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リアクション
「この閉じているドアの、この部分にエネルギー……多分、光条エネルギーを注入するんじゃないかしら」
閉じているドアの一つに近づいて、九十九 昴(つくも・すばる)はソーラーパネルのような装置を眺める。
「壊れてないといいんだけれど……」
パラ実生がこじ開けようとしたようで、ドアは随分と傷ついていた。
「すまないが、皆力を貸してくれないか!」
垂が格納庫内を探索したり、機晶ロボット、機晶姫の回収をしている者たちに呼びかける。
なんとなく垂は優子に星剣を使わせたくなかった。
だから、出来れば自分達の力で閉ざされたドアを開くことが出来ないかと考えた。
危険を伴わないとは言えない。
何故なら、アルカンシェルの動力はブライドオブシリーズという、強力な光条兵器であり、主砲の魔導砲は、前女王のクローンにして寿命のない十二星華の生命エネルギーを集めて撃ち放つものだった。十二星華以外の剣の花嫁や、地球人の契約者には、極めて危険な兵器だ。
同じ方法で作られているのなら、一般の剣の花嫁、契約者で対処しようとすることは……危険なのかもしれない。
だけれど。
「はい、手伝います」
「おっけー、やろうやろう!」
ロザリンド、テレサが光条兵器をもって近づき。
「まぁ、あたしでもいないよりはマシかしら?」
吉木 朋美(よしき・ともみ)がパートナーの昴に目を向ける。
「そうね、私達の力で開けられるかどうか……確かめるとしようか!」
昴は強く頷いて、朋美の身体から自分の光条兵器――心刀『天明狂羅』を取り出した。
「開ける方法って、ドアに向かって光条兵器をドーン! でいいの?」
朋美も、言いながらネイル・ディグを装備する。
「たぶん、違うと思うわ」
昴はくすりと笑みを浮かべた。
「これで足しになるかはわかんねぇけどな?」
ラルクは、ナックル型の光条兵器を取り出す。
「俺にも、手伝わせてくれ」
巫女装束をまとった永谷も、光条兵器を持って立候補する。
「つかうのひさしぶりー」
指に嵌めた指貫型の光条兵器から、針のような細い光を出して、アルコリアがぱたぱたかけてくる。
「おもちゃあるかな、おもちゃあるかな?」
ドアの前に到着すると、ぶんぶん素振り回して待つ。
それから、岩造、ルカルカ、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)も協力を申し出てくれた。
「こっちのドアもお願い〜!」
別のドアの前にいる、鳳明が手を大きく振っている。
「皆、ありがとう。そうだな、二手に分かれるか。こっちは、俺とライゼと……」
ロザリンド、テレサ、ルカルカ、ダリル、岩造がこちらに残り。
昴、朋美、永谷、ラルク、アルコリアが、鳳明とセラフィーナが調査しているドアの方へと向かった。
「それじゃ、やってみるか」
垂は鞭型の光条兵器を。パートナーのライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)は、大傘の光条兵器を。
ロザリンドは巨大ランスを。
ルカルカは幅広片手剣、ダリルはカタール似の剣の形の光条兵器を。
岩造とテレサもそれぞれ光条兵器を取り出して。
装置に向かって、一斉に放った。
光が吸い込まれて、放った契約者の身体からも力が抜き取られるような感覚を受けた。体力、ではない精神力をほぼ持って行かれる。
同時に、機械音のような音が響いて、閉ざされていたドアが開いた。
「流石に高出力ね。でも無茶して倒れないように」
ニケ・グラウコーピス(にけ・ぐらうこーぴす)が、ダリルにSPタブレットを渡した。
「助かる。調査に集中できそうだ」
ダリルはさっそくSPタブレットを使用し、自分の精神力を回復しておく。
「さて、どんな部屋かなっと」
淵が光精の指輪から、光の精霊を呼び出して部屋の中を照らす。
「罠はなさそうです。開始、ですね」
ロザリンドは機晶姫や機晶ロボットがいないことを確認した後、振り向いた。
「行くぜ!」
「俺らのモンだーーー!」
現地人のパラ実生のグループが一斉に部屋に駆け込んでくる。
「さあ、頑張るわよ!」
パラ実生の勢いに負けないように、ルカルカもダリルと一緒に部屋に飛び込んだ。
「無茶はしないように……といっても、無駄かもしれないわね」
