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【GWSP】星の華たちのお買い物

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【GWSP】星の華たちのお買い物

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屋上 ショーステージと憩いの森
 空京堂の屋上には、緑が溢れている。
 それはもはや、緑が溢れているというより、軽く「森」と呼べるレベルになってしまっていた。
 最初は、空京緑化計画の一環として、屋上に緑を植えようという動きから始まった。
 だが、空京堂の社長が張り切りすぎて、当時の最上階1フロアを潰して土を運び込み、どんどん植樹していった。
 結果、現在のような森状態になってしまったのだ。
 間違って子供が入り込んでしまった場合、迷ってしまうほどの森だ。
 まあ、さすがに本物の森ではないから、大人が迷った例はあまりないというが。
 今では、子供が間違って近付くと危険なのでフェンスで囲い、子供向けの遊び場としては、森化していない一角にショーステージを新設したのだった。
 そんな、空京堂の森。
 新しいエアガンを手に入れたパッフェルたちは、雰囲気だけでも楽しむため、森の中に足を踏み入れていた。
 さすがにここでサバゲーを始めるほど、非常識ではない。
 あくまで、自然環境の中で、新作エアガンの魅力を確認するために来ているのだ。
「アハハハハハ、たーのしー!」
 ここでなら好きなだけ暴れていいと許可されたミネルバは、手にしたエアガンを思う存分振り回していた。
 時々「ドスッ」とか「ドカッ」という鈍い音が聞こえるが、これは駆け回るミネルバが木々にぶつかっている音だ。
 ……後で治療が必要かもしれない。
「……美しい」
 ガシャッ。
 買ったばかりの新作エアガンを、木々の隙間から差し込む木漏れ日にかざす。
 そのボディはぎらりと艶っぽく輝いた。
 パッフェルは、満足そうに、エアガンのボディをなでた。
「森とエアガンとパッフェルか。なかなか絵になるねぇ」
 その様子を、ぎらぎらとした目でオリヴィアが見つめていた。
「あーあ、ここまできたらサバゲーしたいな」
 自分のエアガンをいじりながら、円がぼやいた。
 エアガンも、森も……相手にとって不足なしのパッフェルも揃っているのに、サバゲーできないなんて。
「いっそ、何かおもしろい事件でも起きれば……」
 そんなことをつぶやいた時。

「きゃーーー、たすけてーーーー」

 遠くの方で、女性の悲鳴が聞こえた。

「な、なに?」
 驚き、飛び上がる円。
「あれはたぶんヒーローショーだねぇ」
 そんな円を、オリヴィアは落ち着いてたしなめた。
「ああ、そうか。向こうにはヒーローショーができそうなステージがあったな」
 ところが。
 よく耳を澄ますと、なんだか様子がおかしい。
「な、何なんだおまえ!」
「ヒャッハァ〜。十二星華はここかァ〜?」
「こっ、子供を買い物かごに入れるんじゃない!」
 パッフェルの動きが、止まった。

 ヒーローショーで主演していた風森 巽(かぜもり・たつみ)は、台本にない出来事に困惑していた。
 確か今日の台本によると、出てくる怪人はマスクマン三人だったはず。
 この……目の前にいるモヒカンは誰だ!
 しかも、何故買い物かごの中にちびっこを入れている!?
「がんばれー! 仮面ツァンダー!」
 はっと、巽は我に返った。
 今日は珍しく、お客の入りがいい。
 途中まではショーの進行も順調で、ちょうど子供たちの心を掴み始めたところだった。
 ……ここは、何としても進行しなくては!
「蒼い空からやってきて、子供の笑顔を護る者! 仮面ツァンダーソークー1!」
 ずずーーーん!
 効果音も絶妙のタイミングで入り、決めポーズが炸裂した!
「ヒャッハァ〜。俺は十二星華を隠してるんだったら、さっさと出しなぁ〜」
 エメネア入りの買い物かごを振り回して、鮪が巽を挑発した。
 ちなみに、買い物かごの中に入っているエメネアだが、暴れるそぶりも、嫌がる様子もない。
「運んでもらって、ラクチンですぅ〜」
 ……買い物かごの中の居心地も、悪くないようだ。
「おっ、おまえが何を企もうと、この仮面ツァンダーがいる限り、やらせはせん!」
 巽と鮪は、ステージ中央で向かい合った。

「エメネアーーーーーっ!」
 その時、ステージに駆け上ってくる者がいた。
 いなくなったエメネアをずっと探していた、彼方だ!
「エメネアを返せ!」
「イヤだねぇ。こいつぁ俺がお買い上げするんだよぉ〜」
 エメネア入りのかごをぷらぷらさせる鮪。
「エメネアは……エメネアはなあっ! 辛い目ばかりにあっているのに、そんな逆境にも負けずに笑顔でいてくれるんだ」
 客席の子供たちが、彼方に引き込まれる。
「オレたちがパラミタで培ってきた力って、そういう笑顔を守るための力なんじゃないのか? オレは……エメネアを守るっ!」
 シャキーーーン!
 思わず効果音を入れた音響担当。
「わあぁぁ! がんばれ! あたらしいヒーロー!」
 子供たちの拍手が、彼方に贈られた。
(こ、このままでは、子供たちの心が奪われてしまう!)
 仮面ツァンダーソーク1こと巽も、負けじと中央に躍り出た。
「今こそ、必殺の力を見せて……」
 その時。
 ダダダダダダダダ……。
「エメネアっ!」
 エアガンを手にしたパッフェルたちが、ステージに乱入してきた!
 エアガンとはいえ、見た目はリアル。
 それを手にして颯爽と走る女性たち。
 しかも、そのうち一人は既に負傷しており(観客はメイクだと思っているが、これはリアルに怪我をしているミネルバである)客席は大いに沸いた。
「かっこいい!」
「かわいいっ!」
 ヒーローショーは、ここにきて今日一番の盛り上がりだ!
「今日のショーは、クオリティが高いな」
 大人たちですら、ショーに注目し始めている。
「見つけたぜぇ。十二星華! おまえもお買い上げだァ〜〜〜」
 舌なめずりをする鮪。
 しかし……。
「4対1じゃ、ちょっと分が悪いぜぇ〜〜」
 妙なところだけ冷静である。
「ここはァ〜、エメネアだけであきらめておいてやるぜぇ〜〜」
 そこまで言うと、鮪はくるりと後ろを振り向いて、走り出した!
「ま、待て! エメネアを返せっ!」
「……止まれ!」
 それを追いかけていく、彼方とパッフェルたち。
「こ、これからどうなるんだ!」
「ヒーローたち、がんばれーっ!」
 ただ一人、ステージに取り残された巽。
「……」
 彼には、すっかりハードルが上がりきったこのステージを、一人きりで盛り上げなければならないという使命だけが残った。