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狙われた乙女~別荘編~(第1回/全3回)

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狙われた乙女~別荘編~(第1回/全3回)

リアクション

「なんじゃ、この騒動は! しかもこの穴」
 蒼空学園のセシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)は、可愛らしい鼠のきぐるみを着て、登場した。
 パートナーのファルチェ・レクレラージュ(ふぁるちぇ・れくれらーじゅ)も同じ格好だ。だけれど、ファルチェの方だけ耳に赤くておっきなリボンを結んでいる。セシリア曰く『無口で恥ずかしがりやな恋人設定』なのだそうだ。
「パラ実め……私のネズミさんライフと解体で暴れるのを邪魔しようとするとは、じゃ……」
 セシリアはぐぬぬぬぬっと、拳を固める。
 柄の悪い少年達=パラ実と判断したらしい。
「ええいならば空から行けば問題ないのじゃ! ゆくぞファルチェ」
 鼠姿のままうんしょと飛空艇に乗っかって、2階のバルコニーに向けて発進する。
「チャチな罠じゃ、私を止められないのじゃー!」
 飛空艇を止めて、魔法を打ち込もうとしたセシリアだが、思うようにブレーキがつかめない。
「しまった着ぐるみのせいで、ブレーキできないのじゃああぁぁぁぁぁ!!?」
 最高速度でセシリアは2階の窓に突っ込む。
「これは……死にましたかね」
 後からついてきていたファルチェは飛び散ったガラスの破片を見ながら、冷静に言った。
「うぎゃーっ」
 しかし、すぐにセシリアの声が上がる。
 見れば、中に仕掛けてあったネットに、彼女は絡まっていた。……まるで蜘蛛の巣に捕まったネズミだった。
「今、行きますわ!」
 百合園女学院生徒会執行部の冬山小夜子(ふゆやま・さよこ)は、バーストダッシュで、2階のバルコニーに突っ込んだ。
「そちらは大丈夫ですか?」
 声をかけた先には、不良と交戦中のフォルクスの姿がある。
「ああ、大丈夫だ」
「そっちも気をつけろよ!」
 フォルクスが雷術を不良に打ち込み、樹がメイスを振り下ろす。
 そのまま、2人は部屋の中へと入っていく。
「なんだガキか!」
 駆け込んできた不良がネットに絡まっている鼠姿のセシリアを目にし、そう言った。
「うう……痛いちゅー。ガラス刺さってるでちゅー。離してくれないかちゅー? 離してくれたら僕を食べても良いちゅー!」
「いらん!」
 きっぱり言って出て行きそうになる不良に、
「ええい何でネズミさんの良さがわからぬのじゃー!?」
 と、火術をぶっぱなした! 自分を絡めている縄にも火が燃え移り、セシリアは火達磨になりかかる。
「今助けます」
 小夜子が走りこみ、カーテンでバタバタ叩いて火を消していく。
「こっちです」
「大丈夫ですか」
 ようやく開放されたセシリアと飛空艇を、ファルチェと小夜子がバルコニーに引っ張り出す。
「助かったでちゅー」
「きぐるみのお陰で破片あまり刺さってないようですけれど、治療の為に戻りましょう」
 ファルチェはセシリアを飛空艇に乗るよう促す。
 セシリアはしぶしぶ従った。
「皆様、まだ中にもいるようですわ! お気をつけて!!」
 消火後、小夜子は地上で戦う皆に大声で伝え、セシリアの火術を受けて呻いている不良に向かい飛び込んで行く。

「我の樹に手を出すとはいい度胸だ貴様ら!」
 フォルクスは怒りを露に、部屋から廊下に出た。途端――。足元を黒い何かが横切った。
「!!!!???」
「……どうした、フォルクス!?」
「ッ……い、樹……すまん、我はだめだ。その虫を見ると吐きそうになるのだ」
 ぺたんとフォルクスは座り込む。
 樹もその黒い何か――Gと呼ばれる存在を目撃する。暗くてよくは解らないが、廊下の隅に数匹蠢いているように見える。
「いやいやいや、吐くな吐くな」
「大丈夫だ……吐き気がするだけで実際に吐くわけではない。が、気持ち悪くて動けん……」
「そ、そうか。いや吐かないならいいんだ。安静にしてろ」
 樹は飛び込んだ部屋にフォルクスを入れて、しばらく休ませることにする――。

 柄の悪い少年達が次々に別荘から飛び出し、木刀や釘の刺さったバット、スコップに、剣や銃をも手に飛び掛ってくる。
「随分大きい生物も住んでいるのね」
 荒巻さけ(あらまき・さけ)は、感心しながら、持って来た燻蒸式殺虫剤を開封し別荘に向かって投げる。
 割れた窓から入った殺虫剤はもくもくと煙を上げて、更に多くの不良達が外へと飛び出してくる。
「はっ……外へ飛び出されたら駆除できない!?」
 さけは大変なことに気づいてしまった。
 巣くっている害虫が知的生命体である以上、外に避難されては殺虫剤の効果が切れた後に、別荘に戻ってしまうではないか!
「戻って来れなくすればいいのです。たた、ちょっと数が多いですね」
 パートナーの日野晶(ひの・あきら)が、袋から殺虫剤を取り出しさけに渡しながら言った。
「攻め込むとはいい度胸だ。まとめて沼に埋めてやるぜ!」
 不良の1人がスコップを振り上げて、さけに跳びかかる。
 さけはカルスノウトで不良の一撃を受ける。晶が不良の足を払い、さけが不良に体当たりを食らわす。
 開けられている穴に落ちた不良に、すかさず2人で土をかける。
「ぶあっはっ、止め……っ」
どんなに数が多くとも、わたくしは諦めません! 全ての害虫を駆除してみせます!
 不良虫を1匹穴の中に埋めた後、高らかに宣言し、さけは晶と共に再び燻蒸式殺虫剤を投げ入れていく。
「おうよ、社会のゴミをも含めて大掃除しようぜ!」
 蒼空学園の出水紘(いずみ・ひろし)は、カルスノウトを振り上げて駆ける。
 穴を避け、不良達に自ら斬り込んでいく。
「紘、私はあくまで警護の仕事できています。だから、そんなに遠くにいかれてはフォローが難しくなります!!」
 パートナーのカミラ・オルコット(かみら・おるこっと)は、後方で非戦闘員を護衛している。紘はバイト代稼ぎの解体の手伝い。カミラは有事の際の護衛として訪れていた。
「今は、リサイクルが定番だぜ。そのためには”ごみ”を集めないとな」
 不良と斬り結ぶ紘の耳にカミラの声は届かず、紘はツインスラッシュを駆使し、1人で2人の不良を相手に戦う。
「ゴミになるのは、てめぇらの方だ!」
 不良は怒り狂いながら、武器を振り回す。
「燃えるゴミが散らかってるようだな!」
「な……ぐはっ」
 紘は爆炎波を放ち、不良共々別荘傍に投棄されているゴミをも燃やしていく。