シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

【おとこのこうちょう!】しずかのじゅせいらん! 前編

リアクション公開中!

【おとこのこうちょう!】しずかのじゅせいらん! 前編

リアクション

■□■2■□■ ミライどき☆わくファッションチェック!

稲場 繭(いなば・まゆ)は、当時、新百合ヶ丘の屋敷に住んでいた、
過去の自分に会いに来ていた。
(昔の私は、ほとんど家の外に出してもらえなくて……。
いつもひとりぼっちだった。
……あの頃の私を連れ出して、少しでも外の世界を見せてあげよう)
顔が割れないよう、仮面をつけ、マントをなびかせながら、
繭は、自分の部屋の窓の前に現れた。
「こんにちは、お元気ですか?」
「お姉さん……だれ?」
幼い繭が、窓の外を見上げる。
「私ですか?
えっと……そう、怪盗ミラクルコクーンと呼んでください」
「怪盗さん?」
「外の世界、見てみたくないですか?」
「外……行きたい。行ってみたい!」
童話や、アニメの世界だけの話だと思っていたけれど。
幼い繭は、怪盗ミラクルコクーンこと、
現在の繭の手を取って、外の世界へと降り立った。
(なんだかくすぐったいというか、照れちゃいますね)
現在の繭は、仮面の下で頬を染めつつそう考えた。

★☆★

「キュピーン!
私のアホ毛が告げている!
かわいい子がこっちにいると!」
「こちらですか、姉さま?」
レロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)と、
ロレンシャ・カプティアティ(ろれんしゃ・かぷてぃあてぃ)が、
二人の繭の前に現れた。

「稲場 繭さんっ。
『ムカシのアナタはどんな色? ミライどき☆わくファッションチェック!』に、
ご協力ください!」
携帯のカメラを構えて、レロシャンが言う。
「なるほどー、やっぱり予想通り、白いお洋服着てますね!」
「え? お姉さんたちは?」
「私たちは、アホ毛を抜く事で生涯に一度きり時間移動ができる“時間トランスヒューマン”の一族!」
「って、姉さま、それさっき冗談だって言ったじゃないですか」
「だって、繭さんはミラクルコクーンに変身してるのに、
私も何かかっこいい感じに名乗りたいじゃないですか」
「え?」
幼い繭に見上げられて、現在の繭が慌てる。
「あわわ、そ、そうです!
繭さんも、いつか、ミラクルコクーンになれるんですよ!」
「そうなの!?」
幼い繭の瞳がキラキラ輝く。
(あ、つい、ごまかしてしまいました……。
でも、本当のことだからいいか……)
笑顔で冷や汗をぬぐう現在の繭であった。

★☆★

そのころ、
葛葉 杏(くずのは・あん)は、
過去の自分を説得して未来を変えようとしていた。
「いたわね!」
新百合ヶ丘でボイストレーニングに通っていた、過去の杏の前に、現在の杏が現れる。
「ど、どなたですか?」
過去の杏が、防犯ブザーを握りしめる。
「私のことはどうでもいいのよ、
私はあなたにアイドルスターになるためのアドバイスをしにきたのよ!」
ややこしいことにならないよう、名前は名乗らず、
現在の杏が一方的に告げる。
「アイドルスター? 時代はアイドルのマスターですよ」
(くっ、そういえばこの頃の私はアイドルのマスターを目指していたわね……)
自分が当時、アイドルスターを目指してなかったことを思いだした、現在の杏だが。
「まぁそんな事はどうでもいいわ、とにかく私の話を聞きなさい!」
自分が売れなくなった未来を避けるためのアドバイスだけでもすることにした。
「まずヅラをつけたプロデューサーにヅラって指摘しない事、
指摘したらどえらい事になるわ!」
「公然の秘密じゃないですか。
天然キャラは愛されキャラですよ」
「んなわけないでしょう!
それと売れてる後輩がタメ口で話しかけてきたからって
顔面に飛び膝蹴りをするのはやめなさい、ボディにするのよ」
「そんな奴は二度と画面に映れないようにしてやらないとですよ」
「ああ、だから、私のアドバイス聞きなさいよ!
アイドルスターになれないわよ!」
「だからあたしはアイドルスターを目指してないって……」
ツッコミを入れる過去の杏だが。

★☆★

「まったく姉さま、繭さんが秘密にされているのに、
デリカシーないですわよ」
「えー、そうですか?
でも、かわいい写真いっぱい撮れましたね……って、あーっ!」
「なによあなたたち!?」
「また変な人たちが!」
2人の杏の前に、レロシャンとロレンシャが駆け寄る。
「「ムカシのアナタはどんな色? ミライどき☆わくファッションチェック!」」
「な、なにそれ」
「やめてください! 撮影は事務所を通してください!」
あっけにとられる2人の杏を、レロシャンとロレンシャが撮影する。
「ロボットに乗る前の杏さんは、清純派アイドル路線ですね。
でも、もう少しアクセントがあった方がいいかな?
75点!」
「え……イメチェンした方がいいでしょうか」
「って、なんで私の言うことは聞かないのにそんなアドバイスは聞くのよ!」
こうして、4人は漫才を繰り広げ、
結果、現在の杏のアドバイスは聞き入れられることなく、
未来が変わったりはしないのであった。