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「 水中での戦い!人魚と魚人の協奏歌 」(第1回/全2回)

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「 水中での戦い!人魚と魚人の協奏歌 」(第1回/全2回)

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 縄が3回、引かれた、合図だ。
 波羅蜜多実業高等学校のソルジャー、レベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)のパートナーでローグの明智 ミツ子(あけち・みつこ)は両足を踏ん張って縄を一気に引き上げた。
 水面に上昇してきたレベッカは、勢いのままに陸へと上がった。続けて魚人の一人も陸へと跳ね上がってきた。魚人は人間と同じ、二本足をしていて、レベッカの姿を見つけるとすぐに地を蹴って襲いかかってきた。
「キャアァァァ怖ィィ」
「はっ」
 ホワイトアーマーを纏った両腕で魚人の拳を受けたのは蒼空学園のナイト、ウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)である。足は地面にめり込んでいるが、辛うじて立ち堪えた。
「レベッカさん、変な声出してないで、早く逃げて下さい」
「ありがとネ、助けてくれて、ありがとネ」
「分かりましたから、早く、次の魚人を誘き寄せて下さい」
「オゥ、そうネ、わかったヨ」
 レベッカは立ち上がり、再び海へと向かったのを見て、ウェイルは敢えて魚人に弾き飛ばされた。
「ウェイル!」
「大丈夫だ、行くよ」
 パートナーのフェリシア・レイフェリネ(ふぇりしあ・れいふぇりね)と共に構える、長剣状の光条兵器が蒼く輝いている。深い傷は負わせない、打撃にて、気絶させるを狙いて二人は跳び出した。


 同じ浮島の対面においては、レベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)のパートナーであるアリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)が腰に命綱を巻き、同じくレベッカのパートナーであるオーコ・スパンク(おーこ・すぱんく)が縄を引き上げていた。アリシアもセパレイトの水着姿ではあるが、どうにもレベッカよりも魚人に発見される率が高いようで、それはつまり陸上に跳ね上がってくる魚人の数も多い事を意味しているので……。
 魚人が一人、跳び出してくる。迎え撃つはソルジャーの久沙凪 ゆう(くさなぎ・ゆう)とパートナーでセイバーのカティア・グレイス(かてぃあ・ぐれいす)である。
 カティアがカルスノウトの刀身で拳を受けた。魚人の腕力には押されるが、カティアの背後からゆうのアサルトカービンが魚人の両足を撃ち抜いた。そう、確かに撃ち抜いたはずであるのに、魚人は両足で立ち歩いたのだ。それでも動きは確実に鈍くなっている。
 次に狙うは手足だ。殺すではなく、止める。二人は左右に分かれて魚人の撹乱を狙い向かった。


 ゆうとカティアが戦っているのが見える箇所にて、二人の魚人と戦っているのは、薔薇の学舎のプリースト、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)と二人のパートナーである。
 機晶姫のユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって)が星のメイスで魚人の拳を受け弾き、そのままもう一人へと突きを放つ。この突きに魚人は拳での迎撃を選択したようだが、衝突の直前で拳を開き、メイスを鷲掴みにした。
 動きが止まったユニコルノに魚人が襲い掛かる。その背後から、ドラゴニュートのファル・サラーム(ふぁる・さらーむ)が魚人に雷撃を放ち、さらに呼雪がホーリーメイスでもう一方の魚人に突きを放った。魚人は星のメイスから手を放して呼雪の突きを避けた。雷撃を受けた魚人は腕を振り回してファルを狙ったが、呼雪たちは魚人と距離を取り集まっていた。
「ユノ、イケそうだな」
「えぇ、呼雪のパワーブレスのおかげで、魚人の拳にも何とか耐えられます」
「雷撃は、もう少し強くやるよ、じゃないと気絶させられないかも」
「そうだな、二人とも、やりすぎるなよ」
 時間が稼げれば、それで良い。呼雪は目を血走らせている魚人たちを見つめて零した。
「3対2で悪いが、おとなしくしてて欲しいんでな」
 3人は、呼雪の戦略に則ったチームワークで対抗していった。


