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女王危篤──シャンバラの決断

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女王危篤──シャンバラの決断
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御神楽 環菜

 諸葛亮著 『兵法二十四編』(しょかつりょうちょ・ひょうほうにじゅうよんへん)は小人の鞄や使い魔を使って、囚われているカンナのもとまで携帯電話を届けようとした。電話で彼女に経緯を伝えて、アムリアナ女王へのメッセージをメールか手紙に書いてもらおうと考えたのだ。
 それを援護する為、風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)がナラカ人の注意を引きつけ時間を稼ごうとする。
 しかし小人や使い魔の能力では不可能だった。カンナは具体的にどこにどうやって囚われているのかも分からず、また携帯電話が通じるかも分からない。
 また優斗の行動は、カンナ救出事態を失敗させかねない危険な行動だ。
 そもそも、そんな事が可能であるなら、女王へのメッセージよりも、まずカンナが助かるように努力すべき状態なのだ。
 普通に話すことができない相手からメッセージをもらうのは、やはり無理だった。

「環菜先輩の『死んでも諦めない意志』をジークリンデさんへ伝えてあげて欲しいのに……」
 優斗はナラカの闇を見つめ、ため息をついた。

 そんな優斗の近くで、影野 陽太(かげの・ようた)は環菜救出の時を辛抱強く待っていた。実際には待つだけでなく、彼も救出に動いていたのだが。
 陽太は、携帯電話の日時を確認する。もう何度目になるか。帝国への使節団の出発は、迫っていた。

 その頃、陽太のパートナーノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が急遽、使節団特使砕音・アントゥルース(さいおん・あんとぅるーす)を訪ねていた。
「おにーちゃんがメッセージを持ってくるまで、使節団の出発を待ってもらえない?」
 だが、横で聞いていた従龍騎士バルレオスが反対する。
「そういう訳にはいかぬ。現地では龍騎士団が守りを固め、使節団の到着に備えている。期日に間に合わぬメッセージの為に、我が軍が予定を変える事はない」
「ええ〜」
 困った様子のノーンに、砕音がすまなそうに笑いかける。
「御神楽元校長のメッセージの代わりに、少し前に影野が俺に送ってくれたメールを持っていくよ。
 もちろん内容は俺宛なんだが、女王の為に心を砕いている人がいる標(しるべ)になるだろう。
 影野には、焦ることなく確実に、皆が無事に元校長を連れて戻ってこられるように、と伝えてくれないか?」
「おにーちゃんに話せばいいのね? うん、任せて!」
 ノーンは元気に答える。
 なお、陽太のメールにはこうあった。
「お久しぶりです、無事ご回復されたとのことで嬉しく思います。早速ですが、女王宛のメッセージをノーン・クリスタリアという人物に託してお渡しする予定です。その際には、よろしくお取り扱いいただきますようお願いします。
 追伸 ろくりんぴっくの際には非常にお世話になりました。あの時いただいたメールのおかげで生きる気力を保つことが出来ました、本当に感謝しています。もう二度と彼女の側から離れないつもりです」