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ゴチメイ隊が行く3 オートマチック・オールドマジック

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ゴチメイ隊が行く3 オートマチック・オールドマジック

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「ふっ、絶滅したと思ったのに、しぶとくまた蒼空学園に現れるとは。再びナイチチと落書きしてほしいと見ました。まとめてお仕置きですわ」(V)
 フェルトペンを片手に藍玉 美海(あいだま・みうみ)が、宿敵小ババ様を捜している。
「絶滅はしてないんだもん。ほら、イルミンスールに鍛え抜かれた小ババ様が一人だけ残ってたよね。まだまだやれるんだもん」(V)
 すかさず久世 沙幸(くぜ・さゆき)が訂正を入れた。
「あれはすでに小ババ様と呼べませんわ。小ババ様は、猫パンチ一発で光にならないと、いじめがいがありませんもの」
「でも、今度現れた小ババ様は、ずいぶんと固いって話だよ。対策本部とかなんとかから来たメールだと、ロボットじゃないかとか言ってるし」
「誰がそんな手の込んだことをするのかしら。大ババ様にしては、機械を使う時点で変ですわね」
 さすがにおかしいと、藍玉美海が首をかしげる。
「だから捕まえて調べてみればいいんだもん。機械だったら、この電磁石で絶対にくっつくはずなんだもん」
 お手製の強力電磁石を見せて久世沙幸が言った。
「うーん、くっつきますかしらねえ。とにかく捜してみましょう」
 二人は電磁石のスイッチを入れると、てくてくと廊下を歩きだした。
 
「どうも、このへんに電波の乱れがあるようですわ」
 携帯電話をあちらこちらにむけて電波を調べながら、リース・バーロット(りーす・ばーろっと)が言った。
「よし、とにかく一匹でも捕まえてしまえば、じっくりと確かめることができますね。はたして、光り物として金属を捕食してしまったがために、MRK、すなわち、メタル・リインフォースド・小ババ様となってしまったのか、あるいは、誰かが小ババ様そっくりのロボットをばらまいたかのか……」
 非常に興味深いと、戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)が腕組みしたまま言った。
 今日はメイドロボ勝負なども開催されていて、ロボット繋がりであれば見るからに怪しいのだが、証拠がなければ迂闊に動くことはできない。一番手っ取り早いのが、小ババ様を捕獲して何かの証拠をつかむことである。そのため、戦部小次郎は、捕まえた小ババ様を分解して調べる気満々であった。
「うまくすれば、その技術を解析して、メカ小ババ様量産という未来もありえますからね」
 そう言う戦部小次郎に、それは希望的観測的すぎるとリース・バーロットは内心思った。解析したからと言って、同じ物が作れるとは限らない。
「それにしても、このへんが怪しいのですが……あれっ?」
 携帯を動かしていたエミリア・パージカルが、近づいてきた久世沙幸たちを見て怪訝な顔をした。アンテナの本数が不規則に変化する。
「あなたたち、何をしているのですか?」
「もちろん、小ババ様の探索ですわ。こちらは、秘密兵器を使っておりますの」
 自慢げに藍玉美海が答えた。
「うーん、今の電波障害の原因はそれらしいね」
 久世沙幸の持っている電磁石を指さして戦部小次郎が言った。
 
    ★    ★    ★
 
「きゃー、いたー。さあ、小ババ様。今度こそ、あたしと契約してもらうわよー」
 偶然見つけた小ババ様を追いかけながら葛葉 明(くずのは・めい)が歓声をあげた。
「そこの人ー、小ババ様を捕まえてー!」
 リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)の姿を見つけて、葛葉明が叫んだ。
「ラッキー。小ババ様の駆除なら、この小バババスターズにおまかせなのだよ」
 新規開発したという小ババ様捕獲機のノズルを、むかってくる小ババ様にむけて、リリ・スノーウォーカーが言った。見た目は業務用掃除機その物だが、いつの間にそんな物を用意していたのか。もちろん、本来の用途はきっと別なのであろうが。
「小ババ様に特別恨みはない……ということにしておくのであるが。これも、大食らいのパートナーたちを養うためなのだよ。諦めて捕まるのだ、小ババ様!」
 言いつつ、リリ・スノーウォーカーが、持っていた小ババ様捕獲機で念願の小ババ様をシュポンと中へ吸い込んだ。
「やったのだ!」
 思いもしない大成功に、リリ・スノーウォーカーが歓声をあげた。
「凄い。さあ、その小ババ様をこちらに渡しなさい。その子は、あたしのパートナーなんだから」
「パートナー!? 小ババ様っていつ新種族になったのだ?」
 当然のように小ババ様を要求する葛葉明に、リリ・スノーウォーカーが聞き返した。
「大丈夫。契約さえしてしまえば、問題はないわ」
 強引に、葛葉明がリリ・スノーウォーカーの背負っている小ババ様捕獲機の蓋を開けようとした。
「ちょっと、こちらとしても商売なのだよ。ただというわけには……」
「お金取る気なの!? 小ババ様は野生なんだから、あなたの物じゃないのよ。さあ、ただで渡しなさい」
 なんだか、捕まえた小ババ様の値段で二人がもめ始めた。
「ゴパ、ゴパ……」
 小ババ様捕獲機の中からは、小ババ様の鳴き声が微かに聞こえてくる。
「なんだか、無事捕獲した人がいるようだね」
「ええ。あれが手に入れば、いろいろと分かりそうです」
 物陰から一部始終を見ていた如月 正悟(きさらぎ・しょうご)の言葉に、エミリア・パージカル(えみりあ・ぱーじかる)が答えた。
「うん。面白いレポートがまとめられそうだ」
 如月正悟がうなずいたとき、校内放送用のスピーカーからノア・セイブレムの声が声が流れてきた。
『ピンポンパンポーン♪ 小ババ様対策本部からの御連絡です。ただいま校内で目撃されている小ババ様は、ロボットであるという情報が多数寄せられています。今回の事件はイルミンスールとはまったく関係ありません。そのことは強調しておきます。なお、詳細はまだ推測の域を出ませんので、後日お伝えしたいと思います。また、メカ小ババ様はダメージを受けたり、捕獲されたりしますと、自爆することが確認されています。充分注意してください』
「うそ!? 自爆だと。やだやだやだ」
 放送を聞いたリリ・スノーウォーカーが真っ青になった。
「シパ……、サパ……」
 背中の小ババ様捕獲機の中から、メカ小ババ様のカウントダウンが聞こえてくる。
「何をやっているんだよ」
 見かねた如月正悟が飛び出した。エミリア・パージカルと共に、リリ・スノーウォーカーの背負っている小ババ様捕獲機を彼女から引き剥がして投げ捨てる。
 ちゅどーん。
 間一髪で、小ババ様捕獲機が木っ端微塵に吹き飛んだ。もし背負ったままであったなら、リリ・スノーウォーカーの背中に大穴が開いていたかもしれない。
「何よこれ、もしかして、小ババ様って真っ赤な偽物だったの。だましやがったなこん畜生!!」
 床に開いた穴を見つめて葛葉明が、地団駄を踏んだ。