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【おとこのこうちょう!】しずかのじゅせいらん! 前編

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【おとこのこうちょう!】しずかのじゅせいらん! 前編

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■□■3■□■ 小学生静香の受難

そのころ、
真口 悠希(まぐち・ゆき)は、
現在の静香とともに行動し、小学生の静香を発見していた。
「あっ、待ってください、静香さま!」
「あれは?」
駆け寄ろうとする静香を悠希が制止した。

小学校低学年くらいの少女が、小学生の静香の方に歩いてくる。
少女は泣いていた。
「どうしたの?」
小学生の静香が、少女に駆け寄る。

「ここは、小学生の静香さまを見守りましょう」
「うん、そうだね」
電柱の陰から、現在の悠希と静香が見守る。

「ボク……学校で……
男のくせに外見が『めめしい』って言われて……」
少女……ではなく、その男の娘は、しゃくりあげながら言った。
「そうだったんだ……。
でもね、人の個性はそれぞれなんだよ!
僕も、自分の着たい服を着てるし!」
「そう、なの……?」
「うん、だから、いじめなんかに負けずに、
かわいい服が着たいって言う自分の気持ちを大切にしていいんだよ!」
泣いていた男の娘は、小学生の静香の顔をしばらくじっと見つめて、
やがて笑顔になり、力強くうなずいた。
「うん! ボク、いじめになんか負けないでがんばるよ!」

こうして、小学生の静香に励まされた男の娘は、
宝くじを差し出した。
「これ、あげる!」
「いいの?」
「うん……むしろ
こんなお礼しかできない弱い自分が情けなくて……
将来はボクも……静香さまの為になれる人になるね!」
「ありがとう」
微笑む静香に、男の娘は続ける。
「……それでね、そうなれたら結婚して下さいっ!
指切りげんまーん!」
「えっ!?」
男の娘は驚いている静香の手を取ると、小指を結んで上下に振る。
「えへへ……またね。
ばいばーい!
あ……子作りもしようね☆」
「こ、子作りって……」
笑って走り去る男の娘を、赤面して見送る小学生の静香だった。

「ふふ……マセた子ですね。
ただ男の娘同士で子どもは作れないですよね……うっ!?」
ほほえましくその様子を見守り、静香に言う悠希だが。
頭を押さえてうずくまる。
「どうしたの!?」
「頭が痛い……はっ!?
思い出した……」
悠希が、静香を見上げて言う。
「あの子は……過去のボクです」
「そういえば、面影あったような」
「あの後……事故に遭い
ボクはあの頃の記憶を忘れて」
悠希は、過去の自分が去って行った方を見つめる。
(そうか……だからボクは
静香さまに初めて会った時から無意識的に
あんな惹かれていたのかもしれない……)

★☆★

そうしていると。

「わぁ。静香校長先生ちっちゃくてかわいいですぅ。
ぎゅっとしてなでなでしてほっぺすりすりしたい!」
ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)が、
飛び出して、小学生の静香に抱きついた。
物陰から見守っていたが、静香の可愛らしさに我慢できなくなってしまったのだった。
「きゃー、お肌すべすべで真っ白ですぅ!
やわらかくていいにおいー」
「ちょ、お姉さん、やめてくださ……
あ、もしかして」
小学生の静香が、ミーナの平らな胸を見て言う。
「お姉さんも、男の子?」
「な!?」
ミーナに頭に雷が落ちる。
さっきから女装した唯斗や、小学生の悠希に会っていたため、
そう思った小学生の静香だったが。
「えぐえぐ、どうせ、ミーナは胸が残念な子ですよー」
「ご、ごめんなさい!
悪気はなかったんです!」
「だからショックなんですぅううううう」
小学生の静香に謝られ、ミーナはさらに号泣する。

小学生の静香がおろおろしていると、
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が現れ、
助け舟を出す。
「まあまあ、胸の大きさだけが人の価値をはかるすべてじゃないし」
「ぐふっ」
しかし、ミーナの傷口に塩を塗り込んだだけだった。
「怖がることはない。おねぇさんと一緒に、安全な所に行こうね?」
そう言うミルディアだが。
「こ、怖い……」
「え? ちょ!? 何でそんなに怖がんの!!?」
「お姉さんも、マスクドランサーさんの仲間なの?」
深緑の槍を持って武装しているせいで、そう思われたらしい。
「マスクド……!?
わ、わたしはそんなあやしいひとじゃ……!!」
しかし、ミルディアが近づくと、武装の金属音が響く。
「きゃああっ!」
「ちょ、なんなのその、悪人に襲われた乙女的な悲鳴は!?
これじゃ本当に不審者みたいじゃない!
け、警察が来ないうちに、早く安全な場所へ!」
慌てるミルディアだが、どんどん逆効果になっている。

「待て! ここは俺が相手だ!」
健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)と、
パートナーの天鐘 咲夜(あまがね・さきや)
枸橘 茨(からたち・いばら)
セレア・ファリンクス(せれあ・ふぁりんくす)が現れた。

「みんなで過去の静香校長に悪さしやがって!
許さねえ!」
「え? 静香さんに悪さをするのですか? そんな人、許しません!」
咲夜が、ミーナとミルディアにバニッシュを放つ。
「「きゃー!?」」
「時空を超えた犯罪……鬱陶しいわね。
遠慮せず一人ずつ倒していきましょう」
紅の魔眼を使用して、茨が叫ぶ。
「その身を蝕む妄執!」
「ぎゃああああああ、胸がえぐれていくううううう!」
ミーナが恐ろしい幻覚を見て泣き叫ぶ。
「今ですわ! 爆炎波!」
セレアが、ミーナをぶっ飛ばす。
「きゃああああああああ!?」
ぶっとばされたミーナは、
時空を超えて現在のヴァイシャリー湖へ落下した。

「このあたりに、
『不審な槍を持って武装した女』がいるって噂になっていたが、
もしや……!」
「だから、それはあたしじゃないって!」
「黙れ! 逆らったらこの死にたくなる着信音を聞かせてやる!」

ワカカカカカカ!!

「ぎゃあああああ」
勇刃に拷問されるミルディアだが。
「うぐうっ!? しまった、俺も聞いてしまった!」
「健闘くん!? うっ!?」
「健闘君!? ああっ!!」
「健闘様、咲夜様、茨様、これでは、全員、ダメージを受けてしまいますわ!?」
勇刃と咲夜と茨とセレアは、自分たちも着信音を聞いてしまい、自滅したのだった。

「わーん、助けてーっ!」
小学生静香が、その隙に泣いて逃げる。

「あっ、過去の僕!」
現在の静香たちは、小学生の静香を見失ってしまうのであった。