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リアクション
第七章 奇襲作戦1
マホロバ空海軍では、対龍騎士用の軍艦の建造・配備が先重要課題だったが、第四第四騎士団の想像以上に早い侵攻作戦に、急遽軍議が開かれた。
先手を先に打つべく、第四龍騎士団と瑞穂兵へ強襲をかけるというものである。
海軍奉行並篠宮 悠(しのみや・ゆう)は、敵陣野営地襲撃の手配を行っていた。
「西方から大群を連れての遠征……長旅の疲れが出ない筈がない。龍騎士とはいえ、それほど長い移動距離を飛べるとも思えない。必ずどこかで野営地を設け、休息を取らねば。そこを、叩く!」
それに対し、蒼空学園風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)は、扶桑防衛(篭城)戦に専念し、敵軍を扶桑に足止めしている間に、手薄になっている瑞穂藩本拠を攻略したほうがよいと提案した。
「敵側は遠征により、疲労が蓄積し易いという弱点を抱えているといく見解は、僕も篠宮さんと一緒です。ならば、ことらの兵数が多い事を活かして、自軍は交代で十分に休息を取らせ、敵兵には休息を取る余裕を与えないよう疲弊させ、戦力の質の差を埋める戦い方をしたらよいのではないでしょうか」
優斗の案は長期戦をみこんでのことである。
英霊沖田 総司(おきた・そうじ)が前に進み出た。
「俺に兵を預けてくれるんなら、鬼城の 灯姫(きじょうの・あかりひめ)とともに、扶桑の都を守りますぜ。第四龍騎士団と瑞穂連合軍より先に、扶桑の都へ入り、防衛してみせます」
総司は言う。
「そのときは鬼城の 灯姫(きじょうの・あかりひめ)が総大将です」
しかし、これは幕臣から、主に鬼城家の筋のものからの反発が予想された。
「私には……マホロバを預かる鬼城家には、命を捨ててでも扶桑を、民を守り抜く義務がある!」
灯姫はこう言ったが、鬼城の血を引くものではあるものの、公には認められていない。
長い間、鬼城家が隠し続け、マホロバ城の地下に閉じ込められていたという経緯がある。
幕府の総大将としては、認められるものではなかった。
「灯姫のお気持ちはありがたい。長期戦という作戦もわかるが、扶桑の都は要塞じゃない。防衛にも篭城にも向かない『都』だ。民も多く住んでいる。何よりも、扶桑の樹があるんだ。扶桑の樹を都の中から狙っている輩もいる。今の、第四龍騎士団と瑞穂連合軍を相手に、内も外もというのは至難の業だ」
悠は、一団がやってくる前に、こちら側が先に打って出るべきだと主張した。
そもそも数は多いとはいえ、練度の低い兵を小出しに出し続けても、龍騎士や帝国式訓練を受けた兵相手には、玉砕されるだけではないか、そのような戦法に参加してくれるものはいるのかと懸念された。
「では、軍兵の配分はどうするんです? 考えているのですか?」と、優斗。
「いや、それはまだ……」
「では、主力2〜3万、瑞穂藩拠点への遠征軍5千〜1万、マホロバ城防衛3千〜5千でどうでしょう。敵の注意が幕府の兵の動向へ向けられる状況を利用し、奇襲をかけるのは、ボクも賛成です」
情報によると、第四龍騎士団と瑞穂藩兵はすでに瑞穂を出発し、扶桑の都への道の手前で休息をとっているらしい。
鳴潮海峡(なるしおかいかいきょう)。
雲海の流れの激しい難所で、常に雲が渦を巻き、気を許せばあっという間に流されてしまうという。
悠は先撃隊を組織する一方で、協力者を募った。
ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)が「はーい」手を挙げる。
「ミーナも明倫館の生徒です。何が出来るかまだわからないけど……マホロバを救うお手伝いをしたいです! ……はわわっ!!」
その途端つまずき、ミーナは持ってきた書類をぶちまけた。
悠は一抹の不安を感じながらも、手紙を差し出した。
「じゃあ、これをお願いできるかな。危険だけど……大丈夫?」
彼女はにっこりと笑う。
「もちろん。一所懸命頑張るからね!」
ミーナは作戦指令書を持って、走りまわった。