シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

夜桜を楽しみに♪

リアクション公開中!

夜桜を楽しみに♪

リアクション


心の繋がった仲間達と

「兄さま、このお弁当すごくおいしいですわ」
 そう言うのはエイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)である。
 エイボンは兄さまと慕う、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)や姉さまと慕うクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)と桜を見ながら、お弁当を広げていた。
 このお弁当を作ったのは、料理の得意な遼介だ。
「たくさんあるから、いっぱい食べるんだぞ」
 涼介がにこやかに二人に言う。
「あ、いけない。持ってきたお茶を出すのを忘れていましたわ。はい、兄さま、姉さま」
「ありがとうエイボンちゃん。それにしても立派な桜だよね。昼間に見る桜も素敵だけど、こうやってライトアップされたのもすごく綺麗だね。」
 エイボンの注ぐお茶を受け取りながら、クレアが桜を見て感想を述べる。
「ほら、クレア、エイボン、出汁巻き卵とか筑前煮なんかが自信朔なんだ。いっぱい食べるんだぜ」
「うん、おにいちゃん、いっぱい食べるよ。そう言えば桜って日本の花だよね。そうなると、ここの桜も日本から持ってきたのかなあ?」
「そうだな。日本から運んできたのかもな」
 涼介は、二人の皿に料理をとりわけながら、クレアの質問に答える。
「ああ、一度でいいから行ってみたいな、日本」
「どうして?」
 クレアの発言に涼介が疑問符を投げかける。
「だって、行けばおにいちゃんのルーツが分かるかも知れないもん。だから、おにいちゃん、いつか、本物の日本の桜を見に行こうね。約束だよ」
 クレアが笑顔で涼介に言うとエイボンが。
「わたくしも是非ご一緒したいです」
 と、涼介の手を握る。
「そうだな、みんなで日本の桜を見に行ける機会が出来ればいいな。約束しよう、いつかみんなで日本の桜を見に行こう。絶対」
 涼介が小指を出すと、二人も小指を出し指切りげんまんをするのだった。
 いつか日本の桜を見に行けるように。

「おねーちゃん、あれ美味しそう買って買って」
 エルシー・フロウ(えるしー・ふろう)に可愛くおねだりしているのは、ウサギの姿をしたアリスラビ・ラビ(らび・らび)である。
 ルミ・クッカ(るみ・くっか)も含めて3人で手を繋いで、夜桜見物をしているのだが、エルシーとルミがのんびり花見をしているのに対して、ラビは完全に花より団子で、色々なテキヤを覗いては「買って買って」を繰り返している。
「夜桜、とっても素敵ですね。来年までにもっとお友達を作って、今度は大勢の皆さんと一緒にお花見が出来るといいですね〜。
 エルシーがのんびり言うと、ルミがやさしい瞳で。
「エルシー様ならきっと大丈夫でございますよ。それより手をしっかり握って離さないでくださいね。はぐれると大変でございますから」
 エルシーもつられて優しい微笑みを見せる。
 そんな時、ラビが不思議そうに自問自答していた。
「どうしてお花は散っちゃうのかな? ラビ、毎日お花見でもいいのに。そしたら毎日おいしいものが食べられるのにね」
 それを聞いて、笑いが隠せないエルシーとルミだった。

「カレンねママたちと手を繋いでお散歩するの大好き〜♪」
 夜の桜の下はしゃいでいるのは、秋月 カレン(あきづき・かれん)である。
 カレンはママと慕う二人の少女達に挟まれてとても幸せだった。
「丁度、あたしが見てた雑誌と同じシチュエーションなんだもんね。恋人とっじゃないけど、二人とこれて、あたしとっても嬉しい。よ〜し張り切って夜桜楽しんじゃう」
 雑誌を握りしめて秋月 葵(あきづき・あおい)である。
 蒼いの逆側にいるエレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)は、おっとりと。
「夜桜……とっても綺麗です」
 夜桜にすっかり見とれている。
「ねえ、二人ともクレープ食べない?」
 蒼いが言うと、カレンは元気な声で。
「うん、カレン、クレープ食べるのー♪」
 3人はクレープを買うと、ベンチに座って仲良くクレープを食べた。
「もう、葵ちゃんもカレンちゃんもお口の周りにクリームつけちゃって」
 エレンディラがくすくすと笑いながら、二人のクリームをハンカチで拭いてあげる。
 そんな時間が少し経った頃、葵にもたれかかり、カレンがすやすやと寝息をたて始めた。
「あら、カレンちゃん。寝ちゃいましたね。……でももう少しだけ葵ちゃんとこうして桜を見ていたいです」
 エレンディラが少しほほを赤くして言うと。
「あたしも、エレンと一緒の子の時間を大切にしたいな」
 桜が優しい色で、3人を見守っていた。

「綺麗な夜桜ですね……」
天枷 るしあ(あまかせ・るしあ)が言うと、腕を組んでいたマリハ・レイスター(まりは・れいすたー)が静かに頷く。
「そう言えば、トゥプシマティは?」
「楽しそうな所に紛れ込んでるんじゃないかな?」
 ルシアが見当たらないもう一人のパートナートゥプシマティ・オムニシエンス(とぅぷしまてぃ・おむにしえんす)のことを尋ねると、マリハはそれだけ言った。
「それよりも今は二人でね」
「そうですね」
 二人は静かに桜並木を歩いて行った。

 赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)クコ・赤嶺(くこ・あかみね)は、ジン・アライマル(じん・あらいまる)にお酒の飲めるメンバーだけで花見に行こうと誘われ花見に来たが、何故かジンの二人への酒の薦め方が積極的すぎる。
 クコなどは注がれる酒を、次々に飲みほしているので、酔いのまわりが異常に早い。
 酔った勢いというやつなのか、霜月に抱きついたりしてくる。
 たまったものではないのは、霜月である。
「霜月~♪」
「だ〜、クコ。目、覚まして下さい」
 面白くて仕方ないのはジンである。
二人を酔わせて酒の肴にしようと思っていた以上に、クコが酒に弱い。
含み笑いを隠すのに必死である。
「一番クコ歌いま~す♪」
「あら面白い、歌って歌って」
「ジン! 煽らないでください!」
 そうなのである、クコは歌が苦手なのである。
 もっと率直に言うのであれば音痴なのである。
 どれくらい音痴かというと、花見に来ている皆さんの酔いがさめるくらい音痴である。
 ジンは無責任に煽るが霜月は止めるのに必死である。
 水を飲ませて酔いを覚まさせて、クコが抱きついてきたりするものだから、霜月の酔いはあっという間にさめてしまった。
 ジンに顔が真っ赤なのを『そんなに酔ったの?』と揶揄されるくらいだ。
 そして、ようやくクコのいが若干さめ、眠そうな目で霜月に言ったセリフが。
「次は二人で来ようね」
だったものだから、霜月の顔はまた真っ赤になった。

花見の席でも一際盛り上がっている集団があった。
音井 博季(おとい・ひろき)達一行である。
 何故かレジャーシートが二枚に分かれている。
 西宮 幽綺子(にしみや・ゆきこ)マリアベル・ネクロノミコン(まりあべる・ねくろのみこん)レイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)ウルフィオナ・ガルム(うるふぃおな・がるむ)ガルム アルハ(がるむ・あるは)がメンバーなのだが、博季、ウルフィオナ、ガルムで一枚、その他で一枚という分け方になっている。
 レイナ達的には先日、恋人になった、博季とウルフィオナの二人のカップルシートで一枚用意したつもりだったのだが、ウルフィオナ大好きのガルムが好奇心で、カップルシートに乱入したことにより3対3に分かれる形になっている。
 だがそんな状態でも博季は嫌な顔をすることもなく、ガルムの相手もにこやかにしている。
 恋人以外シートの3人は、恋人シートの3人が気がかりでならない。
 何せ、二人が恋人になったときだって、幽綺子とレイナは監視していた……もとい、見守っていたのだから。
 どちらのシートにもお菓子やお弁当が並んでいる。
マリアベルなどは、花も弘樹たちもどうでもいいのかお菓子やお弁当を食べ続けている。
レイナと幽綺子は、博季とウルフィオナのお花見デートが気になって仕方がないのだが、
ガルムがいる為、あまり色気が無い。
 そんな時、酒に酔ったウルフィオナが博季に絡みだした。
「博季~、あたしとも遊んでよ〜。もしかしてあたしよりもアルハの方が好きなの〜?」
「そんなことないですよ! ウルフィさんのことが一番大事ですよ!」
「それじゃ証拠見せて! ここでキスして〜!」
 完全に酔っぱらっているウルフィオナがそんなことを言い出すものだから、博季は完全にあせってしまう。
「え! えっと! ウルフィさん?」
 それを見ていた、幽綺子は思った。
(「さすがにここじゃ無理よ。だって博季へたれだもん」)
 ひどい感想であるが的を射ていた。
(「みんなが見てる前でキスなんて〜」)
 博季がさんざん迷っていると、ウルフィオナが博季に抱きつくように倒れこんできてた。
「ウルフィさん!」
 すかさず受け止める博季。
「……寝てる」
 そう、ウルフィオナは酔い潰れて眠ってしまったのだ。
 博季はウルフィオナを横にするとそっと指にはめられた、銀のリングにキスをするのだった。
 博季が以前のデートでプレゼントしたもの。
 博季の愛の証に口づけするのだった。

 神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)レイス・アデレイド(れいす・あでれいど)柊 美鈴(ひいらぎ・みすず)の3人は翡翠が作ってきた料理を持って、夜桜見物に来ていた。
 翡翠は黒のGジャンとGパン、レイスは白のパーカーと紺のジーンズといったラフな格好だ。
 しばらく3人で仲良く花見をしていたのだが、しばらくして事件が起きた。
 翡翠が間酒を飲んでひっくり返ったのだ。
「おい、翡翠大丈夫か? ったく、甘酒で酔うか? 普通?」
 言いながらレイスは翡翠に上着をかける。
 翡翠が酔いからさめるまで3人はその場を動けずにいたが、桜の花びらが舞い散り幻想的な世界を作っていた。