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フューチャー・ファインダーズ(第1回/全3回)

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フューチャー・ファインダーズ(第1回/全3回)

リアクション


【14】


 サルベージラグーンの倉庫に、メルキオールらしき人が連れてこられた。
 船員が緊張の面持ちで迎える中、彼は、手を縛られたまま椅子に座らせられた。
「助けてくださったのには感謝シマス。ただ何故、縛られているのデショウ?」
「すみませんねぇ。あなたが何者かわからないもので」
 太公望は言った。
「ああ。そうデスネ。ワタシはグランツ教の司教、メルキオールと申しマス」
「確かに、司教様に”よく似て”らっしゃる」
 しかし、教団に確認してみたところ、メルキオールは大神殿にいるそうだ。
「わ、ワタシはメルキールデス!」
「へぇ。そのメルキオール様が、なんでまた太平洋で海水浴を?」
「それは、思い出せマセン……」
 彼も記憶をなくしていた。何故、あんなところにいたのか。どうやってあそこまで来たのか。まるで思い出せなかった。
「……ここはドコなのデショウ?」
「第8地区のサルベージラグーンですよ」
「第8地区……。もしかしてココは、グランツミレニアムなのデスカ?」
「そうに決まってるじゃないですか」
「おお。懐かしき我が都。再びこの地を踏めるとは。ワタシの心は激しく震え、春の光のような感動に包まれてイマス……って、何故、グランツミレニアムに!? ワタシは、海京にいたハズでは?」
 太公望はため息を吐いた。
 彼の話は、ほとんど何を言ってるのか、よくわからない。
「それに、この手の刺青。こんな数字の刺青なんて、司教様はしてませんけど?」
「な、なんデスカ。この数字は……」
「知りませんよ。でも、あんた達なんだろう? この町に来た侵入者ってのは?」
 太公望は、白竜、羅儀、エヴァルト、ブルタを見た。
 彼は、四人の手の甲に現れた謎の数字に、槍のように鋭い視線を突き刺した。
 そこに、翠とミリア、奏とサリアが、アイリによって連れて来られた。四人は、鎖でぐるぐる巻きにされている。
「……ふぁ、ファンブロウさん?」
 エヴァルトは、目を白黒させた。
 連れて来られたのは、彼女達だけではなかった。
 恭也と唯依、アルクラントとエメリアーヌ、フランとカタリナとアンジェ。レストランのマーツェカ、イーリャとヴァディーシャ、ジヴァ。鑑定を手伝った、生駒、ジョージ、リオ、フェルも拘束されて連れて来られた。
(なんだか、マズイ状況だぞ……!)
(あの麦わら野郎。一体、何をしようってんだ……?)
 倉庫に潜伏中の、静麻とレイナ、乱世とグレアムは息を飲んだ。

「あんた達、逃がしてやるから、日本に行きな」
 太公望はそう言った。船を用意してくれるという。
「別に親切で言ってるわけじゃあないぜ。何者かは知らないが、正直、あんた達にいられると迷惑なんだ。今日もクルセイダーに倉庫を暴かれそうになっちまったしな」
 太公望の提案は、悪くない提案だった。
 しかし、その申し出を受けるわけにはいかなかった。
「皆、何かの理由があってここにいる。それを知るまで、ここを去ることは出来ない」
 アルクラントがそう言うと、他のみんなも頷いた。
「……なら仕方ない。適当に船にぶっ込んで、日本に送り届けてやろうかね」
「うわっ!」
 船員達に、無理矢理連れて行かれそうになる。
「ファンブロウさん、なんとか言ってくれよ!」
 エヴァルトは言った。
「あんたなら、俺達のことを説明出来るだろ?」
「……またその話ですか。私はあなた達とは会ったこともありません」
「なんでだよ! 一緒に、海京を救うために、グランツ教と戦ったじゃないか!」
 その時、恭也がある事に気付いた。
「……ちょっと待て。なんか変だぞ。彼女の手を見てみろ」
「……手の甲に数字がねぇ」
「あ、本当だ」
 マーツェカと翠も、その事実に気付いた。
「つまり、数字がないと言う事は、どういう事になりますの?」
「おそらく、この数字は時空を超えた人間につく印よ。それがないということは……。このアイリさんは、この時代のアイリさん?」
 フランとイーリャは、顔を見合わせる。
 太公望は、ポリポリと頬を掻いた。
「あのー……あんた達、さっきから何の話してるんだ?」
「わかんないかな」
 不意に、リオが口を開いた。
「僕たちは過去から来たんだよ。2023年から時空を超えて、この時代に」
 出来るかぎり、2023年の教団の事、アイリの事を説明する。
 けれど、荒唐無稽な話だ。到底信じてもらえないのも仕方のないことだった。
「過去でグランツ教と戦ったって、そんな前からグランツ教なんてあったか?」
「2023年に、教団が発足してたなんて聞いたことねぇぜ?」
 船員は笑った。しかし、太公望は考え込んでいた。
「……おもしろい連中だねぇ」
「リーダー、どうしますか、こいつら」
「解放してやんな」
「そう。解放して……ええっ!?」
「俺は、信じるよ。お前らのそのぶっ飛んだヨタ話をな」
「な、何言ってんですか。こんなの、子ども騙しのハッタリですよ!」
「お前らは知らねぇが、俺は諜報部から一個聞いてる話があるんだよ」
 それは、グランツ教が過去に行こうとしている、という噂だった。
 なんの目的で、そんな事をしようとしているのかは不明だが、実行するための時空転移装置を開発しているとの情報も朧にある。
「……彼らの語る2023年も別時空に存在してもおかしくない、と?」
「信じる気になったのは、それだけじゃあないけどねぇ……」
 太公望は、拘束を解かれたみんなを見回す。
「それに、グランツ教から海京を守るために戦ったってのが気に入った。この時代の海京は沈んじまったけど、俺たちは、新海京を取り戻すために戦ってる。生きる世界は違うが、志は同じ、仲間みてぇなもんだ。あんた達が、ここに来たその目的。そいつを思い出せるよう俺達も力を貸してやろう」
 太公望とアイリ、それから船員一同は敬礼し、改めて自己紹介をした。
「別時空からの客人に失礼した。日本国防衛省直下、救國軍、新海京方面特務隊『朝焼(あさやけ)』隊長・太公望。以後、お見知りおきを」
「同じく特務隊『朝焼』隊員・アイリ・ファンブロウです」
 彼らは、奪われた日本国の領土、新海京を取り戻すべく派遣された特務隊だ。
「きゅ、救國軍?」
「……サルベージ業者というのは?」
「それは、世を忍ぶ仮の姿って奴だよ。それに、例の”あれ”を守るためには、サルベージ業者ってぇのは都合が良かったんだ」
 あれ、とは、彼らが海底から引き上げている”G”と刻印された箱だ。
 グランツミレニアムでは、時たま、沖合で潜水艦が撃沈される事件が起こる。地球側とは戦争状態、不思議なことではないが、地球側の一員である特務隊にはある疑問があった。地球のどこの国家も、そんな潜水艦を派遣した事はないと言うのだ。
 都市に潜入していた特務隊は、秘密裏に潜水艦を調査した。その結果、彼らが発見したものは”規格外のイコンのユニット”だった。
 誰かが個人的に、このユニットを密輸しているのだ。おそらく撃沈されているのは極一部で、潜水艦は頻繁にグランツミレニアムに来ているのだろう。
「それで、レジスタンスの言ってた話を思い出したんだ。ここには”海京時代の超兵器”が眠ってるってぇね」
 特務隊はサルベージ業者として活動する事になった。
 当時、サルベージは都市に存在しなかったが、教団に取り入って、その必要性を認めさせた。大々的に謎のイコンユニットを回収し、守るための作戦だ。
 代償として、旧海京時代の遺産を幾つか教団に引き渡すことになったが、超兵器を守るためには仕方がない。
「レジスタンスと超兵器の在処を調査した結果、場所は大体特定出来たんだ」
 来るべきグランツ教への反攻作戦に向けて、今、彼らは動いている。
 レジスタンスが、超兵器と謎の開発者の確保を。
 特務隊が、海底に沈んだユニットの回収と隠蔽を。
 この二つが合わさった時、教団に立ち向かう力が生まれる。そして、その日はもうじきやってくる。