 水中での戦いを始めたのはイルミンスール魔法学校のナイト、遠野 歌菜(とおの・かな)である。桃色のビキニを着た歌菜に、魚人の一人が寄りていた。
 全身の力は抜け、水中を漂っている。含気薬のおかげで体中の空気を吐いていても、それほど苦しくはない。寄りてきた魚人に戦意は見えなかった。歌菜の姿を不審に思いつつも興味が強く表れているのかもしれなかった。
 一瞬の隙、歌菜は手刀で一閃、渾身の力で魚人の頸動脈に一撃を放った。しかし……。
 魚人はすぐに目を血走らせ、その拳を歌菜へと向け放った。
「きゃっ」
 間一髪、蒼空学園のウィザード、葉月 ショウ(はづき・しょう)のパートナーであるガッシュ・エルフィード(がっしゅ・えるふぃーど)が歌菜を抱きかかえて魚人の拳から逃した。
 歌菜の姿を見て一瞬、顔を赤らめ逸らしてショウは言った。
「手刀でなんて、幾らなんでも無茶だ」
「そんなこと無い! 今度こそ」
「狙いは面白い、その線で行くなら」
 ショウは歌菜に案を話した。歌菜は顔に笑みを浮かべてゆく。
「真っ直ぐに打つのは至難の技だぞ。できるか?」
「えぇ、やってやるわ!」
「よし、ガッシュ!」
 ガッシュは先程と同様にバーストダッシュを使って魚人の目を撹乱させながら向かって行った。魚人の注意がガッシュに固まった時、同じくバーストダッシュで近寄りたショウが「エペ」を魚人の頸動脈に突き刺した。気付いた魚人が動き始めるより先にショウはエペと肉体の狭間周辺に氷術を放った。ショウはそのまま魚人の拳を受け、飛ばされたが、魚人は体を反転させてしまっていた、そこへ、歌菜が真っ直ぐに魚人の体へと刺さり沈むように、エペに拳撃を放ったのだ。
 ショウの読み通り、頑強な肉体をした魚人は、頸動脈への深き一撃を受けても死んではいない。見事、気絶させる事には成功し、気絶させるで止める事にも成功したのだ。
 魚人が力なく漂っている。3人は顔を見合せて笑みを交わした。


 他の魚人に比べてパワーが弱い。魚人と拳を交えながら、そう感じていたのは蒼空学園のバトラー、椎名 真(しいな・まこと)である。その理由も察していた。
 真から距離を取った魚人は「氷術」を放ってきた。真は構えた木刀で軌道を逸らし避けた。
 「氷術」を使う魚人は肉体的には劣るようだ。魚人の拳を真は木刀で容易に受けられたし、疾さにも十分対応できていた。が、しかし。
「ぐっ、もうそんな時間か……」
 急に息が苦しくなってきた。避ける事、そして分析ばかりしていたおかげで時間の配分を怠っていた。水面に出ようと体を向けた時、魚人の氷術が襲いかかってきた。
「こんな時に……」
 木刀を使って同じに避ける、ダメだ、動けば動くだけ避ければ避けるだけ空気が減ってゆく。魚人は自棄になったように氷術を続けていた。真はそれを避け続けて、遂に。
「がはっ」
 タイムオーバー、体から力が抜けてゆく。飛びそうな意識の中、緑色の服を着た何者かが氷術から自分を守ってくれているのが見えた。
「効かーん!」
 両手を広げて高らかに。男は魚人を指差した。
「貴様、追い撃ちをかけるとは卑怯なっ、ぐっ、俺もか」
 シャンバラ教導団のソルジャー、神代 正義(かみしろ・まさよし)は気を失っている真が水面に向かって浮いて行くをの見て、決心を固めた。
「幸い水面からは近い。貴様を倒して彼も助ける」
 神代は持っていた含気薬を半分にして、一つを真の口に押し込み、もう一つを自分で飲み込んだ。
「大・変・身!シャンバランRX!!」
シャンバラの平和を守るヒーローである。名乗った、ポーズを決めた。そして魚人に向かって行った。
 光条兵器のシャンバランブレードを片手に氷術を砕いてゆく。狙うはゼロ距離での銃撃、その為にも距離を詰める。
 神代の覇気に、であって欲しいが、神代の姿や動きにであるかも知れないが、魚人は明らかに委縮していた、逃げようとしていた、距離を詰められない様に氷術を続けているのだ。そして神代はそのつぶてを砕いては進み寄る。
 どちらか、どっちが先か。
「ぐはっ」
 タイムオーバー。動けば動いた分だけ時間も減る、ましてや元々半分しか食べていないのだ。神代の体からも力が抜けていった。
 この隙に魚人は場を離れた。助けを呼びに行くのだろうか。とにかくに今の事実が浮かんでくる、気を失った男が2人、水面に浮かんでいる。プカプカと、のんびりゆっくりと浮かんでいるようだった。


 ヴァジュアラ湾の名物の一つ、「青刀の双岩」はデートスポットとしても人気がある。何の事情も知らないで、やって来てみれば、この状況である。ロマンティックデートどころではない、海原にある双岩の岩場にて肩を落としていた蒼空学園のローグ、島村 幸(しまむら・さち)の頭上に現れたのは、菅野 葉月(すがの・はづき)が乗った小型飛空艇だった。
 葉月が飛空艇の調整をしている間に、パートナーであるセイバーのミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)が幸とパートナーのガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)に事情を話した。
「…… 、という訳なの、だから」
「やれやれ…… 、という事はデートどころではないという事ですね」
「そうなの、ワタシも葉月と一緒にデートしたかったのに」
 幸とミーナが息を吐いて肩を落とした。
「わかりました、私とガートナは一緒に居たはずの人魚たちを探します、何か知っていると思いますから」
「僕たちは、この双岩を調べてみます。古い遺跡のようですから、不思議な力や何やらが出てくるかもしれないですし」
 葉月の言葉を受けて幸は二人と握手を交わした。気を付けて、と互いに言いて、それぞれに視線をそれぞれに向けていた。