リアクション
卍卍卍 葦原明倫館と米軍、天御柱学院が参加して共同研究した鬼鎧は、試作機完成以後、より実践的に改良が加えられる一方で、量産化できないかという動きがあった。 しかし、鬼鎧の元となる『オリジナルの鬼鎧』がなくては、一から作るというのは到底不可能である。 マホロバに眠る他の鬼鎧を探しながら、当面はこの試作機一機を投入することとなった。 搭乗者に志願した者は三組六名であったが、それぞれ年齢も種族もクラスも異なる。 研究員達はこぞって彼らのデータを欲しがっていた。 「順番に乗って、『鬼の血』を入れ替えるときに交代するしかないな。問題は『鬼の血』による稼働時間だ。一回注入したからって、永久に持続する訳じゃないから、その都度必要になるしな」 これまで兄卍 悠也(まんじ・ゆうや)の調査を補佐してきた機晶姫卍 神楽(まんじ・かぐら)がため息をついた。 マホロバ人黒妖 魔夜(こくよう・まや)が不満の声を上げる。 「えー、魔夜には必要ないよ〜。魔夜、鬼鎧の考えてること分かるもん」 「仕方ないだろう。汎用性を持たせるために、人間が手を加えたんだから。良いこともあれば、悪いこともある。しかし……兄様も無茶される。自ら実験台になろうとされるとは」 そんな神楽の心配をよそに、魔夜は鬼鎧によじ登って何やら弄っている。 「ふふふ……万が一ってことがあるし、敵さんに鬼鎧を渡さないもんねー」 小さな光が点滅する怪しげな小型爆弾をとりつけ、不敵に笑っている。 「変なことしようとしたら、ドカン! だよ……ふふ」 ・ ・ ・ 「瑞穂のみなさん! 幕府から政権を奪取して……それで満足しても、何の意味もないですよ。もしマホロバを守るため、平和を作るためなら志は一緒なはずです!」 交渉の結果、一番手に鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)と共に鬼鎧に乗り込んだ水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)が、瑞穂陣営を目指していた。 鬼鎧の力は生身の人間相手には圧倒的だ。 次々に向かってくる瑞穂藩士を迎え討つ。 睡蓮は一方的に敵を蹂躙することは望んでいない。 しかし、攻撃を仕掛けてくる瑞穂藩士は後を絶たない。 その中で、ある人に似た人影を見たような気がした。 「え……玖朔さん!?」 彼女は鬼鎧が気がかりで葦原へ転校してきたが、実はもう一つあった。 鬼鎧に気を取られている間に、彼氏がマホロバの女に取られそうになっていた。 彼氏とは瑞穂藩の副将に付いた霧島 玖朔(きりしま・くざく)のことである。 実際に浮気の証拠はないのだが、玖朔が瑞穂藩士と茶屋通いをしているという噂を聞きつけていた。 「玖朔さん!私が勝ったら、浮気禁止ですからね!」 鬼鎧は、元は鬼という『いきもの』だ。 操縦においてイコンほどの高度な知識や専門的技術は必要ないが、搭乗者の意思や感情に左右されやすい。 九頭切丸はなんとか制御していたが、次第に睡蓮に引きずられるようになっていた。 鬼鎧が周囲の木々をなぎ倒し、都の街壁を壊していく。 |
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