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リアクション
「セレンちゃん・・・あゆみさん・・・」
野々が呆然と二人を見てつぶやいた。
「なんてことだ」
頭を抱える天音。ブルースの彫像の肩をなぜる。
「彼女たちを守ってくれ、きっとキミなら出来る」
あいかわらず城では時折天井に黒い穴が空き、ドサッドサッとヴァイシャリーの住人が落ちてくる。
そのたびにパーティの準備は台無しになる。
「あの馬鹿ウサギ、もうメイドはいらないというのに。いつまでやっているのだ」
女帝は怒り心頭だ。
それでも次々とやってくる美しい娘たちを気に入って、身の回りの世話に使っている。
勿論、娘以外も落ちてくる。
3瀬蓮を探して
アイリス・ブルーエアリアルが落ちたところは城の庭だった。赤い薔薇が迷路のように植えられている。
ドサッ。
「痛いですわぁ」
アイリスの横に落ちてきたのは、百合園女学院の橘 柚子(たちばな・ゆず)だ。
二人はメイド姿に変えられている。
普段巫女装束を着ている柚子のメイド服は微妙に和風だ。
「なんやら好きな格好になるんですかねえ」
超感覚で耳としっぽをはやした状態の柚子は、着物にエプロン風のメイド服をひっぱったり伸ばしたりしている。
「まあ、同じ場所にこれてよかったですわ」
ドサッ。
次に落ちてきたのは、同じ百合園のメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)だ。両手を広げたアイリスの腕に中にすっぽりと落ちてきた。長身のメイベルだが細身のせいかアイリスの腕になかにすっぽりと収まった。
「上に黒い穴が見えたからね」
アイリスが片目を閉じる。
「すみませんっ・・・」
メイベルは慌てて、アイリスの腕から下りた。少し顔が赤い。
「セシリアさんたちはどないしたのです」
柚子が頭上を見上げる。黒い穴は既に閉じている。
「セシリアとフィリッパは後から来るのですぅ。お買い物をするそうですぅ」
メイベルは身をかがめて周囲を見回す。
城内に警備を取られているため、庭の警備は手薄のようだ。
「百合園の制服に良く似てますねぇ」
メイベルは自分のメイド服をまじまじを見ている。
ドサッドサッ。
次に落ちてきたのは、同じ百合園女学園の秋月 葵(あきづき・あおい)とエレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)だ。
アイリスは、右手で葵を、左手でエレンディラを受け止めている。
二人はアイリスの腕に包まれて、ゆっくり地面に足を下ろした。
「僕も少し慣れてきたようだ」
片目を閉じるアイリス。
葵が照れている。
「みんな同じ場所でよかったですぅ」
メイベルが言う。
「さあ、どないしましょうか」
柚子が城のある方角をみやる。
ドサッ。
次に落ちてきたのは、崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)だ。亜璃珠はまっすぐ足から落ちてきた。
「お見事」
スクッと立ち上がる亜璃珠にアイリスが手を差し伸べる。
「セレンを助けにきてくれたんだね」
頷く亜璃珠。
ドサッ。
少し離れた場所で音がした。
教導団の道明寺 玲(どうみょうじ・れい)だ。バトラーの玲は普段は上質な執事服を好んで着ているが、今はメイド服に変わっている。白とブルーのメイド服は玲に似合っていると思うが、本人は微妙らしい。
「すみません、こんな格好で」
いきなり謝っている。
ドサッ。
パートナー3人が穴の中に消えた鬼崎 朔(きざき・さく)が落ちてくる。
「あいたたぁ」
朔は差し出されたアイリスの手を逃れて、わざと地面に落ちた。
「恥ずかしいではないか。蒼空学園の朔だ、よろしく」
アイリスに手を差し伸べる。
愛らしいピンクのメイド服に顔を赤らめる朔。
