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新ジェイダス杯第1回

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新ジェイダス杯第1回

リアクション

 

3ターン

 
 
『さあ、早くも先頭グループは第一関門へと近づいてまいりました。
 トップを走るのは、清泉北都選手です。これは凄い、ぶっちぎりの猛スピードで……ああっと! もしかして、もろに空中機雷原に突っ込んでいったか。はたして、無事抜けられるのでしょうか!?』
「僕の操縦テクニックなら、こんな機雷原なんか、問題ないよねえ」
 右へ左へオーニソプターをロールさせて気球のような空中機雷を巧みに避けながら、清泉北都は進んで行った。
 これは楽勝かと思われたのだが、今回は乗っていた機体が悪かった。螺旋のブレードの風にあおられた機雷同士が接触したのだ。直後に、誘爆が連鎖し、清泉北都とクナイ・アヤシの乗るオーニソプターをピンクの妖しい煙がつつみ込んだ。
「ああ、クナイ、僕たちは最期のときまで一緒だよ」
「もちろんですとも、北都……」
『おおっと、吹っ飛ばされた清泉北都選手とクナイ・アヤシ選手、だきあったまま落ちていきます……って、キスしてますよ。あっ、今着水しました。海の藻屑……、いえ、今、アガレス・アンドレアルフス選手を救助し終わったばかりのガネットがむかったそうです。
 しかし、あの機雷はなんなのでしょうか』
『メカニックはジェイダス機雷とか呼んでいるようだが、ふっ、迷惑なことだ』
 さっと肘を高く上げて髪を手で直しながら、ジェイダス・観世院が言った。
『ほんと迷惑そうな機雷です。全て、あんな媚薬のような物が入っているのですか?』
『いや、中身は、いろいろあるそうだから楽しみにしておいてもらいたい』
『だそうです。選手のみなさん、生き抜いてください。
 さあ、1位が派手に吹き飛び、現在2位の天城一輝選手がトップと言うことになります』
「焦りすぎるからだ。やはり、このレースを制する者は、飛空艇を制する者。それを証明してみせるぜ」
 同じ過ちは繰り返さないと、天城一輝は気を引き締めなおした。
 
    ★    ★    ★
 
「ええーっ!! ちょっと待ってよ、3番クラッシュしちゃったの!?」
「みたいね。ちょっと、吹雪、どうしたの? がっくりと両手を地面についちゃって……。まさか、あなた!」
 地面に突っ伏して呆然としている葛城吹雪を見て、コルセア・レキシントンが叫んだ。
「そうよ。買っちゃったわよ、馬券……というか、レース券。あああああ……」
 ギャンブルはほどほどに……。
 
    ★    ★    ★
 
『さあ、先頭グループ、3位は神代明日香選手、4位にはハーリー・デビットソン選手が続きます。
 おや、一気に5位に落ちた緋桜ケイ選手に何か動きがあるようです』
「くそ、トップを独走のはずが、ずいぶんと抜かれちまったな」
「それだけ、猛者揃いということだ。だが、しかし、これ以上前に行かせることはできぬな」
 悔しがる緋桜ケイにタイムウォーカーの操作を一任して、悠久ノカナタが後ろをむいた。タイムウォーカーの加速は、今は一度だけだ。ここからは、頭と力が勝敗を制する。
 緋桜ケイたちの後ろからは、佐々木弥十郎が猛スピードで迫ってきていた。
「ええーい、落ちろ落ちろ落ちろ!」
 悠久ノカナタが、手にしたルナティックスタッフで、滅茶苦茶に佐々木弥十郎をつついた。本来はジェイダス人形を集中的に狙って突き落とすはずだったのだが、ルナティックスタッフの狂気が全力攻撃に変えさせてしまっている。
『――おーい、避けろ避けろ避けろ。うわっ、あぶねー!』
「分かってる。叫び声がダダ漏れだぞぉ。少し静かにしていてくれないかあ」
 頭の中に響いてくる佐々木八雲の声に言い返しつつも、佐々木弥十郎が仕方なくスピードを落とした。
 同様に、そばにいた綺雲菜織が後ろにいるはずの緋山政敏に合わせるために、飛空艇のスピードを緩めていた。
「どんどん、蹴落としちゃいますよ。氷の嵐よ、吹き荒べ!
 まさに猪突猛進という感じで、遅れた分前に立ちはだかるライバルは全て排除する勢いで、ソア・ウェンボリスが前方にむかってブリザードを放った。
「邪魔じゃあ! 汝、後悔するがよい!」
 同様に、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』も、自分よりも前に進んでいる者を狙って闇術を放っていく。
「よし、このまま風に乗って一気に……、な、なんだ、急に目眩が……」
「わ、私も……」
 もろに闇術をくらった緋山政敏とカチェア・ニムロッドが体調を崩してふらついた。
「お師匠様を守れなかったのに、ここで負けたら立つ瀬がありません!」
 リース・エンデルフィアが、携帯アプリ『サモニングドラゴン』を使った。呼び出されたドラゴンが、炎でブリザードを相殺して突破口を開ける。
「あそこや!」
「お任せを!」
 大久保泰輔が指さす突破口に、フランツ・シューベルトが飛空艇をむける。そのまま便乗して、リース・エンデルフィアの後について離脱していった。
 リース・エンデルフィアによって乱されたブリザードは、もろに海面へと吹きつけ、そのまま海面を凍らせていった。そのまま大きく盛り上がり、氷山として緋山政敏たちの前に立ち塞がった。闇術を受けてくらくらしていた緋山政敏たちの反応が遅れる。
「な、なんでこんな所に、氷山が!」
 あわててマントを広げてエアブレーキにするが、減速が間にあわない。小型飛空艇の先端が氷山にぶつかり、機体がひっくり返るようになって乗っていた緋山政敏とカチェア・ニムロッドがジェイダス人形と共に海に投げ出される。
「政敏が!」
 綺雲菜織が悲鳴をあげて反転して駆けつけようとするが、清泉北都を救助にむかっていたシリウス・バイナリスタたちのガネットが、ちょうど通りかかって回収していった後だった。
「お兄ちゃんの分も頑張ろうね」
「そ、そうであるな」
 そう彩音・サテライトに言われて、綺雲菜織はレースを続けることにした。ここで棄権してしまっては、後でカチェア・ニムロッドに引き分けだと言われかねない。
「えーっ、コースの整備までやるのかよお」
 氷山の排除を指示されたシリウス・バイナリスタが、ぶーぶーと文句を言いながらフォノンメーザーで氷山を破壊した。
 
