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リアクション
買い物を終えた一同は、カフェで少し遅い昼食を取っていた。
「雅羅さんはただ大きすぎただけです。気にする程の事ではありませんわ」
チェルシーがパスタの最後を器用にフォークに巻きつけながら、机におでこをつけて撃沈している雅羅を慰める。
先ほど雅羅が粗相した服は、チェルシーが修理代込みで買い取って弁償したそうである。
「そうだな……俺達はすんなり体格で服を選べるが……おまえ達は大変だな」
パスタを既に食べ終えたカイルは、洋酒をたっぷり利かしたチョコレートケーキを楽しんでいた。こう見えて実は甘党である。
「雅羅? 私と瑠兎子は止めようとしたのよ? チェルシーと貴女は違うんだからって……」
理沙はそう言って、紅茶を口にする。
「ふふっ、修学旅行というのは賑やかで楽しいですね〜」
ノアが一同を見渡す。
「ピッツアはイタリアじゃ夜の食べ物だから、昼間出す店はあまり美味しくないよ?」と店員に言われた夢悠は、カルボナーラを食べていた。凹んだ雅羅が気になるが、どういう言葉をかけていいかわからない。
夢悠は助けを求めて、カルボナーラを静かに食べ終えた瑠兎子を見る。だが、様子がおかしい。
「ところでお姉ちゃん、なんかあったの? いつもよりテンション低い気がするんだけど?」
瑠兎子に小声で尋ねる夢悠。本来の瑠兎子であるならば、先程の雅羅胸爆発事件等、体液全放出で喜ぶべき事案なのに。
「それは……強いて言えば、秋だから!」
「え?」
「ただ。最近、雅羅ちゃんへの接し方を変えたいと思ってるの。ワタシの過度なスキンシップ(という名のセクハラ)が、ちょっと、ちょーっとだけ! 雅羅ちゃんの迷惑になってるのは自覚してるのよ。だからまず、修学旅行中は自粛するの」
「ええええ! セクハラやめるの!?」
「セクハラ言うな!」
小声でやり取りする二人。テーブルの下で瑠兎子の足が夢悠の足を思いっきり踏む。
「イタッ……(…イタリア崩壊の兆しじゃないよね)まぁ、いつまで続くか……」
「だけどさっきみたいな雅羅ちゃんを見ていると……見ていると(雅羅の胸を凝視)……もう(胸)、もう(巨乳)、もぉう! もぉう!」
と、理性でパドスを抑えきれず雅羅の胸へ手を伸ばそうとする瑠兎子。
「牛か!」
と、瑠兎子の頭へチョップする夢悠。
「仕方ないの、ワタシは雅羅プリオンに侵されているのだから……」
「ギリシャの話じゃないの? それって?」
「(まさか狂乳病? でも、変に禁欲されると、後の反動が怖いな……)」と思う夢悠に、理沙が話かける。
「あ、そうだったわ。夢悠?」
「え? 何?」
「私がカラカラ浴場付近で、置き引き犯捕まえたでしょ?」
「……ああ! あの時は助かったよ」
「あそこで、犯人をボコらなかった理由を教えてあげるわ」
「え?」
理沙が真剣な目で夢悠を見る。
「あの時、夢悠がボコってたら、後ろの方の車にいた黒服の人達が出てきそうだったからよ」
「どういう事?」
「詳しくはわからないわ。でも、あの犯人や置き引きは雅羅を狙った餌よ、間違いなくね」
「……本当だったとしたら、物騒な修学旅行だね」
夢悠が食後に運ばれてきたエスプレッソを口につけ、「苦ッ!?」という顔をする。
「ここはイタリアよ、マフィアのお膝元じゃない?」
そして、未だ「(それでも何とか変えていくから! 新しいワタシに期待してね雅羅ちゃん!)」と、雅羅に熱い視線を送る瑠兎子を他所に、次第に一同の会話は、ジェラートや次の観光地へ進んでいくのであった。