「なんなんだ、この格好は・・・」
「大切な人を救いに来たんだね」
アイリスの言葉に頷く朔。
「僕もだ。とにかく一刻も早くセレンを…」
アイリスが目の前にそびえる城をにらんだ。
真っ白でマシュマロのような宝石のような光輝く城だ。
「二手に分かれようよ、ワタシとエレンディラはメイドになって城に潜入する、女帝を探してみるね。柚子ちゃんとメイベルちゃんはアイリスさんと行動してセレンちゃんを探して。亜璃珠ちゃんはアイリスさんと動く?」
葵の言葉に、亜璃珠が答える。
「いや、私ちょっと考えがあるのよ、先に偵察に行くわ」
頷く一同。
「私もメイドとして働き、情報を集めます」
玲が言う。
「じゃ、玲さんは、私と一緒に行こう」
葵だ。
「私が出来ることは、城の中にトラッパーのスキルをもって、トラップを張り巡らせることぐらいだ」
朔がアイリスに語りかける。
「頼むよ」
頷く朔、隠れ身のスキルを使って城に走ってゆく。
「お互い頑張りましょう」
亜璃珠も笑顔で城に向かう。
「じゃ行くね」
葵とエレンディラ、玲も城の方角にかけてゆく。
残されたアイリスが、柚子とメイベルに向きかえる。
「よし、僕たちはセレンを探す」
4城の中
ドサッドサッ。
買い物途中の桐生 円(きりゅう・まどか)と桐生 ひな(きりゅう・ひな)が落ちた場所は、やはり大広間のケーキの上だ。
既に何人かがこの場所に落ちているので、ケーキは原型をとどめていないが。
二人も既にメイド服姿に変身している。
「ん?」
「おー、かわいいかも」
お互いのメイド服を引っ張りながらキャキャはしゃいでいる。
「まずっ」
指についた生クリームを味見したひなが叫ぶ。
その様子をシルクの御簾で防御した女帝が見ていた。
「あのものたちを連れて来い」
結果、新年の新しいケーキは、この二人が作ることになる。
ドサッ。
パラ実の葛葉 明(くずのは・めい)が落ちてきたのは、城の一室だ。買い物をしていた明は、手にコタツを持っている。着ていた波羅蜜多ツナギは胸元を強調したメイド服に変わっている。
「なんだろ、この服」
部屋の中にある鏡に自分を写してみる。
そのとき、扉が開いて数人のトランプ兵が入ってきた。
薄っぺらいトランプの体から手足と顔が出ている。
あわててコタツに隠れる明。
トランプ兵たちは、部屋の備品が増えるのには慣れているので、コタツには見向きもしない。
つぼを持つと部屋から出て行く。
コタツに入った明、そのままうとうと寝てしまう。
城内では、次々と落ちてくる街の人をトランプ兵が「回収」している。本来ならば人が落ちてくるのは、特定の日の数時間のはずだった。落ちてくる場所も決まっていたのだ。
それが、数日にわたってぱらぱらとあちこちの天井から人が落ちてくる。いい迷惑だ。
「黒ウサギはまだ戻らぬか」
女帝は苛立っている。
ドサッドサッ。
女帝の目の前に落ちてきた如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)はトランプ兵になっている。パートナーの機晶姫ラグナ ツヴァイ(らぐな・つう゛ぁい)は愛らしいメイド姿だ。
「なんだぁ?俺の格好!」
佑也は自分の薄っぺらな体をまじまじ見る。
ラグナははしゃいでいる。
「ボクはメイドにあこがれていたのです。なるほど、これはメイドへの転職試験というわけですな。全力でお受けしましょう」
自分の変身を納得したようだ。
やれやれといった様子で女帝が、指示をだす。
「新しいメイドをキッチンへ、料理人が足りぬのだ」
数名のメイドがラグナの手を取りキッチンへと向かう。
ラグナは佑也の細長い腕を引っ張った。
「そのものは兵士だ。置いてゆけ」
「兄者はボクより料理が得意なのだな、置いていくわけにはいきません。」
ラグナは佑也の手を離さない。
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