リアクション
28)
薔薇の学舎にて。
東條 梓乃(とうじょう・しの)は、
校長のルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)との交流を願い出ていた。
ルドルフの薔薇園に案内され、
梓乃は目を見張る。
「わあ……」
「気にいってもらえたかな」
「はい。とても。すべて、校長先生が育てているのですか?」
「ああ。まだまだ、だけれどね」
ルドルフは謙遜するように言ったが、
薔薇園の薔薇はどれも美しい。
「あれは、なんという品種ですか?」
「ああ、あれは……」
梓乃の質問に、ルドルフはとうとうと答える。
やがて、薔薇園の一角のテーブルに2人は座る。
梓乃が、2人分のお茶を淹れる。
「ありがとう」
ルドルフが、微笑を浮かべた。
「あの、よろしければ、これをどうぞ」
梓乃が、白い皿に、トリュフチョコを並べ、ルドルフに勧める。
「これは、君が自分で作ったのかい?」
「ええ、一応……」
「なかなか見事なものだね」
ルドルフが賛辞を述べ、トリュフチョコを口に運ぶ。
「うん。ほどよい甘さとほろ苦さ。
美しいバランスだ」
「どうもありがとうございます」
梓乃は、ルドルフの言葉に、喜びをかみしめた。
そして、梓乃は、お茶を楽しみながら、
ルドルフに、薔薇園の薔薇の話や、
タシガンの様々なことを、ゆっくりと聞いたのだった。
「ゆっくり、この学舎やタシガンになれていくといい。
この、薔薇達のようにね」
「薔薇達のように、ですか?」
「そう。愛情と手間暇をかけて育てられた薔薇が美しく花開くように。
君も、これから、さまざまな経験をして、
美について学んでいくといい」
「はい。頑張ります」
ルドルフの言葉に、梓乃は生真面目にうなずいてみせたのだった。