リアクション
「これは、一体何事なんですの!?」
ソリ型仕様の小型飛空艇で女湯の屋内ゾーンに飛び込んできたフランチェスカさん、流石に驚いたみたい。
非リア充を全身で表現している野郎連中が、女湯を占拠して好き勝手に暴れ倒してるんだもんね。
「おいおい、こりゃ一体、どういうことだ!?」
騒ぎを聞きつけた恭也さんが、覗きの鎮圧のつもりでやってきたみたいだけど、予想を超える事態に仰天してる。
そりゃそうよね、普通こんな光景、誰も思いつかないわよね。
それでも何とか気を取り直し、状況を私に伝えようとしてくれたフランチェスカさんだったんだけど、非リア充の放った熱源追尾式の対空ロケットランチャーで小型飛空艇の機晶エンジンを破壊されたの。
この時は流石に、フランチェスカさんもやばいって思ったみたい。
「メーデー! メーデー! こちらスーパー1224! 攻撃を受けています! 高度が保てません! サンタクロース・ダウン! 繰り返します、サンタクロース・ダウン!」
この後、フランチェスカさんの乗った小型飛空艇は、敵陣の真っただ中に墜落。
たったひとりの防衛戦が展開されることになったのよね。後でこの話を聞いた時、申し訳ない気持ちで一杯になったんだけど、本当に無事で良かったわ。
恭也さんが何とかして、フランチェスカさんを助けようとしてくれたんだけど、ひとりではどうしようもなかったから、助けを呼んだの。
で、この時に駆けつけてきたのが……。
「ちょっとあなた達、お行儀が悪いんじゃないの!?」
女湯から、ほとんど裸に近い格好で、蓮華さんが助けに来てくれた。
あられもない姿に恭也さん、超びっくりしてたけど、もうそれどころじゃないってことで、蓮華さんはすぐに恭也さんの装備を借りて、突入態勢に入ってる。
「あなた達の野望も、これまでよ!」
蓮華さん、何だか物凄い気合。
この時の蓮華さんの戦いぶりを物語にするなら……そうね、『レンゲー 怒りの脱出』とすべきかしら。
あぁでも、それじゃあ恭也さんが霞んでしまうわね。
実はこの時、ダリルさんがコンピュータの映像で見てたのは、この非リア充エターナル解放同盟とフランチェスカさんの戦いだったの。
そりゃ驚くわよね。
パーティーやってる隣で、大浴場で湿地戦みたいな戦いが始まってるんだもの。
この後、馬場さんと合流して一緒に大浴場に向かったダリルさんだけど、その途中でザカコさんとばったり会った。
「協力します。何をすれば良いですか?」
「丁度良いところに来てくれた。集められる兵力をすぐに掻き集めてくれ」
ザカコさんは、最初はドクター・ハデスを追っていたんだけど、非リア充エターナル解放同盟の動きに気づいて、こちらの援護に廻ってくれたのよ。
でも結局、ホテルの従業員達が総出で対処に当たるって話になって、馬場さん、ダリルさん、それにザカコさんは一旦部屋に戻ることになった。
私はまだこの時、秘宝が夜明けまでに全て、非リア充エターナル解放同盟が陣取る女湯に集結するという事実を把握してなかった。
分裂した秘宝は、もともとはひとつのものだったから、その性質としてお互いに引き合うという現象が発生してたみたいなの。
それに、まだこの時点では私、リライターを使ってたしね。
* * *
混浴ゾーンの休憩室の扉が、外側から勢い良く開け放たれた。
と思った直後には、サンタクロースとは思えない程の重武装を施したフレデリカが、室内に雪崩れ込んできたものだから、閉じ込められていた面々は流石に仰天した。
「まぁフレデリカさん! 助けにきて下さったのですね! 神の御加護に感謝します!」
フランチェスカが黄色い声音を上げて走り寄るも、フレデリカは厳しい表情のまま小さくかぶりを振った。
「まだ、安全とはいえないわ。露天風呂に締め出されてたひと達とも合流しなくちゃいけないし、やることはまだまだ一杯あるわ」
この時、既にフレデリカは単一の状態に戻ったサンタの秘宝を奪い返すことには成功していた。
が、この秘宝は記憶操作の対象全てが、安穏な精神状態にないと効果を発揮しない。
つまり、この大浴場を無事に脱出するのが最低限の条件だといえるのである。
「さぁ、行くわよ!」
フレデリカを先頭に、休憩室からの脱出を図る面々は、乏しい装備に不安を抱えながらも、非リア充エターナル解放同盟と従業員達との間で交わされる激しい戦闘の中を、突破していった。
* * *
……本当に、苦しい戦いだったわ。
ホテルに泊まってたパーティー参加者の皆が助けてくれなかったら、一時はどうなることかと思った。
でも、私達は無事にやり遂げた。
そして今、私の手の中にはもうひとつのサンタの秘宝、リプレイサーが。
実はついさっき、このリプレイサーを起動して、ヴァイシャリー・グランド・インとその周辺に居た人々の全ての記憶を、別の記憶に置き換えたところ。
これでもう、今回の騒ぎは一切、記憶も記録も両方とも、消されたことになるわ。
後は私が、サンタクロースとしての務めをもう一度、果たすだけ。
でもね、どういう訳か、私がこのリプレイサーを使った記憶が、ちょっと曖昧なのよね。
いや……使ったことは間違いないんだけど、何ていうか、そのぅ、リプレイサーを使った時の自分自身の存在感が、酷く希薄になったような気がしてならないの。
一体、何があったのかしら……まぁ、気にしても仕方がないから、考えないようにするしかないんだけど。
* * *
フレデリカが行使したリプレイサーの効力は、非リア充エターナル解放同盟のメンバーにも発揮された。
だが同時に、フレデリカ自身もリプレイサー行使の瞬間の記憶が曖昧になるという妙な現象が発生。
実は彼女がリプレイサーを使った時、非リア充エターナル解放同盟のリーダーが、フレデリカの身に迫ろうとしていたのである。
辛うじて直前でリプレイサーが効果を発揮した為に難を逃れはしたが、しかしそのリーダーの放つ異常な力によって、フレデリカ自身の記憶も(というより、存在感そのものと行動した内容までもが)随分と曖昧で、ぼけた内容になってしまったのだ。
この時、非リア充エターナル解放同盟リーダーの正体を、フレデリカは知らなかった。
後に彼女は、その人物が、ラインキルド・フォン・リニエトゥテンシィという名であることを知る。
ラインキルド、またの名を、行殺の悪魔。
フレデリカはよもや、自分自身が行殺の恐怖に遭遇しようなどとは、予想だにしていなかったらしい。
サンターラ 〜聖夜の記憶〜 『偽りの聖夜』 多分、終わり
あけまして、おめでとうございます。
当シナリオ担当の革酎です。
ちょっと今回は、何から何まで駄目過ぎる自分が、情けなくなりました。
折角のスペシャルシナリオ、皆様には十二分に楽しんで頂きたかったのですが、この出来で果たして、ご満足頂けるのかと甚だ、不安に思っております。
尚、本リアクションを執筆するに当たり、ブラックホーク・ダウンのDVDを二回も見たというのは、公然の秘密ということにしておいてください。
それでは皆様、ごきげんよう。