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女王危篤──シャンバラの決断

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女王危篤──シャンバラの決断
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桜井 静香


 旧シャンバラ宮殿近くの大荒野。大火山アトラスの麓では、トラックよりも巨大な鋼鉄のウサギが跳ね回っていた。百合園女学院に配備されたイコン、キラー・ラビットである。
 西シャンバラ王国の軍がやってくる前に、大急ぎで訓練しているのだ。
 その中には百合園女学院校長桜井 静香(さくらい・しずか)操る、静香専用キラー・ラビットの姿もある。
 跳ね飛びまわる巨大ウサギを背に、百合園生は告げた。
「桜井校長は訓練中です。貴方のご用件は後ほど、私から校長にお伝えいたします」
 東シャンバラ・ロイヤルガード真口 悠希(まぐち・ゆき)は思わず「え」と小さく声をもらす。
「でもボク、静香さまから女王さまへのメッセージを託していただきに来たんです。
 ボク……例え至らなくても、どんな辛い事にも正面から向き合う……自分を変えるって決めたから……」
「ならばこそ、貴方は校長に会ってはなりません」
 百合園生は冷然と告げる。食い下がろうとする悠希に、彼女は告げる。
「校長にはメッセージの依頼があった事はお伝えしておきます。ご返事をいただくまで、しばらくお待ちください」

 荒野に設営されたテントの中で、悠希はパイプイスに座り、自身の女王へのメッセージをしたためる。
 セレスティアーナが今も皆と一緒にいて無事な事、それらはかつてジークリンデが彼女を守ってくれたからだと思う事を書きつづる。

「あの時、ボクも少しでも助けになれて……今、ボクが他の方の力になれる存在になりたいと志してるのも、この出来事が原点でした。
 貴女の志は、ずっと忘れずに生きていきます」

 心の整理とつけて手紙を書き終えた頃、悠希のもとに静香が女王に宛てた手紙が届けられる。
「静香さまの心からのメッセージ、必ず無事に届けます」
 悠希は大事そうに手紙をしまうと、使節団が待つ空京に向けて出発した。