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4 不慮の事故

「なんですと?」
 船長室、オーナーが口にした言葉に大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)は思わず声を張り上げる。その様子を、鮎川 望美(あゆかわ・のぞみ)は黙って横で見ていた。
「どうやら墜ちた敵の母船がこの飛空艇に接触したらしい」
「それはわかっています。そこではなく……!」
「ああ、わかっているとも。このままではこの船もコントロールを失い、墜落するだろう」
 冷静に、しかし悲痛そうな表情でそう伝えたオーナーからは、目に見えて焦りがあった。
「これって報酬の割りにあう事態かな?」
 こそっと耳打ちしてくる望美だが、問題はそこではない。このままではオーナーどころか、銀細工も、自分たちさえも空に投げ出されてしまう。金品はどうにでもなるが、命まではどうにもならないのだ。
「望美、敵はもういないのだろうか」
「うん、もう皆が掃討したみたい」
「わかった。……仕方ないでしょう」
 そう言って剛太郎はオーナーの手を掴み、強引に船長室から連れ出す。
「小型飛空艇であなただけでも逃がします。こちらへ」
「……あー、気持ちは嬉しいのだが」
 気まずそうなオーナーの口調も剛太郎は意に介さず、小型飛空艇がある飛空艇側面に向かう、が、そこでオーナーの渋るような口調の意味を知った。
「……ない」
「母船が傷つけた場所が、ちょうど脱出用の飛空艇を保管している場所だったんだ。間が悪すぎた」
 剛太郎と望美が向かった先には、ただ風穴があるだけの廊下。船体がえぐれ、能天気な青空だけが剛太郎をあざ笑うかのように見下ろしていた。