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【おとこのこうちょう!】しずかがかんがん! 前編

リアクション公開中!

【おとこのこうちょう!】しずかがかんがん! 前編
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リアクション

■□■3■□■ 未来の静香と十嬢侍

そこに、未来の静香が現れた。
配下の十嬢侍メンバーや、部下たちを連れている。
「騒がしいぞ。
 僕の宮廷で何をしているんだ」
「校長先生!
 どうしてこんなことを!」
エルシー・フロウ(えるしー・ふろう)は、未来・静香に近づく。
(私、政治とか難しいことはよく解りませんけれど……
あんなにお優しい校長先生が、
皆さんの困るようなことをするとは思えません。
きっと何かご事情がおありなんですよね。
 もしかしたら、何かのご病気なのかもしれませんね?
 ヒールやナーシングで治せるでしょうか……。
あ、そういえば、
混乱している人は頭を叩けば治るって聞いた事があるんですけど……
校長先生を殴るのは校則違反でしょうし……。
あ、それよりも、偽物さんっていう可能性もありますよね!
人のフリをして悪い事をするのはよくないと思います)
エルシーは偽物の可能性を考慮して、未来・静香の顔をじっとみつめる。
(お顔がお化粧でとてもけばけばしいですけど……。
 本物の校長先生に見えます)
エルシーは、現在の静香に言う。
「何か、ご自分にしかわからない質問をしてみてください!
 本当に未来の校長先生かどうか、確認したいんです!」
「う、うん、わかったよ。
 ラズィーヤさんと出会った日に着ていた服は?」
「おとこのこうちょう! 第1話を参照しろ!」
「せ、正解だよ……確かに未来の僕なんだ」
エルシーだけでなく、現在の静香もあらためてショックを受ける。

★☆★

(来ましたね……過去の私)
未来の秋月 葵(あきづき・あおい)は、大人になってもぺったん胸のため、
性別を偽って十嬢侍メンバーになっていた。
その目的はレジスタンスに情報を流し、
ヴァイシャリーの開放、そして、桜井静香の打倒である。
(この気配……未来のあたしがいる!)
精神感応で、現在と過去の葵は、お互いの存在を察知しあっていた。

「正義の魔法少女、
 【突撃魔法少女リリカルあおい】参上―ッ☆
 静香校長も、ぶっとばせば目が覚めるはずだもん♪
 がんばっちゃうぞーっ」
小型飛空艇オイレに乗り、宮廷の窓をぶち破って、
現在の葵が現れた。
「静香校長!! これ以上悪いことは、やめ……ん!?」
葵は、そのまま未来・静香に突っ込もうとしたが、
精神感応で未来の自分に話しかけられる。
(過去の私、今、私、十嬢侍メンバーなの)
「そ、そんな……」
葵は、両手を地面につけて落ち込む。
「そんな……こんな……ぺったんな未来は認めない!
宦官の人に混ざってるだなんて……。
全部撃ち砕く」
自分の胸がまったく成長していないことを激しく嘆き悲しむ葵は、涙目で立ち上がる。
「ちょっと、落ち着きなさい。過去の私」
「きゃあああああああああ!?」
未来の葵は現在の葵をぶっ飛ばして、ずるずる引きずっていく。
「この狼藉者の始末は、私にお任せください。静香様」
「あ、ああ、好きにするがいい」
未来の静香は、現在の葵の行動にさすがにあっけにとられたらしく、未来の葵にそう言った。
その後、未来の葵は、現在の葵に、別の場所で状況を説明するつもりであった。

★☆★

「な、なんだかわからないが、
 皆の者!
 こいつらを撃退するのだ!」
未来の静香の命令で、戦闘が始まった。
「やめてよ、未来の僕!
 こんなことって間違ってるよ!」
現在・静香の言葉は、未来・静香には届かない。

プレナ・アップルトン(ぷれな・あっぷるとん)は、そんな現在・静香の手を引く。
「静香校長、危ないから、
 こっちにさがっててねぇー」
プレナは、その辺りの物を投げて、進路妨害をする。
濃度の低いアシッドミストを詰めた小瓶を持ち歩き、
かく乱に使おうと考えていたのだが、そういった魔法の使用はできなかったのである。
相手を傷つけず、逃げる時間稼ぎをしようというのが、プレナの考えであった。
「ああっ、でも、あとでお掃除しないとぉー」
プレナはつぶやく。

