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夢のクリスマスパーティ

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ケーキを作ろう

 ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)轟 雷蔵(とどろき・らいぞう)が家庭科室に入ると、水城真菜が出迎えてくれた。
「いらっしゃーい! ケーキ作り大盛況だよ!」
「本当だなあ。20人はいるか? お、なんだ、男もいるじゃねえか」
 雷蔵が目線を向けたのは高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)だった。
 悠司の姿を見て、同じパラ実のナガンは、目を丸くする。
「あれー、高崎じゃん。ものぐさの高崎がケーキ作りかよ」
「俺は作るんじゃない、味見役だ」
「味見? 誰が作ったの食うんだよ」
 ナガンの質問に、悠司は顎でその方向を示した。
 すると、そこにはイルミンスールの制服を着た関谷 未憂(せきや・みゆう)の姿があった。
「はじめまして、高崎先輩のお友達ですか?」
 翡翠色の瞳に微笑みを浮かべ、手慣れた様子で泡だて器を使いながら、未憂が挨拶をする。
 その様子を見て、ナガンが悠司の首根っこを捕まえて小声で言った。
「なんだこら、あの子か、あの子が目的か?」
「目的とか言うわけじゃない。単に前にイルミンスールの精霊祭で知り合った子だ。パラ実だと出会いが少ねえから、たまには、まともな女の子と知り合いたいと思って、このパーティに来たのは否定しないが」
「いるじゃないか、パラ実だって女の子。姉御系とか、バトルと血が好きそうなのとか、元男とか……」
「……ナガン、パラ実でのまともって基準で言うな」
 ひそひそ声で話した後、悠司はナガンを離れ、未憂の様子を見に行った。
「へえ、慣れたもんだな」
 未憂は天板サイズで焼いたココアパウダー入りの生地に、チョコクリームを塗ってくるくる巻いていた。 
 チョコ味のロールケーキを見て、悠司がフォークを取り出す。
「手伝いの出番か? 味見係の」
「それは手伝いとは言わないと思います」
 そうつっこみながら、未憂はできたロールケーキを冷蔵庫に入れた。
「冷やすのか?」
「ちょっと冷蔵庫で休ませるんですよ」
「ふうん、そんじゃ、ちょっとの間ヒマだな」
 悠司は冷蔵庫から未憂に視線を戻し、楽しげに尋ねた。
「なー、イルミンスールの学生って箒で空を飛べるんだろ? 今度、俺も後ろにのっけてくれよー」
「……箒、持ってないです」
 ぶーっと不満そうに頬を膨らませる未憂を見て、悠司は小首を傾げる。
「あれー。イルミンスールの生徒はみんな持ってるんじゃないのか。何か前に他校生でも持ってる奴がいて、どっかで手に入れたって聞いたが……」
「それなら、ガマガエルさんと戦うと、手に入るですアルヨ」
 いきなり二人の間に香鈴がわいてきて、紅葉の山で使っていた占い道具を片手に、未憂にアドバイスを始めた。
「食堂に行って『ガマガエル再び』って依頼を受けて行ってみてくださいアル。そしたら、空飛ぶ箒が手に入るかもしれないですアルヨ」
「本当!?」
「はい。1回で手に入るかもだし、100回行っても手に入らないかもですアルが」
「………」
 何か言いたそうに未憂は香鈴を見つめたが、香鈴は「がんばってくださいアル〜」と手を振って行ってしまった。
「まあ、本当に取りに行くなら手伝うよ。それで、手に入ったら今度乗せてくれ。代わりに今度バイクの後ろのっけて、ドラゴンチキンレースとか見せてやるからさー」
「ドラゴンチキンレースって何ですか?」
 ちょっと興味を持ったらしい未憂を見て、悠司は小さく笑った。
「見に行く時になったら教えてやるよ」