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レターズ・オブ・バレンタイン

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レターズ・オブ・バレンタイン
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27)

蒼空学園の体育館裏にて。
アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)に呼び出された、
キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)は、
顔を紅潮させたアルテミスを発見した。

「おう、どうしたんだ?」
今日はバレンタインである。
恋人たちの祝日。
そんな日に、体育館裏に呼び出されるということは……。

案の定、アルテミスの手には、手紙らしきものが握られている。

「キロスさん!
私と付き合って下さい!」
そう叫んだアルテミスの差し出した手紙には、
大きな字で、

「果たし状」

と書かれていた。

「……は?」



時間は少し巻き戻る。

普段より、キロスのことを意識して仕方がないアルテミスだが、
今回、自分の気持ちを整理するために、手紙を書くことにした。

自室に篭って、
かわいらしい鉛筆でハート模様の便箋に、
自分の気持ちを分析しながら綴っていくアルテミスであったが。


「え……、嘘……。
わたしのキロスさんへの本心って、ただの対抗心じゃなくて、もしかして……?」

アルテミスの気持ちは確信へと変わり、
書きあがった手紙を握りしめて、キロスを呼び出したのであった。



「キロスさん!
私と(の勝負に)付き合って下さい!
この気持ち、キロスさんへのライバル心だと確信しました!」

「何言ってるんだかわかんねえよ!?」

しかし、アルテミスは抜刀。
キロスに躍り掛かる。

「お覚悟を!」
「うわあああ!!」
しかし、キロスとて龍騎士。
簡単に不覚を取られはしないが……。

「くっ、いつもより剣劇が激しい!」
「せいやあああああああああああっ!!」
アルテミスは、本気であった。
本当の正真正銘の本気であった。
今までで一番、全力を出していると言って過言ではなかった。

「くっ、このおっ!!」
そのため、キロスも思わず本気を出してしまう。

「きゃあああっ!」
キロスの剣戟に、アルテミスは吹っ飛ばされ、体育館の壁に叩きつけられる。

「あ、おい?」
ハッと我に返ったキロスが、アルテミスに駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「う……」
キロスに手を差し出されたアルテミスは、その手を取り、
みるみる赤面していった。
(鼓動が、苦しい……それほどまでの一撃!?)
「いえ、これは……敵に情けをかけられた、騎士としての羞恥の感情!?」
「ちょ、何言って!?」
アルテミスはがばっと起き上がると、キロスの手を振り払い走っていった。

「次は必ず勝ちます! 覚えていてください!」

「おおーい……?」
キロスは、1人、呆然と取り残されるのであった。