リアクション
二回戦 ○第三試合 セレアナ・ミアキス 対 緋王 輝夜 槍を扱き、セレアナは輝夜を見据えた。侮れない相手である。しかし、パートナーの露払いとして、ぜひとも三回戦進出を決めたいところであった。 「いくわよ!」 セレアナは素早く、槍を突き出した。が、そこにいたはずの輝夜の姿がない。どうやら【ミラージュ】で避けたようだ。 輝夜はぐっと腕に力を込めた。しかしセレアナは手元に戻した槍を、再び繰り出した。今度は避ける間もない。倒れた輝夜へ向け、セレアナは渾身の力を込めた【シーリングランス】を発動した。 だが気が付いた時には、輝夜の体がセレアナの眼下にあった。滑り込んだらしい。強かに足を打たれ、セレアナは立っていられなくなった。ここで、プラチナムが試合終了を宣言した。 「言い訳はしないわ。あなたが勝って、私が負けた。それが事実よ」 「まあね」 二人は顔を見合わせて笑った。 ○第四試合 モードレット・ロットドラゴン 対 柳玄 氷藍 氷藍はハイナの後ろにある「風靡」を見た。変わった武器である。切れ味はいいが、殺傷力はないらしい。手に入れてどうするかと言われると、困るのだが。 気になることは他にもある。漁火――心の読める相手というのは、厄介だ。打開策を練っておかなければ……。 しかし、何はともあれ今は目の前の敵に集中しなければならない。 モードレットは、この大会そのものにあまり興味がなさそうだった。なぜ、参加したのだろうか? そんなことを考えている間に、試合が始まった。 モードレットが槍を繰り出すより速く、氷藍は矢を放った。モードレットは、一瞬、顔をしかめる。 「今だ!」 すかさず【神威の矢】のために二の矢を番えたが、モードレットの動きは素早かった。氷藍の首、そして腹部へと素早く槍を突く。 「ぐはっ!」 氷藍は体をくの字にして吹っ飛ばされた。 回復する間もなく、氷藍は意識を失った。 「……ふン」 相変わらずモードレットは、つまらなさそうだった。 * * * 観客の声に、ツァルト・ブルーメ(つぁると・ぶるーめ)は目を回しそうになった。 「ふえぇ……これが御前試合の会場ですかぁ。ここで皆さんが、正々堂々と戦うのですね!」 完全におのぼりさん状態である。 争いは嫌いなツァルトだが、競技となれば別だ。力の限り応援しようと、【幸せの歌】を歌い、ディーバードの『ティー』も美しい歌声を奏でた。 * * * ○第五試合 九十九 天地 対 イリス・クェイン 天地の薙刀が、イリスの脛を狙う。イリスはそれを後ろへ飛びのいて避け、すぐに地面を蹴ると天地の懐に潜り込んだ。 「何の!」 だが、【神楽舞】でくるりと回転した天地に、イリスの木剣は空を切る。 イリスは間を置かず、動いた。回転が終わる前に、薙刀を鋭く薙ぎ払い、天地は大きく転んでしまった。 「ふふ、残念……負けてしまったので御座います」 天地は土を払いながら立ち上がった。 「あなたの動きもなかなかでしたよ」 二人の間に火花が散った――ように、ツァルトには見えたという。 ○第六試合 エリス・クロフォード 対 カレン・ヴォルテール 二試合目なので、カレンも慣れて――ということはなく、相変わらず観客の歓声に顔を赤らめ、周囲を見ることが出来ない。それどころか、対戦相手も目に入っていない。 エリスが礼儀正しくお辞儀したことも気づかず、辛うじて開始の合図でカレンは殴りかかった。相手を見ていないからもちろん、当たらない。 エリスがカレンの胸を突こうとするのを、辛うじて躱し、早く終わらせたい一心から、【絶対領域】を発動した。 しかしそれと、エリスの神速の一撃が同時だった。全くの無防備なところへ、双方共に技を食らい、気絶。 プラチナムは相打ちを宣言し、二人共に次の試合へ進出となった。 ○第七試合 エメリヤン・ロッソー 対 エクス・ゼロ 無口な戦いだった。 あまりに無口で、観客もつい黙り込んでしまった。 静かな会場で、二人だけがひたすら動いている。 エクスがエメリヤンの胴に斬りかかる。エメリヤンはそれを受け流し、【奈落の鉄鎖】を叩きつけた。 勝負は呆気なく決まった。 「……マイリマシタ」 やっと喋ってくれた。 * * * 「さあ、刃夜兄様を応援しますですよ」 そう言ったツァルトの足元に、紙が一枚飛んできて絡まった。明倫館の校内瓦版だ。 見出しはこうだ。 『葦原島にもヒーロー、否、スーパーヒロインが!? 謎の剣客『プレアデス』!』 「……昴姉様の知らぬところで、名前が」 どうすべきか寸の間迷い、ツァルトはそれを懐に突っ込んだ。 その頃、九十九 昴(つくも・すばる)は同じ瓦版を見つけて絶句していた。 * * * ○第八試合 九十九 刃夜 対 シャーロット・フリーフィールド 【バーストダッシュ】でスピードを上げた刃夜が、シャーロットの真正面に立った。にっこり笑った刃夜に、シャーロットも笑みで返し、彼女の銃が火を噴いた。 額に弾を受け、勢いで刃夜は後方へ引っ繰り返る。しかし倒れることはなく、刃夜は宙返りすると、 「これはどうかな!?」 着地と同時に【レジェンドストライク】を放った。シャーロットもまた、【アンボーン・テクニック】を使う。二人の真ん中で、火花が散った。 「やるね!」 「そちらこそ!」 刃夜は木剣をシャーロットの足元目掛けて、振り下ろした。 が、その大きな木剣の上に、シャーロットはまるで体重などないかのように、ふわりと乗った。 「終わりです」 パン! と音がして、刃夜は今度こそ引っ繰り返った。 * * * セレンは控え室で銃の手入れをしていた。玩具ではあるが、造りは精巧だ。――もっとも、本物の銃とて、分解すれば玩具と左程変わらないのだが。 「大丈夫?」 セレアナがやってきて、セレンの隣に座った。 「相手も銃でしょ、大丈夫」 いつかは剣や槍も使いこなせるようになりたいが、やはり手慣れた武器が一番だ。 「さて、と。いきますか」 セレンは肩からかけていたコートを、セレアナに渡した。 「勝ってくるわね」 * * * ○第九試合 猪川 庵 対 セレンフィリティ・シャーレット 共に銃が武器ということで、庵もセレンも距離を取った。互いに、相手を近づかせないように動く。 足を止めようと、セレンが引き金を引いた。が、庵も同じことを考えたらしい。二人の中央で、弾がぶつかり、弾け飛ぶ。 セレンは【陽動射撃】で庵の気を逸らそうとしたが、庵は相手しか見ていなかった。 破片の掠めていった頬をセレンは撫でた。おそらく、血が出ているが確認する間がない。何とかしなければ、負けてしまう。 セレンは一気に距離を縮めたが、それより速く、庵は引き金に指をかけた。 「自分では知らないうちに小細工に走ってたか……」 控え室で、セレンは腰かけて呟いた。壁に寄りかかっていたセレアナが微笑む。 相手を焦らすつもりが、自分の方が追い込まれていた。 「だけど、次は負けないわよ」 「その恰好じゃ、何を言っても説得力がないわよ」 「いいの!」 セレンは、恋人を軽く睨みつけた。 ○第十試合 カタル、不戦勝 |
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