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新ジェイダス杯第1回

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新ジェイダス杯第1回

リアクション

 

5ターン

 
 
『さあ、トップ争いはだんだんと熾烈になってまいりました。
 現在、機雷群を突破した神代明日香選手と天城一輝選手が、横にならんで激しいトップ争いを見せています。
 その後ろからも、次々と有力選手たちが機雷原を突破してきます。
 その先頭に立つのはリース・エンデルフィア選手です。健闘しています。このまま今大会の台風の目となれるか。
 それに続くの緋桜ケイ選手です。慎重に機雷群を抜けてきました。清泉北都選手が盛大に誘爆させた機雷の隙間が、まだ埋まりきってはいないようです。
 その後から機雷群を抜けてきたのはハーリー・デビットソン選手だ。こちらは、うまく水中機雷をみごとなスラローム走法で抜けてきました』
「むむ、ずっとわらわたちの後ろに位置しているなど、目障りだな」
 ハーリー・デビットソンの走りを脅威と感じた悠久ノカナタが、タイムウォーカーの後部に立ってハーリー・デビットソンを睨みつけた。
ここらで引導を渡してやるわ
 背後から吹きつける風に銀髪を踊らせながら、悠久ノカナタが杖を構えた。
「待て、カナタ。ここは攻撃を控えよう。後れを取ったのも、攻撃に手間取ったからだ」
 あわやというところで、緋桜ケイが悠久ノカナタを止めた。
「ふむ、仕方あるまい。もう少し様子を見て、ここぞという所で決めてやろう」
 
    ★    ★    ★
 
「こうなったら、奥の手だよ。一気にドーピングだあ」
 そう叫ぶと、カレン・クレスティアが試薬20210126号をぐいと一気飲みした。一時的に魔力がみなぎり、魔法の箒がそれを受けて猛スピードを発揮する。そのまま、すでに空中機雷を抜けていった者たちのルートを追って、機雷群を一気に突破した。そのスピードで巻き起こった風で、空中機雷が激しくゆらめく。
『おおっと、カレン・クレスティア選手、すばらしい加速です。一気にトップグループに近づいた』
「ああっ、せっかく合流できたのに、なんで我をおいていく。まったく、カレンは何を考えているのだ!」
 おいてきぼりをくらったジュレール・リーヴェンディが、呆れて叫んだ。
「よしゃ、僕らも、あの後に続くで」
 操縦を替わった大久保泰輔が、機銃を構えたフランツ・シューベルトに言った。
「機雷は任せてください」
 前面に弾幕を張って、フランツ・シューベルトが道を作る。
 だが、当初は黒船で海面を移動する予定だったため、若干勝手が違う。カレン・クレスティアにかき回された大気の流れに乗った機雷が、下から小型飛空艇にぶつかってきた。死角だ。
 ボン!
 爆発した機雷から大量の薔薇の花びらが噴き出した。まるで圧縮されていた花びらが一気に解凍されたかのように、花びらの奔流となって大久保泰輔とフランツ・シューベルトの乗った小型飛空艇をつつみ込む。視界をふさがれ、むせかえるような薔薇の甘い匂いに大久保泰輔たちが息を詰まらせた。
「うおお、もう、バラバラや!」
「洒落言ってる場合じゃ……うわあ!」
 コントロールを失ってコースアウトした飛空艇が、コース外の海面の上を派手に転がって吹っ飛ぶ。周囲に真紅の花びらを浮かべながら、大久保泰輔たちの飛空艇が沈んでいった。
『ああ、大久保泰輔選手、ここでリタイアです。
 続く選手たちも、気をつけてください』
「だ、大丈夫ですか、ベア」
「ははははは、俺様に不可能はない!」
 近づく機雷群を目にして不安そうなソア・ウェンボリスに、雪国ベアが自信満々で答えた。
 その白熊爆進丸とならぶようにして、佐々木弥十郎と綺雲菜織たちも機雷群へと近づいてきている。
『さあ、機雷手前にやってきた各選手を追うのは、パートナーにおいてきぼりをくらったジュレール・リーヴェンディ選手です。
 その後ろに、右足が沈む前に左足を出すという基本でここまで乗り切ってきた笹野朔夜選手と、パラミタイルカに乗った水兵さん、エリシア・ボック選手がならんで続きます。
 それに続くクリストファー・モーガン選手……、おっと、またもやしびれ粉で師王アスカ選手を狙います』
「とった!」
「もう、しつこいよお」
 クリストファー・モーガンたちの乗ったパラミタイルカがジャンプして、師王アスカの上を取る。そのまましびれ粉を投げつけられてはたまらないと、師王アスカがセントフリューガを横滑りさせて避けようとしたときだった。
「シャンバラ最強と謳われた我が術に耐えられるか?
 クリストファー・モーガンと師王アスカがお互いにかまけている間に後ろに忍びよったフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が、隙を突いてサンダーブラストで三人をつつみ込んだ。
「うわあ!」
 もろに直撃をくらって気絶したパラミタイルカごと、クリストファー・モーガンとクリスティー・モーガンが師王アスカの上に落ちてくる。
「ああ、ジェイダス様が落ちてくる♪」
 頭上から落ちてくるジェイダス人形を見て、師王アスカが叫んだ。だが、喜びも束の間、続いてパラミタイルカとクリスティー・モーガンたちがセントフリューガの上に落ちてきた。
「うわあ!」
 しびれ粉が誘爆してあたりに舞い散り、コントロールを失ったセントフリューガが派手にクラッシュした。
「ははははは、我の前に立ちはだかる者たちの末路……はりゃ!?」
 勝ち誇ったフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が、突然後ろから吹きつけてきた突風にあおられて空飛ぶ箒をウイリー状態にしてしまう。そのままバランスを崩して空飛ぶ箒から投げ出されてしまったフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が、旧ジェイダス人形にもたれかかるようにしてぽっちゃんと海にダイブして姿を消した。
「さあ、ライバルを一人減らしたよ。頑張れ、御主人様!」
 風術でフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』の箒を吹き飛ばしたテディ・アルタヴィスタが、皆川陽に言った。
「ああっ、黒子ちゃん。だからあれほど魔法少女になれって言ったんだよね」
「魔法少女だったら、助かったんですかぁ」
「もちろんだよ」
 半信半疑で聞き返す魔装書アル・アジフに、秋月葵が自信を持って答えた。その肩で、しきりにマカロンが騒ぐ。それに応えるかのように、秋月葵と魔装書アル・アジフの乗っていたパラミタイルカが大きく尾鰭で海面を叩いた。
「うわっぷ、何しやがる!」
 いきなり水飛沫を浴び気かけられて、ホークアイで魔装書アル・アジフの濡れたパンツを凝視していた南鮪が姿を現した。
「きゃあ、変態ですぅ!」
 魔装書アル・アジフが悲鳴をあげる。
 