そんな一同のいる店の傍を、手提げ袋を揺らし、イタリアンジェラート片手に歩いていくのは、ローザマリアと小夜子である。
「本場のジェラートってやっぱり美味しいわね」
「はい、シャンバラにもあるのと何が違うんでしょうか?」
小夜子がジェラートを見つめて唸る。
「私はピスタチオだけど、小夜ちゃんは何のフレーバーを頼んだの?」
「私はシンプルにミルクです。あら、頬にジェラードが付いてますよ?」
「え? 本当?」
そう言って、ローザマリアが手で拭おうとすると、その手を小夜子が止め、口付けをして取ります。
「……」
「悪戯のお返しですわ。先ほどの……」
小夜子が微笑み、ローザマリアがふと自分と小夜子が手にした手提げ袋を見る。ローザマリアと小夜子が先ほど立ち寄った高級ブティックで買った物が入っているのだ。
ローマ中心部に着いた二人は、乗っていたスーパーカーを正規の駐車場に止めて、ショッピングへ向かった。ローザマリアは宣言通り、小夜子とブティックを端から端まで順繰りに巡っていく。
しかし、そのウチの一店舗だけは、店の扉に「CHIUSO(閉店)」の札が掛かっていたのだ。
「閉まってる? おかしいわね?」
「ローザさん、このお店は閉まってるわけじゃありませんわ」
「小夜ちゃん?」
小夜子はローザマリアに笑って扉を開ける、すると上品そうな店員が恭しく小夜子に頭を下げる。
店内は明るい照明で照らされ、宮殿のパーティ等に出てきそうなドレスが一面に並んでいた。
「このブティック、実は借りきったんです。私が」
「ど、どうして?」
「お金もありましたし、それにローザさんと二人っきりでお買い物したかった……という理由ではいけませんか?」
「……小夜ちゃん」
「さ! 高価なドレスを買うのですから色々試着しましょう? 二人で入れる試着室がありますわ」
胸中に「思いっきり小夜子をハグしたい!」という感情を抑えつつ、ローザマリアは小夜子と共に試着室へ向かう。
貸切の店内に仲の良い女の子同士という状況に、二人は結構ベタベタしながらドレスの試着を楽しんだ。
まず、ローザマリアが決めたのは、ミラコスタのドレスであった。
そのドレスは、両肩から胸元にかけて大きく開いた、一見ウエディングドレスにも見えるシルクのドレスであり、胸元から腰にかけて入ったリボンの装飾がポイントである。
小夜子はローザマリアの着付けを手伝いながら、楽しそうな時間を過ごす。
「小夜ちゃん、ゴメンね。小夜ちゃんが貸切にしてくれたお店なのに、私のドレスから選んでくれるなんて」
「いいえ。ローザさんは私と同じぐらい胸がありますし、腰の括れも相俟ってスタイルも良いですから試着を手伝うのは楽しいですわ」
「そう? ……ひゃっ!?」
ドレスを着付けする合間に、小夜子がふざけてローザマリアの胸を揉んでみる。
「フフフッ……ローザさん、ひょっとして私より大きいかもしれませんね?」
「もぅ! 小夜ちゃんがそんな事するからじゃない」
やがて着付けが終わり、鏡に映った自分を見つめるローザマリア。
「何か……照れる姿ね」
「ローザさんは金色の髪が綺麗ですから、よく似合いますわ」
「うん……私、コレに決めたわ。じゃあ、次は小夜ちゃんね?」
「はい、お願いします」
小夜子に上品な笑顔を浮かべるローザマリアだが、その内面には邪な欲望が浮かんでいる。
ローザマリアと入れ替わって試着をする小夜子が選んだのは、ラズィーヤがよく着ているような中世の貴婦人のドレスであった。元々が奇麗な小夜子なので、上品な貴族的なファッションを薦めようと考えていたローザマリアも納得のチョイスである、
「ルネサンスドレスって言うんです……でも、コルセットを着るのは一人だと難しいので、ローザさん手伝って下さいますか?」