「……まさか、ワタシの都市でそんな恐ろしい計画が進んでイタとは……」
 その声に、全員が大きな忘れ物をしている事を思い出した。
 メルキオール……によく似てる人だ。
「その話を知ってしまった以上、知らないフリは出来マセン。すぐにクルセイダーを派遣し、平和を守るため、皆サンには安らかに眠って頂かなくては……」
 みんな、呆れた顔で、彼を見ている。
「……ん? どうかされマシタ?」 
「いや、あんたは縛られたまま電話が出来る特技があるのかなと思って」
「ああ! シマッタ!」
 彼は、拘束されたままだった。
「と言うか、手の甲に同じ数字があるってこたぁ、あんたは過去から来たメルキオール……なんだろ? 何しに過去から、いや、未来にまた戻ってきたんだ?」
「……それは全然思い出せマセン。誰か教えてクダサイ……」




 To Be Continued.

担当マスターより

▼担当マスター

梅村象山

▼マスターコメント

マスターの梅村象山です。
本シナリオに参加して下さった皆さま、ありがとうございます。

皆さんの探索の甲斐あって、謎の都市グランツミレニアムのことも、わかってきたのではないでしょうか。

ーーー

今回、スキル「テレパシー」の使い方で、気になる部分がありました。
こちらのスキルを使用されている方が、何人かいらっしゃったのですが、
このスキルは、解説欄にあるように、不特定多数を対象に出来るスキルではありません。
双方ともに面識がある人物、と条件があります。
こちらのスキルを使用される際は、
相手と面識があることを確認した上で、テレパシー相手の名前を必ずアクションに書いてください。

ーーー

アクションの結果、クルセイダーに追跡されている状態になったPCがいます。
次回以降、行動をクルセイダーに妨害される確率が高まりますので、お気をつけ下さい。
また、追跡状態のPCと行動を共にするアクションをかけた場合、その方も追跡状態となります。

追跡状態のPC一覧

遠藤 寿子(NPC)
雷霆 リナリエッタ
桐生 理知
フィーア・四条
リカイン・フェルマータ
レグルス・レオンハート
七枷 陣
柊 真司
柚木 桂輔
十文字 宵一
桜月 舞香

ーーー

記憶喪失状態の皆さんですが、シナリオを終え、少し思い出せる事が出てきました。
個別メッセージを確認してみてください。
グランツミレニアムに来る前の出来事を、断片的にですが、思い出せている人がいるかもしれません。
もしかしたら思い出せた事は、人によって違うかもしれませんね。

ここに出てくる記憶は、皆さんで共有して頂いて大丈夫です。
忘れているだけで、全員が知っている情報なので、
思い出せた、と言う体にしてもらえれば、次回以降この記憶を出して頂いても大丈夫です。

ーーー

次回シナリオガイド公開日は決まり次第、マスターページで告知させて頂こうと思います。
それではまた、お会い出来る事を楽しみにしております。