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ゴチメイ隊が行く3 オートマチック・オールドマジック

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ゴチメイ隊が行く3 オートマチック・オールドマジック

リアクション

 
 
『住』勝負
 
 
「にゅ〜、なんで仲良ししないですか。お掃除勝負なのです〜」(V)
 プラカードを持ったあいじゃわが、ぽよんとはずんだ。
「それでは、最終競技のお掃除対決を開始します。パラ実の方がバイトで乱入してくる予定ですう。模擬戦なのでえ、装備は竹箒などとさせていただきます。殺しちゃだめですよお」
 大谷文美が次の対決の案内をした。
 不良の排除がお掃除対決という、とてもメイドらしからぬ仕事ではあるのだが、パラミタのメイドとしてはこのくらいできないとお屋敷を守ることはできない。
「ふっ、祭りの会場はここか。えーっ、楽しませてもらおうじゃねえか」
「遊ぼうじゃ〜ん」
 学ランとセーラー服を着た、どう見ても学生じゃないだろうというカップルが校庭の端に砂埃と共に現れる。まあ、パラ実の場合、ちょっと年齢のいっている学生も存在するので、間違ってはいないわけだが。
「あの二人、どこかで見た気が……」
 用意された武器の竹箒を手にしたペコ・フラワリーが眉間に皺を寄せてつぶやいた。
「見たも何も、海賊のコンビじゃないか。生きてたんだ。でも、なんでこんなとこに学ランなんか着て現れたんだ?」
 ちょっと呆れたようにマサラ・アッサムが言った。
「うるせえ。バイトだバイト。どこかのプータローのメイドと違って、こっちはちゃんと働いてるんだ」
 体育会座りしながら、サングラスをかけたシニストラ・ラウルスが言い返した。その横では、デクステラ・サリクスが、初めて着たセーラー服が面白珍しいのか、ニコニコしながらロングのスカートをつかんで、裾をひらひらさせて遊んでいる。
「このような形とはいえ、決着はつけておく必要がありますね」
 ペコ・フラワリーが竹箒を構えた。なんだか間抜けではあるが、供与された武器がこれしかないのではしかたない。どのみち命までとる気はないので、これでも充分だろう。
「面白い。お遊びとはいえ、楽しませてもらおう」
「うん、楽しみ楽しみ」
 立ちあがって答えるシニストラ・ラウルスに、とデクステラ・サリクスが唱和した。
「お手伝いさせていただきますわ。お掃除は得意ですもの」
 ミニスカートのメイド服を着た佐倉 留美(さくら・るみ)が、ペコ・フラワリーの横に立った。
「僕たちもお手伝いさせていただきます」
 菅野 葉月(すがの・はづき)ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)も進み出てくる。
「むっ、葦原でどうしようもない偽物を持ってた嬢ちゃんたちか」
 湿地帯に行く途中で菅野葉月たちが女王像の右腕の偽物を持って邪魔をしようとしてきたことを思い出して、シニストラ・ラウルスが言った。
「イーアー! 偽物ではありません!」
 その言葉に、じっと隠れていたいんすます ぽに夫(いんすます・ぽにお)が、思わず光学迷彩を解いて姿を現した。
「イーアー! なぜみなさんが蒼空学園を襲うのかは存じませんが、ここは協力させていただきます!」
 とってつけたようなモヒカンをなでつけながら、いんすますぽに夫がシニストラ・ラウルスたちの味方をすると言いだした。
「あれ? まだ他にもバイトがいたのかしらね」
 怪訝そうにデクステラ・サリクスが、いんすますぽに夫のモヒカンをなでなでした。
「イーアー! イコンプラモデルの版権を独占するような阿漕なまねは許しておけないのです。きっと、今度は、メイドロボットの版権まで独占し、ゆくゆくは機晶姫やゆる族の版権まで独占するつもりに違いありません。許すまじ、蒼空学園。御神楽環菜亡き今、イコンの版権はこの私の物なのです」
 何やら言っている意味がさっぱり分からないので、とりあえず一同はいんすますぽに夫は放っておくことにした。
「よく分からないから、切り刻んじゃおうよね。解体、解体。マサラさん、一緒に戦おう♪」
 ハルバード状の光条兵器を携えた朝野 未沙(あさの・みさ)がマサラ・アッサムにだきつこうとした。
「またあんたか!」
 トラウマが甦って、マサラ・アッサムがあわてて避けようとする。