「いいわよ」
試着室で小夜子が今着ている服を脱いでいく。
ローザマリアは小夜子のコルセットを絞めるのを手伝いつつ
「小夜ちゃん、肌も白いし、ウエストも細いわね。奇麗だわ」
艶かしい雰囲気になる試着室。
「(あぁッ!! 食べちゃいたいくらい綺麗!! でも、まだ駄目! このドレスを着て、もっと綺麗になった時まで待つのよ!!)」
興奮して小夜子のコルセットの紐を閉める手が震える。
やがて、着付けが終わり、小夜子がルネサンスドレスを身に付けて鏡の前に立つ。
小夜子のドレスは、ウエストの括れと曲線美を強調するため、コルセット着用を前提として作られたドレスであり、着用者の美しさを際立たせる胸元の開いたデザインになっている。また、使用されている布地や装飾品も高級だが、派手過ぎず上品な感じで仕上げられているため、着用者の美しさが際立つ。
それぞれドレスを着たローザマリアと小夜子が鏡の前に立つ。
「綺麗ね、小夜ちゃん?」
「私じゃないみたいですわ」
「本当? 確かめてあげましょうか?」
「ローザさん? 確かめるって……ひゃっ!?」
ローザマリアが小夜子のうなじをペロリと舐める。
うなじを押さえた小夜子がローザマリアに振り返る。
「ちょっ……ローザさん? 何を?」
「うん、これは小夜ちゃんの味ね」
微笑むローザマリアに、小夜子が頬を赤く染める。
「もう! 悪戯好きなんですから……」
「そうよ? でもこんな事するの、小夜ちゃんだからよ?」
「え?」
ローザマリアが指で小夜子の肩から、鎖骨、胸の谷間へと指を這わす。
「あ……ローザさん……」
「どこまでの悪戯なら、小夜ちゃんは怒らないのかしらね?」
頬を上気させた二人が、鏡の前で見つめ合い、互いの体を引き寄せ合う。
「コホンッ!」
「……」
「……」
店員の女性が大きく咳払いをし、二人に「それまで!」と牽制するのだった。
「……悪戯ってあの時の仕返しね……やり返されちゃった」
「はい。やり返しましたわ」
ジェラートを片手に仲良く歩くローザマリアと小夜子。
「次はどこに行きましょうか?」
「そうね、バールでエスプレッソを飲むという選択肢も有り……」
ローザマリアが提案しかけると、その前に非常に良い声が聞こえた。
「今こちらの道はちょっと通行止めでございます」
「え?」
見ると、ハル・オールストローム(はる・おーるすとろーむ)が道の前で通せんぼしている。
「通行止め?」
「はい。現在、映画の撮影中でございまして……ここで1カット撮り終えましたらお通しできますゆえ、少々お待ち下さいますか?」
ハルは二人にそう言うと持っていたビラを渡した後、銃型HCで通信する。
「こちら、通行止め完了致しました」
「了解だ。役者のスタンバイも終わった。本番行くぜ」
「はい」
通信を終えたハルが、そこに居た群衆に「お静かに!」と描かれた看板を見せる。
小夜子がハルから渡されたビラを見る。
「小夜ちゃん? 何て描いてあるの?」
小声でローザマリアが尋ねる。
「えっと……衿栖と未散は親友同士! 昼は学生、放課後はアイドル活動中! でも二人には秘密があった……なんと世界を守る愛と正義の魔法少女アイドルユニット【ツンデレーション】だったのです……という学園魔法少女物ですわね。イタリアの映画でしょうか?」
「……未散は私と同じ学校よ、小夜ちゃん……」
「ローザさん、どうして頭を抱えるのです?」
「あの子、見た目は幼いけど……年齢が……魔法少女のボーダーを超えてない?」
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