    ★    ★    ★
 
「カレンは、まだか……」
 ソア・ウェンボリスやフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』とならんでいたジュレール・リーヴェンディが、さらにスピードを落とそうとしたときに、背後から突風が襲いかかってきた。
 危なく吹き飛ばされそうになりながらも、ジュレール・リーヴェンディがなんとかコースを維持する。
「さすがに、みんな強者揃いだよね」
 ちょっと自信がなくなったように、皆川陽が言った。
「大丈夫。今ので、一人遅れたはずだ。いけるって」
 風術でジュレール・リーヴェンディを妨害したテディ・アルタヴィスタが皆川陽を励ました。
『さあ、またもや脱落者が出た後、後方に大きなグループができあがっています。
 皆川陽選手、笹野朔夜選手、エリシア・ボック選手、クリストファー・モーガン選手が固まっています。
 さすがにこの状況を嫌ったか、クリストファー・モーガン選手、またもやしびれ粉をばらまいた。
 ターゲットとなったエリシア・ボック選手、すかさず水中に潜って難を逃れます。
 集団の後に続くのは、最下位から地道にのし上がってきた秋月葵選手です』
「イルカさん、頑張って〜」
 魔装書アル・アジフが、しきりにパラミタイルカを励ましている。
「キュイ!」
 ちょっとやる気を出したパラミタイルカが、波を蹴たててスピードを上げた。飛び散る水飛沫で、魔装書アル・アジフの魔法少女コスチュームが濡れて、ぺったりと身体に貼りつく。
「なんだろう、この波飛沫。変だなあ……」
 秋月葵たちの真後ろにぴったりとつけているかのように移動する白い波飛沫を見つめて、カレン・クレスティアが小首をかしげた。
「ふふふふ、華奢な幼児体型にうっすらと透けて見えるパンツの跡もなかなかおつなもんだぜ」
 ありとあらゆるパンツの愛で方に秀でた南鮪が、姿を隠したままつぶやいた。
『まだ本調子ではないのか、師王アスカ選手、最下位に下がっています』
 
    ★    ★    ★
 
『さて、途中経過です。
 清泉北都選手、緋山政敏選手、おしくも第二第三の脱落者となってしまいました。
 まだまだ塊となっている選手が多く、順位は予断を許しません』
 
1 △清泉北都 クナイ・アヤシ リタイア
2 △天城一輝
3  神代明日香
4 △ハーリー・デビットソン
5 ▼緋桜ケイ 悠久ノカナタ
6  佐々木弥十郎
  △綺雲菜織 彩音・サテライト
8 ▼大久保泰輔 フランツ・シューベルト
  △緋山政敏 カチェア・ニムロッド リタイア
  △リース・エンデルフィア
11▼ジュレール・リーヴェンディ
  △ソア・ウェンボリス 雪国ベア
  △フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』
14▼皆川陽 テディ・アルタヴィスタ
  ▼クリストファー・モーガン クリスティー・モーガン
  △エリシア・ボック
  △笹野朔夜
18△秋月葵 魔装書アル・アジフ
19▼カレン・クレスティア
   南鮪
21▼師王アスカ