ニケは周囲に警戒を払いながら、ダリルの死角を守っておく。
「おっと、壊すな壊すな、開けるぜ〜」
淵が、鍵のかかった引き出しや金庫を壊そうとするパラ実生に近づいて、ピッキングで開錠する。
「なんだ? ディスクばっかりじゃねぇか」
「本も、どれが価値があんのかわかんねー! 設計図はどれだッ」
パラ実生達は、一目で価値があるとわかる貴金属を中心に集めていく。
特に書物は彼らに人気なかった。抱えて持ち出せる量はそう多くなく、往復している間にめぼしい物は他の者に持っていかれてしまうだろうから。
「バーゲンセールみたい……。大きいものや光る物に価値があるとは限らないのだけれど」
大きな物を奪い合うパラ実生を見て、ニケは思わずそう言葉を漏らした。
「ここのコンピューターは動くようだ」
ダリルはコンピューターらしき機械に近づいて、電源と思われるボタンを押して立ち上げた。
閉ざされていた部屋以外のコンピューターは既に持ち出されているか、壊されて部品を奪われていた。
「これは……なかなか興味深いデータが入っていそうだが」
古代の機械であるため、言語も含めてその場での理解は不能だった。
それでも、操作をしているうちに出てくる画像や図面を見て、多少は理解できる。
「格納庫の見取り図は入ってないか? マッピングのデータはこんなカンジだが。あちこち破壊されてて、正確じゃねぇだろうけどな」
朝霧 栞(あさぎり・しおり)は、銃型HCを使って、マッピングを行っていた。
「図面……これか」
ダリルは栞のデータと一致する、内部の図面と思われる図面を発見した。
「この施設内の図面からすると、もう一つの閉ざされた部屋は、倉庫になっているようだな。こっちは……書庫といったところか」
つまり重要データが保管されているのなら、こっちの部屋だ。
「設計図、入ってるかもしれねぇよな。こっちにデータ移せないか?」
栞はダリルに銃型HCを向けるが、ダリルは首を左右に振った。
「データのコピーは無理だ。画面に映し出したものを記録していくことは出来るが」
「んん?」
トレジャーセンス、ダウンジングの能力で探っていたライゼが鍵付きの本棚に目を向ける。
ピッキングで鍵を開けて、気になる分厚いファイルを取り出した。
「垂、これちょっと見てー!」
中身を軽く確認した後、ライゼは垂に近づく。
「なんだ……訳の分からないこの図は……」
とにかく分厚いファイルだった。
「図面……」
ルカルカが、光精の指輪から光の精霊を呼び出して、図面を照らした。
1ページ1ページをしっかり確認している余裕はないが、それが何らかの見取り図であることは文字を読めなくても解る。
「設計資料?」
「完成図、かも!」
どちらにしても、貴重な資料だ。
(ディスクのようなものも入ってる。でも、コピーの方法はないわね)
ルカルカは、ダリルにテレパシーを送った。彼だけではなく、優子にも常にテレパシーで状況を伝えている。
ダリルは無言で頷いた。
「必要そうなところだけでも、写せるものは写しておきたいところだ」
万が一、このコンピューターが破壊されたり、ファイルが奪われた時のために。
栞、そしてルカルカもデータのコピーを必要と考えていたが。
「要塞の設計図は悪用されかねん」
ビデオカメラを持ち、室内を映しているドラニオ・フェイロン(どらにお・ふぇいろん)は、コピーに反対だった。
「守るべき設計図を増やすこともないだろう」
彼が撮っているのは、書類でも、修理部品でもない。
探索をしている人だ。設計図を奪おうとする者を撮影して残す為に。
彼は探索の護衛でもあり、監視でもあった。
「現場の最高責任者は神楽崎優子殿だ。データは全て、彼女に渡すべきだろう」
栞達に近づき、岩造がそう言った。
「彼女ならば責任を持って、無事設計図を届けてくれるだろうからな」
「そうね。早く現物を優子さんに届けましょう。……この子、よろしくね〜」
ルカルカは精霊を争奪戦を繰り広げているパラ実生の方へと飛ばす。
「隅、見えにくいだろ、照らしてやるぜ」
淵も、光の精霊をパラ実生達が集まる場所へと飛ばした。
「うおっ、こっちの奥にも何かあるぜ」
「木箱ごと持って行くぞ!」
パラ実生が明るく照らされた隅に集まっているうちに、目立たないようルカルカ達は部屋から飛び出した。
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