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【海を支配する水竜王】リヴァイアサンを救出せよ

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【海を支配する水竜王】リヴァイアサンを救出せよ

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第1章 傷を負っても助けたい存在・・・

 リヴァイアサンの魔力だけでなく、地下牢の天井に設置したレンズで捕らえた者たちからも奪っている十天君の2人は、なぜか満足そうな顔をしていない。
 侵入者に計画を阻まれてしまうのではと、警戒しているようだ。
 彼女たちの不安が増すような事態が起こってしまう。
 仲間を救出しようと、孤島に向かっている者がいるのだ。
 さらに施設へ侵入する手引きをしようとやってくる者たちも向かっている。
「もう少し近づかないと銃があたらないな」
 外壁銃を撃ち落とそうと、篠宮 悠(しのみや・ゆう)は射程距離ギリギリまでボートを漕ぐ。
「ずいぶんと丈夫そうだけど、本当に上手くいくのかしら?」
 ミィル・フランベルド(みぃる・ふらんべるど)が不安そうな表情をして首を傾げる。
「穏やかな波ですね・・・」
 ボートから波を見つめながら、真理奈・スターチス(まりな・すたーちす)は小声で呟く。
「(やばい・・・波が高そうな場所を探さないと!)」
 悠は双眼鏡を覗き込み、波の高そうな場所を探す。
「おい、あんたらも他のやつらを侵入させてやろうと来たのか?」
 手漕ぎボートに乗ってやってきた中原 一徒(なかはら・かずと)が悠たちに声をかける。
「あぁそうだ。侵入しようとしているやつが、何人いるか分からないけどな」
「向こうから1人くるぞ」
「1人で入り込むのか?」
 一徒の視線の先を見ると、小型飛空艇に乗って孤島へ向かっているリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)の姿がある。
「無傷で侵入させてやるのは難しいかもしれないが。なんとか道を作ってやらないとな」
「それじゃあ俺は外壁の武器を狙撃してやる、そっちは?」
「外壁の銃や大砲を破壊したとしても、施設の周辺は見張りのゴーストどもだろうから。入り込む隙を作りに行ってくるぜ」
 そう言うと一徒は孤島の岸壁をよじ登り、施設の方へ走る。
「オレたちはあの外壁の武器を・・・と言いたいところだが。この波の高さじゃあな・・・」
「あの辺なら波が高そうよ」
 ミィルが指差す方を見ると、岩場に叩きつくようにやってくる高波が見えた。
「よし、そこならギリギリ届きそうだし。なんとか波を盾に出来そうだな」
 波をミィルの氷術で凍らせて盾代わりにしようと、悠はボートのオールを漕ぐ。
「どれだけ耐え切れるか分からないけど、危なくなったら逃げないとね」
 氷術で氷の盾を作ろうとミィルは波を凍らせる。
「ここからだと東しか狙えませんけど、いいですか・・・?」
 スナイパーライフルを手に、真理奈が悠に確認する。
「あちこち動き回るよりはいいだろうさ。30分くらい経ったら、別の方へ移動しよう」
「そうですね・・・」
 体勢を低くし、スコープで外壁銃に照準を合わせる。
「撃ちます・・・、補助お願いします」
 施設の外壁銃の銃口を狙い、ライフルの銃弾を放つ。
 ガキィンッ。
 弾丸と銃口がぶつかり合う金属音が辺りに響く。
 その音を聞いた兵たちは何事かと周囲を見回す。
「やはり1発では無理のようです・・・。ですが何発か同じ箇所を狙えば落とせるはずです」
 真理奈はもう1度、同じ箇所を狙う。
「おいっ、どこからか銃弾が飛んできたぞ!」
 それに気づいた兵が叫び、弾丸が飛んできた方向を指差す。
「ここへ侵入してこようとしている連中の仕業かもしれん。あの方角へ大砲を向けろ!」
 真理奈たちがいる海面を指差し、別の兵が大砲を撃つ。
「げっ、砲弾!?」
 砲撃を防ごうと悠は禁猟区を発動させ、氷の盾の耐久を強化しようとするが、ビキキッと氷にヒビが入る。
 禁猟区は氷の盾を強化する能力はないようだ。
「それならもう1度氷術で波を凍らせて・・・。―・・・無理・・・無理よ、早く逃げなきゃ!」
 ミィルは氷術で波を凍らせて盾にしようとするが、衝撃に耐え切れず氷はバリィインッと砕け散る。
 氷術の氷は気化し、あとはただの海水に戻ってしまう。
 オールを漕ぎ急いで岸壁の傍へ隠れる。