「今は、そんなことをしているときではありませんわ」
 佐倉留美が、二人の間に入って朝野未沙をマサラ・アッサムから遠ざけた。
「今です。敵に隙ができました。アタックチャーンス! 行くのです、わんこに、にゃんこ」(V)
「まあ、人のことをにゃんこだなんて。かわいいことを♪」
 ペコ・フラワリーたちを指さして叫ぶいんすますぽに夫の言葉に、デクステラ・サリクスがニッコリと微笑みながら彼の顔に爪を走らせた。でも、目は笑っていない。
「いたたたたたた」
 あわてて、いんすますぽに夫が姿を消す。
「今だわ!」
 混乱がピークだと見なしたローザマリア・クライツァールが、しびれ粉を周囲に撒き散らした。
「しまった……」
 対峙していたシニストラ・ラウルスとペコ・フラワリーたちは、予期していなかった別グループの攻撃にふいをつかれた。
「エリー、援護を」
 動けなくなった敵に一気に則天去私を叩き込んで決めようとしたローザマリア・クライツァールの顔に、突然飛んできたカレー皿が直撃した。
「誰、まだ動ける者が……からーい!!」
 偏食なローザマリア・クライツァールとしては、食べたことのない食べ物には弱い。まして、料理勝負の後もアーサー・レイスが火を止めなかったので煮詰まるだけに詰まった濃縮タイカレーである。そのまましばらく、ローザマリア・クライツァールは地面でのたうち回ることになった。
「にゅっ! ローザ……」
「たっゆんは出てくるなぁ!!」
「きゃっ、なの」
 日堂真宵必殺の跳び蹴りが、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァに炸裂する。エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァがたっゆんゆえのやつあたりの悲劇であった。
「後二人……」
 日堂真宵が、佐倉留美とデクステラ・サリクスを睨みつける。
「えっ、わたくしなのですか!?」
 思わず、佐倉留美がやっと動けるようになった身体を後退(あとず)らせた。
「なんか、むかつくなあ」
「ええ。そうですね」
 ハブられたマサラ・アッサムとペコ・フラワリーが少し気を悪くする。
「たっゆんは滅びろお!」
 もはやなんのために戦うのか分からない日堂真宵が佐倉留美にむかって躍りかかろうとしたとき、突然、三者の中央で爆発が起こった。
「うーん、まだ命中精度があまいな」
 ゲームパッドを持ったオプシディアンがぼやく。
「機体選択はR1L1で、照準はアナログスティック、発射は○ボタンですから」
 アクアマリンが補足説明する。
「こうか!?」
『了解しました、御主人様。メイドさんの目の力〜』
 オプシディアンが再び操作すると、メイドロボの一台が目からビームを発射した。再び、あらぬ方向にビームが着弾して爆発が起きる。
「ちょっと待て、本気で殺す気か!?」
 冗談じゃないと、シニストラ・ラウルスが叫ぶ。
「あのー、これは模擬戦で、竹箒以上の武器の使用はあ……」
 あわてて大谷文美が注意するが、誰も聞いてはいない。
「へたですねえ」
「無理言うな。照準用のモニタがないんだぞ、設計ミスだろうが!」
 アクアマリンに言われて、オプシディアンが怒って言い返した。
「でしたら、ミサイルを……」
 アクアマリンの指示で、オプシディアンが武器セレクトのコマンドを入れる。
『了解しました、御主人様。メイドの誇りで胸を張る〜』
 ロボットメイドの胸がはだけて、双房が不自然に前に突き出す。
「まあ、マニアックな武装♪ 形状からして熱追尾式かしら」
 隠しギミックを見せられて、朝野未沙がらんらんと目を輝かせた。
「それどころじゃないだろう」
 マサラ・アッサムが叫んだが、逃げる間もなくミサイルが発射される。
「その見立て信じるわよ。ミーナ!!」
 朝野未沙の言葉を信じて、菅野葉月が、パートナーに指示した。あうんの呼吸で、ミーナ・コーミアが火球を空高くへと打ち上げる。ミサイルはその熱源を追って、垂直に進路を変えた。直後に、菅野葉月がサンダーブラストで二基のミサイルを爆破する。
 爆風が地面を打ち、その場にいた者たちが身をかがめて爆風に耐えた。
「なんで熱追尾式なんだ。意味のない……」
「地対空ミサイルですので……」
「ますます意味不明だぞ」
 アクアマリンの返事に、オプシディアンが呻いた。気をとりなおして、残るメイドロボにミサイルの発射態勢をとらせる。
「ロボまで……、ロボまでたっゆんかあ!!」
 日堂真宵が、メイドロボにむかって敵意丸出しで走った。