「いーやーー!?
桜井校長が宦官なんていーやーーー!?」
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は、
同じく、現在・静香の警護をしていたが、未来の宦官の静香を見て、大声を上げる。
「は、話には聞いていましたが、実際に見るとショックが大きかったです……。
それにしても、こんな未来になるなんて、
 私は何をしていたのでしょう!?」
みつけたらとっちめてやろうと考えていたロザリンドだが、
そこに、薔薇の花びらを撒く係や、
登場テーマを流す楽団を引き連れた未来のロザリンドが現れる。
「おーほっほっほっほっほっほ!
 すべての男の娘は捕縛いたします!
 それがたとえ、過去の桜井校長であろうとも!
 この、ダークランサー、
 桜井校長のために、なんでもいたします!」
プロポーションをみせつける黒い衣装を着た、未来のロザリンドが宣言する。
「なっ!?」
現在・ロザリンドは、未来・ロザリンドに驚き接近する。
「……あの、
何をしたらそのようなプロポーションに……
じゃないです!
桜井校長を守り、
間違った道に走った時に身を呈して諫めるのが私の役割でしょう!
恥を知りなさい、恥を!」
「何を言うのです、過去の私。
 桜井校長第一で行動するのが私でしょう!?
 ……それに、十嬢侍をいつか蹴落として、
 桜井校長の一番お近くは私の物にするのです!」
楽団の音楽の中、二人のロザリンドは会話する。
もちろん、未来のロザリンドの言葉の後半は、現在のロザリンドにしか聞こえなかった。
「何言ってるんですか!
 とにかく、あなたを許しませんから、謝るまで殴りますよ!」
現在・ロザリンドが殴りかかったが、未来・ロザリンドは槍を一閃してぶっ飛ばす。
「きゃあああああ!?」
「ふふふ、これが、数年間の訓練の違いと言うものです!
 それに、槍も装備しないで、私に挑もうなどと、片腹痛いですよ!」

★☆★

「ああっ、ロザリンドさまっ!?」
真口 悠希(まぐち・ゆき)は、
ともに現在・静香を守ろうと思っていたロザリンドが倒されたので、
慌てる。
そこに、仮面の十嬢侍が近づく。
「僕は十嬢侍……紅き仮面のユーキー。
お前達は我が主、
静香様を脅かす存在……排除する」
「し、静香さま!?
 ボクが守りますっ」
悠希は、「紅き仮面のユーキー」の前に立ちはだかる。
「紅き仮面のユーキーは、
桜井静香に深く忠誠を誓い、愛しており
その戦闘力は十嬢侍でも最強と呼ばれ、
障害となる者は二刀で全て排除する恐るべき存在であり、
静香の信任も厚く十嬢侍筆頭と言われている。
目の部分にわずかに隙間のある仮面をつけているが、
稀に仮面の目から血の涙を流す事があり、
その時だけは撤退し、
狙われた者達は助かるという。
『紅き仮面の』という二つ名は、
血の涙で仮面が紅く染まる事から名付けられたのだ」
いつのまにか合流していた小ラズィーヤが、解説する。
「つ、強い……!」
「当然だ……何年もの間キャラクエの修行を繰り返し
全クラス最高レベルに達した僕に敵はない」
「そんなメタ発言までするなんて……。
くっ……でも静香さまだけは……!」
「そこの静香にも……この場で宦官となって貰う!」
悠希とユーキーは戦闘を続ける。

★☆★

一方、宮廷で一人はぐれてしまったクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)は、
未来の自分に声をかけられる。
「見つけたぞ、クリスティー!」
「え!?」
現在のクリストファーは、パートナーのクリスティーと人格が入れ替わっている。
「君は、人格交代を解除する方法を発見して、
 ボクの同意なしに、ボクの身体に戻ったんだ!
 ボクは静香様のペンフレンドとして仲良くしていたし、
 さらに、イエニチェリにもなっていたのに!」
「いや、ありえないって。
俺がそんな事をするわけないだろ。
相棒をからかうのは好きだけど、一線は守ってたはずだよ?」
現在のクリストファーは未来のクリストファーの発言に驚いて言う。
「すべては君が、ヘルの子どもを産むために、
 元の身体が必要だったためさ!」
「ヘルの子どもを……ないない!!」
想像して赤面したクリストファーは慌てて言う。
(大体、俺にはもはや身体返す気はないんだけど。
……おっと、これ言ったら言ったで薮蛇か……)
「ボクは、恥ずかしいのと今まで隠してた事が後ろめたくて
静香様に真実は話せないけど、
せめて傍にいたいので宦官となって忠誠を誓ったんだ!
今は十嬢侍として、静香様の覇道に協力している!
好き勝手やってたくせに、
さらに静香様の邪魔をしにきたなんて許せない!」
「うわあああ、落ち着けよ!」
未来・クリストファーが殺そうと迫ってきたため、
現在・クリストファーは逃げ出す。

★☆★

なんとか、未来・クリストファーを振り切った、
現在・クリストファーだったが、
思わず言う。
「色々と見てきたけど、この未来がパラレルワールドで、
俺達の過去とつながってるなんて大嘘だ!
到底信じられない、俺は認めない。
俺達の未来とは無関係とはいえ、こんなとんでもない世界はぶっ壊す!」
(とはいえ、未来の俺自身ならともかく、
元の身体に戻った相棒相手に
優位に立てる方法はちょっと思いつかないな。
力量、10年分くらい差がついているだろうし……。
しかし殺されてやる筋合いはないし……
そうだ、相棒から未来の静香校長へ宛てた手紙を預かっていたんだ。
若い頃の自分の一途な思いのこもった手紙を読めば、我にかえるかも!)

