「頼んだよ」
 ルカルカは話しながら、腕の傷を包帯で縛っていた。幸い弾丸がかすっただけだ。それ以外は五体満足、コンディションとしてはこれ以上のものはない。
「でも大丈夫? 思った以上に敵の反応が早いけど」
「アイビスがいる」
 ダリルが言うと、彼のかたわらのアイビス・グラスがうなずいて見せた。
「まだ敵は、アイビスつまり『クランジσ(シグマ)』が我々についたことを把握していない。把握したとしても、この状況を考えればシステム全体への反映は時間がかかる。セキュリティを抜けるのは容易だろう。俺たちはむしろ、有名人のルカルカと一緒でない分行動しやすいはずだ」
「いやあ、面と向かって有名人とか言われると照れるね。戦前の表現なら『セレブ』ってやつ?」
「ならもっと現実味のある呼び名にしてやろう。要するに『お尋ね者』だ」
「……急にセレブ感がなくなった」
「笑えない冗談言ってる間はねぇぞ、さてどうやら……ここまでたどりつけたのはこれだけか」
 カルキノス・シュトロエンデは室内のメンバーを見渡した。
 ルカルカとダリル、アイビス、カルキノス、夏侯淵、そしてリーズ・ディライド、小尾田真奈、仲瀬磁楠、ファイス・G・クルーンも一緒だ。そうそうたる顔ぶれではあるが、当初の予測からすれば随分数が少ない。心許ないのは否めなかった。
「いや待ってくれ。まだおるで、頼もしい援軍が」
 七枷陣が戻ってきた。彼に続いて姿を見せたのは、『ツァンダ解放戦線』の四人だ。
「お久しぶり、ここへの近道はリュシトマ少佐……ではなく『伯爵』から事前に入手しておいたわ」
 小鳥遊美羽がそう言って出した手を、ルカルカは両手で包み込むように握った。
「ありがとう。ここで落ち合うことができなければ、ちょっとキツい展開だったかもね」
 美羽の後ろにはベアトリーチェ・アイブリンガーとコハク・ソーロッドが立っている。
 ここでベアトリーチェとコハクは、一歩引いて道を開けた。四人目の同志がやってくる。
 ふたりの間から現れた姿に、ルカルカは無意識的に直立して敬礼を見せていた。
「ルカルカ・ルーであります! 本日は亡き団長の名代として、本作戦の指揮を執っています!」
「ご苦労……と言いたいが、おいおい、よそうぜそういう堅苦しいのは。昔みたいに気楽に呼んでくれりゃいい。さて、金団長みたいなカリスマ性は俺にはないが、自分なりにやれることはやらせてもらおう」
 もはや紹介の必要はないだろう。彼は山葉涼司、蒼空学園の旗頭だった男だ。
「ご謙遜を、山葉前校長ならサプライズゲストとして十分すぎるくらいです……」
 と言いかけて、涼司が格式張った応答を嫌がっているのを思いだしルカは語尾を変えた。
「……いや、十分すぎるくらいよ」
「さあね。ところで、実はちょっと前から『前校長』ってのは返上したんだ」
「え、じゃあなんて?」
 すると涼司は、白い歯を見せて笑ったのである。
「今の肩書きは『校長』だ。本日俺は、蒼空学園の復活を宣言する! ……って、キメすぎか?」
「気に入ったわ、その答」
 ルカは改めて集まったメンバー一人一人の顔を見る。
 ――主力が集まっている。レジスタンスも、解放戦線も。
 ここで仮に全滅したとすれば、抵抗活動は大きく減退することだろう。しかし、ユマ・ユウヅキらメンバーの一部は、あえて基地に残し戦力として温存している。自由を求める火が、消えることはないはずだ。
「さて、行動開始よ」