    ★    ★    ★
 
『これは大変なことになりました。連鎖的に、一気に三選手がリタイアです。先にリタイアした大久保泰輔選手を含めて四選手がここで姿を消したことになります』
「ちょっと待てよ、なんだよこれ。追っつかないって。手伝いよこせって!」
 いきなり忙しくなって、回収係のシリウス・バイナリスタが悲鳴をあげた。回線の混乱からか、それが思いっきりメインスクリーンに流れてしまう。
「さあ、大変なことになってきました。はたして、海に落ちた選手たちは助かるのでしょうかあ!」
 オデンのちくわをマイク代わりに持ったウォーレン・シュトロンが、テーブルに片足をかけて叫んだ。
「大丈夫じゃから、落ち着くのじゃ。海京にはガネットがたくさんあるからのう。もう増援がでているじゃろう」
「そうそう。お行儀悪いんだもん」
 そう言うと、ルファン・グルーガにくっついていたイリア・ヘラーがさっとテーブルの上のウォーレン・シュトロンの足をすくった。
「うおおお!?」
 思いっきりウォーレン・シュトロンが後ろに倒れて静かになる。
「大丈夫?」
「ああ。すまないが、ちくわもう一本」
 あわてて駆け寄ったコルセア・レキシントンに、倒れた弾みで思わずちくわを握り潰してしまったウォーレン・シュトロンが言った。
「吹雪、注文……。吹雪!? ああ、あなた、また!」
 注文を伝えようとしたコルセア・レキシントンが、バラバラに千切ったチケットを紙吹雪のようにばらまいて天を仰いでいる葛城吹雪を見て頬をふくらませた。
 
    ★    ★    ★
 
『クラッシュが続いた波乱の第5ターン。それでは、現在の順位です』
 
1  神代明日香
  △天城一輝
3  リース・エンデルフィア
4  緋桜ケイ 悠久ノカナタ
5  ハーリー・デビットソン
6 △カレン・クレスティア
7 △大久保泰輔 フランツ・シューベルト リタイア
8 ▼佐々木弥十郎
  ▼綺雲菜織 彩音・サテライト
10▼ソア・ウェンボリス 雪国ベア
11△ジュレール・リーヴェンディ
12▼笹野朔夜
  ▼エリシア・ボック
14▼クリストファー・モーガン クリスティー・モーガン リタイア 
16▼師王アスカ リタイア 
17▼フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』 リタイア 
  ▼皆川陽 テディ・アルタヴィスタ
18▼秋月葵 魔装書アル・アジフ
19▼南鮪