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女王危篤──シャンバラの決断

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女王危篤──シャンバラの決断
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金 鋭峰

 教導団の部隊は、旧宮殿に向かう西シャンバラ軍の中核だった。
 攻撃力では戦闘機にあたる天御柱のイコンが目立つが、宮殿内部への突入、兵站の構築、輸送等の軍事作戦において必要な事物は、シャンバラ教導団が担っている。
 本部がおかれたテントでは、金鋭峰(じん・るいふぉん)団長が偵察部隊からの情報を参謀たちと共に確認していた。
 軍議を終えた団長に、西シャンバラ・ロイヤルガード皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)が意見を具申に来る。
「多忙な中、時間を裂いていただき感謝いたします」
 伽羅は改まった口調で述べる。まず簡潔に、使節団が女王へのメッセージを集めている事を説明した。
「これに団長が率先垂範して女王を励ますメッセージを送り、また団員から同様のメッセージを募るべきではないでしょうか?」
 団長は鷹揚にうなずいた。
「うむ、要請は来るだろうと思っていた」
 彼は西側のロイヤルガードの名誉隊長でもある。これで誰からもメッセージの要請がなかったら、かなり寂しい。
「だが、団員から広く求めるとは?」
「巷間の、教導団に対する謂れのない単独主義批判への具体的反駁となりましょう」
「多くは、教導団がシャンバラ国軍となる、他校とは異なる立場だと理解していないものだがな。教導団は国軍に移行後、シビリアンコントロールを受ける。現在はそこに至る過渡期だ。
 だが、使節団が言うアムリアナ女王への施術は、広報以上の効果が認められるのか?」
 団長の問いに、伽羅はかしこまる。
「砕音特使の見解が正しければ、ッセージが不足すれば理子代王のパートナーロストの危険があり、その場合、理子代王に及ぶ心身の危険は西王国として看過しがたいものがあります。
 また特使見解の真贋に拘らず、結果的に女王の身柄が危機に陥れば、教導団がさらに謂れのない非難を浴びる恐れもあるでしょう」
「ならば、私及び団員がメッセージを出さぬ理由はないな」

 多忙中につき、伽羅は持参したデジタルビデオカメラで、その場ですぐに金鋭峰団長のメッセージを収録する。
 団長は、教導団をシャンバラとその女王の剣であり盾とする為に誠心誠意、邁進してきた事を語り、女王の安息を願った。
 また戦いに際しての決意を固める為と、団員各員に女王へのメッセージが募集された。
 集まったメッセージのうち、地球人の将官や士官見習いのものは、団長への迎合や上官から命令されての「言わされている感」が表に出ているものがあり、後に伽羅がそれらを省く処理をする事になる。
 一方で、多くのシャンバラ人兵士たちは信心深く、素直にアムリアナ女王に日頃の加護への感謝をメッセージに込めていた。