「これを使うのデース!」
 お食事チームとして洗い物をしていたアーサー・レイスが、こういうときだけ息もぴったりに寸胴を日堂真宵に投げ渡した。
「カレーの海に沈め!」
 ずぼっと、日堂真宵がメイドロボの頭からカレーの入った寸胴を被せる。
 カレーだらけになったメイドロボが全身をショートさせてぶっ倒れた。
「ああ、僕のメイドロボが……。中は大丈夫かあ!」
 思わず、アクアマリンが悲鳴をあげる。
「ふん。次は……」
 返りカレーを浴びた日堂真宵が、今度こそはとデクステラ・サリクスにむかっていく。
「うっ、くっつくから来ないで〜」
 カレーの飛沫を飛び散らせながらやってくる日堂真宵に、さすがにデクステラ・サリクスが鼻をつまんで楽しそうに逃げだした。
 そのとき、倒れて動けなくなったメイドロボの腹のコックピットが開き、中から小さな影が現れた。
「小ババ様!?」
 それを見た狭山 珠樹(さやま・たまき)が、観客席から小ババ様の所に駆けつける。
「どうして、小ババ様がこんな所にいるのですか。もしかして、メイドロボを操縦していたとか……。あー、アーデル様ったら、まーたこんなことして。前にアイスクリーム禁止の刑にされたのに、まだ懲りていなかったのですね。これでは、イルミンの恥ですわっ!」
 なんだか変な動きをするカレーまみれの小ババ様を前にして、狭山珠樹はくどくどと説教を始めた。
「ただでさえ、運よく生き残っていたお仲間の小ババ様が悪さをしているというのに、今や本家本元となった小ババ様がそういうことでどうするのですか」
 どうやら狭山珠樹は、目の前の小ババ様がイルミンスール魔法学校に帰還した唯一の小ババ様だと勘違いしたらしい。もっとも、機材室にいた小ババ様を見た者以外、校庭にいた者たちはまだ小ババ様の姿を見ていなかったので無理もないのだが。
「いいですか、このうえは我と一緒にイルミンスールに帰って、後でちゃんと蒼空学園には謝罪を……」
「ゴパ……、シパ……、サパ……」
 狭山珠樹に懇々と諭されているように見えた小ババ様だが、様子がおかしい。何かふらふらしだしたかと思うと、身体からスパークと煙を出し始めた。
「ニパ……」
「危ない!」
 とっさに、ペコ・フラワリーが持っていた竹箒を投げた。投げ槍のように飛んでいった竹箒が、小ババ様に命中して遠くへと弾き飛ばす。
「イパ……ゴパーン!!」
 直後に、小ババ様が自爆して吹っ飛んだ。
 先に小ババ様が爆発したらしいことをペコ・フラワリーが覚えていなければ、そのまま狭山珠樹は小ババ様の自爆に巻き込まれるところであった。
 小ババ様が自爆した周囲には、何やら金属片が散乱している。
「メカ小ババ様!?」
 蒼空学園で暴れている小ババ様の正体に気づいた朝野未沙が叫んだ。
「き、寄生されていたみたいですね。小ババ様恐るべしです」
 ごまかすようにアクアマリンが言ったが、誰一人としてその言葉を信じるはずもなかった。
「どっちにしろ、もう少し暴れさせてもらうとするか」
 言いつつ、素手になったペコ・フラワリーに、シニストラ・ラウルスがセスタスをつけて殴りかかってきた。
 まずいとペコ・フラワリーが振り返ったところへ、突然盾が飛んできた。とっさにそれをつかむと、シニストラ・ラウルスの攻撃を弾き返す。
「大丈夫ですか!」
 間一髪でウィングシールドを飛ばしたアルディミアク・ミトゥナが、ペコ・フラワリーにむかって叫んだ。
「お嬢ちゃんか!? まあ、すっかり変わっちまって……」
 間合いをとりながら、なんだか懐かしいものでも見るような目でシニストラ・ラウルスがアルディミアク・ミトゥナを見つめた。
「なんでお前たちがいるんだ?」
 慣れない格好で少し遅れたココ・カンパーニュが、シニストラ・ラウルスたちの姿を見て叫んだ。
「やれやれ、めちゃくちゃになってきましたね。それで事は済みましたか?」
 ちょっと困ったように、ジェイドがアクアマリンに訊ねた。
「完全じゃないですが、とりあえずは。じゃ、データを転送させますね」
 アクアマリンは、そう言うと腕時計のパネルを操作した。
「あれっ? あれれ?」
「どうしましたか?」
 何やら焦るアクアマリンに、ジェイドが訊ねた。
「いつの間にか暴走して、メカ小ババ様たちが勝手に暴れてたみたいです。おかしいなあ」
「それで、データは?」
 ジェイドが鋭く訊ねた。
「直接回収します」
 そう言うと、アクアマリンは必死にコントローラーからコマンドを送り始めた。