「また侵入者が来たぞ、撃ち落とせぇえーっ!」
 望遠鏡を覗き海面を監視しているゴースト兵が叫ぶ。
 大砲や外壁銃の銃口をリアトリスの方へ向ける。
「まずい・・・、このままじゃ撃ち落とされるかも。いい侵入方法を何か考えてくればよかったかな・・・」
「撃て撃てぇえっ、あの飛空艇を沈めろーー!」
 リアトリスをパラミタ内海に沈めてやろうと、砲弾を撃ちまくる。
 迫り来る無数の砲撃を避けきれず、飛空艇ごと海へ落とされてしまう。
「くうっ、避けきれない。うぁああーー!!」
 ドボォオオンッ。
 200m先で落とされてしまったリアトリスは、捕縛された仲間を助けようと必死に泳ぎ浜辺へ向かう。
「たしか施設がある方角はこっちだったかな」
 陽動作戦に協力しに向かった道を思い出そうとする。
「誰かいるね・・・もしかしてゴースト兵・・・?」
 林へ入ろうとすると木々の間を走っていく人影を見つけた。
 姿を確認しようと警戒しながら近寄っていく。
「何だ・・・施設の兵じゃなかったか」
 ふぅっと息をつき、構えていた高周波ブレードを鞘に収める。
「ここへ来る前に、小型飛空艇で孤島に向かっているやつを見かけたが、あんたか?」
「そうだよ」
「どの辺から侵入するんだ?」
「ちぎのたくらみで空気ダクトに入れるサイズになって、進入しようと思っているんだけど」
「それだと狙い撃ちされるぞ」
「うーん、無理そうかな」
 リアトリスは他にいい侵入方法がないか考え込む。
「―・・・仕方ないな。少し危険な手段だが、小さくなったあんたを背負ってそこまで行ってやる」
「本当に!?そこまで行ってくれれば、あとは僕が自分でなんとかするよ」
「傷の1つや2つ負うかもしれないけどな」
「それでも・・・皆を助けてあげたいから、行くよ・・・」
 ちぎのたくらみにより5歳の女の子に化け、リアトリスは一徒の背に飛び乗る。
 一徒はバーストダッシュのスピードで施設へ接近し、手にしているカルスノウトの刃で、銃を構える兵の胴体を薙ぐ。
「―・・・っ」
「大丈夫!?」
「心配するな、ただの掠り傷だ!」
 剣で銃弾を受け流していたが、避けきれず1発手の甲にくらってしまう。
「ちくしょうっ、侵入されてたまるか。外壁銃の銃弾を補充しろ!」
 容易く入れるものかと、兵は仲間に指示を出す。
「せっかく来たんですから。何も役に立てないなんて・・・無様なマネ出来ません」
 真理奈はライフルに銃弾を込め、反撃をくらい破壊出来なかった外壁銃に照準を合わせ銃弾を放つ。
 何度も同じ箇所を撃たれ、衝撃に耐え切れなくなった銃口が折れ、地面へ落ちる。
 落下した襲撃による土煙が兵たちの視界を塞ぐ。
 その隙に侵入させてやろうと一徒は、背負っているリアトリスを空気ダクトに放り投げる。
 リアトリスはドラゴンアーツのパワーで入り口を破壊し、急いで中へ入り込む。
「行かせてたまるか!」
 それに気づいた兵が手榴弾の栓を抜き投げつける。
「うぁあっ」
 爆発の衝撃で飛び散る石が、リアトリスの足に当たってしまう。
「これくらいの傷・・・。捕まっている人に比べたら、掠り傷だよ!」
 痛みに耐えながら通気ダクトの中を進んでいく。
「さて・・・俺もそろそろ、ここから離れるとするか」
 いったん施設から離れようと、一徒は剣で銃弾を受け流しながら、林の方へ走っていった。



「董天君にリベンジしようにも、武器がなければどうしようもないですね・・・」
 赤羽 美央(あかばね・みお)はそう呟き、ジョセフ・テイラー(じょせふ・ていらー)の方を見る。
「えっ・・・ミーが1人でデスカ!?」
 あまりの無茶振りにジョセフは顔から大量の冷や汗を流す。
「ぞろぞろ大人数で行って、余計な体力を消耗するよりはそのほうがいいんです」
「ミーは今、武器なんて持ってませんヨ」
「魔法があるじゃないですか。武器のない素手の私がいくよりマシです」
「オウ・・・それにしても1人とは、酷いデ〜ス」
「素直に行くか・・・それとも、私に無理やりこの部屋から出されるのと、どっちがいいですか?」
「それでは選択の余地がまったくありまセーン!」
 どっちを選んでも結局、取りに行かされるのだ。
「行ってきマース・・・」
 しょんぼりと項垂れたジョセフは3階の資材置き場の、廃材置き場から出て地下3階へ走る。
「美央と比べたらゴーストなんて怖くありまセーン、ハハハ!―・・・とはいっても、遭遇しないようにしたほうがいいですヨネ」
 邪念を抱いている存在が潜んでいないか探知しようと、ディテクトエビルを発動させ、警戒しながら階段を降りる。
「ゴ・・・ゴーストが近づいてきマース!ど、どこに潜んでいるのデスカ!?」
 ジョセフを狙い、迫るゴーストの存在を探知し、キョロキョロと辺りを見回す。
「正面からデスカッ。光術で追い払ってやりマース!」
 天井をペタペタと這うキラーパペットの姿を見つけ光術を放つ。
 ベタンッと床に落ちたゴーストは、術で皮膚が蕩けながらも彼の方へ向かってくる。
 奇声を上げながら這い回り、ジョセフの足を掴んでギリギリッと握り絞めようとする。
「オウッ。いっ、痛いデースッ。離すデース!」
 足をブンブンと振り、亡者の手から必死に逃れようとする。
「本当ならSPを節約したいところですケド、迷っている暇はありまセーンッ」
 ゴーストに足を握り潰されてはたまらないと、亡者の腕にアシッドミストを放ち溶かす。
「何だってミーがこんな目に遭わなきゃいけないんデスカーッ!!」
 掴まれている手を毟り取り、ベチャッと床へ叩きつけ、痛む足を引きずりながら全速力で走る。