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【2019修学旅行】穏やかな夜に

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【2019修学旅行】穏やかな夜に

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 誰もいないはずの、深夜の公園。
 付近の店は全て閉まっていて。
 物音もせず、ただ梟の鳴き声だけが遠くに響いていた。
 そんな静かな公園の、誰もいないはずのベンチに、少女が2人肩を並べて座っていた。
「……百合園に通う気持ち? おーほっほ! 色々大変なこともございますけれど……わたくしはこの環境に満足していましてよ? 今日の旅行も楽しかったですし」
 公園に高笑いの声が響いた。
 ロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)の声だ。
「ロザリィヌさんの、将来の夢なんかも聞きたいです!」
 ロザリィヌに質問を浴びせているのは、シャンバラ教導団のルカルカ・ルー(るかるか・るー)だった。
 アンゴラ風の白いカーディガンに、チェック柄のロングスカート。
 髪には真紅のリボンを結んだ彼女は、軍人ではなく普通の可愛らしい女の子の姿だった。
 傍らには光の人工精霊が浮かび、2人を優しく照らしている。
「もちろん、貴族として家門を復興させることですわ! ルカルカ様はどうですの?」
「私は、将来は立派なナイトになり守るべき者の為活動したいです。……夢はお嫁さん」
「立派なお気持ちですわ。そして、女の子らしい可愛い夢ですわね」
 ロザリィヌの言葉に、ルカルカは照れ笑いを見せる。
「好きなタイプ、なんかもお聞きしていいですか?」
 ルカルカの問いに、ロザリィヌは首を傾げて少しだけ考える。
「うぅん……女の子ならどんな子でも好きですけれど……強いて言うならルカルカ様みたいな子ですわね?」
「えっ」
 ロザリィヌの返答に、ルカルカはまた赤くなった。
 以前関わった事件で、ルカルカはロザリィヌに憧れの念を抱いていた。
 誇り高さと弱者を助ける力強さは、軍人として見習うべきと。
 それ以来、兄弟のいない自分にとって、素敵なお姉さんだとルカルカはロザリィヌを慕っている。
 赤くなって返答に困っているルカルカに、ロザリィヌは微笑みを浮かべて体を寄せた。
 手を、彼女の金色の髪の上に乗せて、優しく撫でていく。
「あのっ、ロザリィヌさんは、本当に女の子がお好きですけれど……っ。じゃあもし、例えば……百合園女学院の校長の静香さんが男の娘だったら、どうなさるおつもりですか?」
 頬を赤く染めながら発せられたその問いに、ロザリィヌは手を止める。
「私は静香さんが大好き。幸せになって欲しい。何が静香さんの幸せかは、よくわかんないけど……」
 続けられたルカルカの言葉に、ロザリィヌは小さく吐息をつくも、迷いのない声でこう答えた。
「ルカルカ様には……悪いですけれど、男と確証がついたら私は容赦いたしませんわ。男の方でしたら、男として幸せを見つければいいのですわ! 本質までは偽れませんもの…」
 少しだけ、ルカルカは微笑んだ。
 女性であるロザリィヌは、彼女自身は女性としての幸せを望んでいる、のだろうか。本質は、どこにあるのか。
 家門の復興への思いも、女の子を愛する気持ちも、男性的ともいえて。
 外見はとても魅力的な女性なのに。
 不思議で、強くて、美しい人。
「なんですの?」
 ロザリィヌを見て、にこにこと笑みを浮かべているルカルカに、ロザリィヌは怪訝そうな目を見せた。
「学校違うのに仲良くしてくれてありがと。これからもよろしく」
 そして、ルカルカは小さな袋を取り出して、中のものをロザリィヌに渡す。
 それは、真紅のリボンだった。
 ルカルカが今、髪に結んでいるものと同じものだ。
「お揃いっ☆」
 と笑う、ルカルカに、ロザリィヌはそっと手を伸ばした。
「ありがとうございます。嬉しいですわ」
 ルカルカを仰向かせて、顔を近づけて――。
 ロザリィヌは彼女の額にキスを降らせた。
「唇はあなたがその気になったらですわ♪」
 ルカルカは僅かに驚きの表情を見せた後、ぱっといつものような明るい笑みを見せた。
「お返しですっ」
 ルカルカは、ロザリィヌの頬に軽くキスをする。
 母が米国人のルカルカにとっては、頬へのキスは挨拶だ。
「日が昇る前に、戻らないといけませんね」
「はい」
 すっかり冷えてしまった互いの手を、握り合って立ち上がり。
 公園の外へと一緒に歩き出す。
「また、2人で会いましょう。どなたもいない時に――」
 そう、約束を交し合いながら。

「お帰り」
「お帰りなさい」
 大部屋に戻ったロザリィヌはミューレリアと礼香に声をかけられた。
「ただ今戻りました。おー……」
 高笑いをしそうになり、両手で口を押さえて、笑い合った後。
 ダミーの縫ぐるみを布団の中から取り出して、布団に戻り。
 今度は「お休みなさい」と声を掛け合って、目を閉じた。

 僅か数分後に、空が白み始める。
 柔らかな光が、部屋の中に射し込んでいく。
 彼女達の新たな一日が、始まろうとしていた。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

ご参加ありがとうございました。
沢山の幸せと、ほのぼのとした雰囲気を描かせていただけて、とても嬉しかったです。
またこういったシナリオも書かせて戴きたいと思っておりますので、よろしければご参加いただければ幸いです。

今回は個別コメントをほぼ一言だけですが、全員につけさせていただいております。