★☆★

一方、未来・静香と十嬢侍達の傍で。

ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、
未来の変わり果てた友人達の姿に驚いて、悲しんでいた。
「やめてくださいですー。
 たくさんの人達が悪い人になっていたです。
 ロザリンドおねえちゃんも、
 もう、こんなことはやめてくださいです!」
「うるさいですよ、過去のヴァーナーさん。
 こうなったら、未来のヴァーナーに始末させてあげましょう。
 いでよ、戦闘機械ヴァーナー・ヴォネガット!」
「静香さま、ばんざいデス!」
未来・ロザリンドの命令に応えて、未来・ヴァーナーが現れた。
「むむむ〜、ボクがボクのままなんです……」
ちょっと残念そうに現在・ヴァーナーは言う。
未来・ヴァーナーの外見は11歳のままであった。
宦官達に従わなかったため、洗脳され、
まともな意志がなくなった未来・ヴァーナーは、槍と鎧の重武装で、機械のように動く。
「静香さまのテキはゆるさないデス!」
「やめてくださいです〜」
「ボクは戦闘機械ヴァーナー・ヴォネガットデス!」
未来・ヴァーナーが現在・ヴァーナーを追いかけまわす。

★☆★

少し離れた場所で、
幻時 想(げんじ・そう)は、未来の自分と相対していた。
(ま、まずい……
未来の僕が宦官になってしまっていて、
それを目撃されたら……僕の性別が広くバレてしまうっ……!)
そう考えて、なんとかしなければと思っていた想だったが。
「むっ……?
貴方が未来の僕だろうか?
だが、まるで世捨て人のようだ……。
なぜそんな事に……」
雰囲気ががらりと変わり、ワイルドになっている未来の自分に言う。
「お前も俺なんだからわかるだろう?
 俺には好きな少女がいたが、宦官にされてしまった。
 十嬢侍にも任命されたが、
 任務を行う気になれず、失踪したんだ」
(そうだ……
僕には好きな少女がいる……。
宦官にされてしまえば
二度と結ばれる事は出来ない……)
未来・想の話を聞いて、現在・想は思う。
「俺は……彼女の前から姿を消した。
そして……誰の目にも触れぬ様に生きてきた……。
だが過去の連中の姿を見て、
お前も来ているんじゃないかと思って出向いた訳だ」
「なるほど……。
確かに……僕が貴方の境遇になれば
同じ事を思うかもしれません……。
二度と結ばれないのに
彼女の前に出ていくなんて出来ない……。
どれだけ好きでも結ばれない。
そんな苦痛があるだろうか……。
貴方は、そんな苦しみを抱えたまま何年も
永い時をずっと、彼女に見つからぬよう……
そして、彼女の幸せを願いつつ過ごして来たのですね……」
「だが……お前の心の中にいる少女の前に
俺が出向いたとしたら……どうなるかな?」
未来・想はにやりと笑う。
「……なっ!?
なぜだ……そんな事をして僕に……
そして貴方に何の得があると……」
「止められるものなら……止めてみろ!」
走り出す未来・想を、現在・想が追う。
「くっ……何て素早いんだ、今の僕よりも数段……
十嬢侍というのも伊達ではないのか……。
追いつけない……行ってしまった」
(一体、彼……いや、未来の僕は
何を考えているんだ……。
……いや
今は考えるのは後だ。
彼を放置してしまったら……
先輩に僕の秘密がバレてしまう……。
いつか勇気を出して言おうとは思っていたけれど……。
今、暴露されては……先輩は僕に騙されていたと
思ってしまうに違いない……。
 こうなったら……僕自身で
自ら明かすしかないだろうか……?
だが、まずは……先輩はどこにいるのだろう。
探さなくては……!
……そもそも、先輩は無事でいるだろうか?
ピンチなら助けて差し上げないといけない……。
とにかく……急ごう!)
現在・想は、再び駆け出した。
実は、過去の想が今の自分みたいにならないよう、
背中を押して恋の成就を手伝ったりするというのが、未来・想の目的だったが、
現在・想は、まだ、気付いていなかった。