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【おとこのこうちょう!】しずかのじゅせいらん! 前編

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【おとこのこうちょう!】しずかのじゅせいらん! 前編

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■□■2■□■ 小ラズィーヤの秘密

一方、そのころ。
小ラズィーヤに、
桐生 円(きりゅう・まどか)が迫っていた。
「小ラズィーヤくーん? 詳しく話を聞かせてもらえるかなあー?」
「こんにゃくでぺちんぺちんするなっ!
時を見て教えるつもりだったが……私は未来の世界でプロフェッサー・ポシブルとなるのだ!」
「は? あなたがあの痴女でド変態の!?」
伏見 明子(ふしみ・めいこ)が、
現在の百合園でも時々、静香にセクハラしている、
黒いトレンチコートに眼鏡のテロリストのことを思いだす。
「ポシブルが鏖殺寺院のテロリストをしていたのは、仮の姿。
未来の世界では、契約者の不妊を治療する方法を発見する存在になるのだ」
「え? 待って、契約者の不妊って何。
話が見えないんだけど」
常識人の明子が、こめかみを押さえながら言う。
「未来の世界……私のいた世界のさらに先の未来では、
契約者の不妊問題が深刻化している。
そもそも、契約者になると、一部の例外を除いて、不妊になる傾向があるらしいのだ。
そのせいで、未来の世界は、深刻な少子化が進行している」
「ちょ、そんなの初耳なんだけど」
明子が困惑するなか、小ラズィーヤが続ける。
「ポシブルが、契約者の不妊を治療する方法を発見する存在になると知り、
私は、桜井静香と母上……ラズィーヤと、
百合園生の人工授精を行おうとしているのだ。
しかし、アルバ・フレスカも、
宦官にした静香から『男の娘の大切なもの』を奪って、
宦官になると覚醒する静香とシャンバラ女王の末裔、ラズィーヤの遺伝子で
最強の契約者を作り出そうとしている」
「冗談言うとゆるさないよ!
それに、過去の改ざんしたら
色々、おーかーしーなーこーとーになーるーでーしょー」
「だからこんにゃくでぺちんぺちんするのはやめろ!」
円の手を振り払い、小ラズィーヤが言う。

「私の遺伝上の母が誰であっても、
桜井静香が父、ラズィーヤ・ヴァイシャリーが生みの母であればいいんだ!
どのような手段であっても未来で『小ラズィーヤ』が生まれることができればいいんだ。
百合園で時空のゆがみが発生してしまったのは、
こういう未来が待っているからなんだよ!」
円のこんにゃくが止まる。
小ラズィーヤは嘘をついていない。
「でもそれは、桜井静香が、パラミタで自由恋愛するためでもあったのだ。
アルバ・フレスカは、最強の契約者を作り出そうとしているだけだ!
だが、私は違う!
パラレルな未来の小ラズィーヤの数だけ、未来には可能性があるんだ!」
小ラズィーヤが、拳を握りしめる。

「そのために、未来の私は桜井静香に
いつもエッチなことをしていたんだが……」
「それだけじゃなくてエッチなこともしたかったんじゃないかと」
くう、とうなる小ラズィーヤに、円がツッコミを入れる。

「でもさ、小ラズィーヤくんは、
静香校長とラズィーヤさんの一夜の過ちで生まれた子じゃないの?」
円が、未来の世界での話を持ち出す。
「やっぱり変じゃないの?」
「……その時間軸では、桜井静香が、無理やり人工授精したに違いない」
小ラズィーヤが、ため息をついた。
ちょっと気まずい沈黙が流れる。

やにわに、顔を上げた小ラズィーヤは、スポイトを手にする。
「こうしてはいられない。
アルバ・フレスカに切られてしまう前に、男の娘の大切なものを手に入れねば!」
「まあ、ものすごく変な話だけど、一応つじつまはあう……かもね。
お金もらえるなら手伝うよー」
円が言う。
「その程度で世界が救えるなら安いものだ!
ついてこい!」
小ラズィーヤは円を連れて駆け出した。
「ちょ、何言って!?」
常識人な明子は、静香を守るために2人を追う。