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【GWSP】星の華たちのお買い物

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【GWSP】星の華たちのお買い物

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三階 おもちゃのフロア
 パッフェルは、おもちゃ売り場を歩いていた。
 明確に、買いたいものが決まっているのだが、久し振りに来たデパートの雰囲気を味わうため、しばらくの間様々なコーナーを見て回っていた。
「ぬいぐるみ、か……」

「うわあぁぁぁぁぁ!」
 ノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)は歓声を上げた。
「さあ、ノルンちゃん。欲しかったぬいぐるみは、どれですか〜?」
 神代 明日香(かみしろ・あすか)は、ノルニルの手を引いて、ぬいぐるみコーナーを歩いていた。
 ノルニルが、昨日の折り込みチラシを見て一目惚れをした巨大ぬいぐるみを手に入れるため、空京堂にやって来ていたのだ。

「さて、レムの目的の売り場に着いたわけだが」
 ノルニル・明日香と似たような目的で、ぬいぐるみコーナーを歩いている二人がいた。
 虎鶫 涼(とらつぐみ・りょう)は、パートナー、レアティータ・レム(れあてぃーた・れむ)を連れて、やはりぬいぐるみを買いに来ていた。
「欲しいのはお魚さんだろう?」
「…うん」
 レムは小さくうなずいた。

「ああ、ありましたぁ!」
「涼…あれ」

 たたたたっ!
 ぬいぐるみが積まれている一角に走り寄る、見た目ちびっこが二人。
「えいっ」
「お魚さん…」
 二人同時に、ぬいぐるみを抜き取った、その時!

 ぐらっ。
 もともと、積み上げすぎだったぬいぐるみの山が、二人めがけて崩れてきた!
「あぶない!」

 ヒュッ、と。
 風が動いた。

 どどどどどどっ!
 大量のぬいぐるみが崩れてきたが、ノルニルとレアティータは、押しつぶされることはなかった。
 潰される直前、パッフェルがふたりを抱き上げ、救い出したのだ。
「大丈夫?」
「うん」
「…ありがとう」
 二人は、パッフェルに抱えられ、少し離れたところに降ろされた。
「ノルンちゃん!」
「レム!」
 そこに、明日香と涼が駆けつけた。
「パッフェルさん。本当にありがとうございますぅ!」
 明日香が、パッフェルにぺこりと頭を下げた。
「いや、通りすがりだから……」
「こちらも助かった。感謝する」
 涼も、パッフェルに礼を述べる。
「店側の積み方が悪かっただけ。二人は悪くない」
 パッフェルはそう言って、軽く頭を下げると、すたすたと立ち去ってしまった。
「あれは十二星華? いや、しかし何でこんなところに……」
 心の中でつぶやいたつもりが、無意識で声に出していたらしい。
「あれはパッフェルさんですよぅ」
 明日香が涼に言った。
「……十二星華のパッフェルか。レムを助けてもらったんだ。感謝しないとな」
「動いた瞬間が、見えませんでした。パッフェルさんはすごいですぅ」
 明日香と涼がそんなことを話している間。
「おっきなぬいぐるみ、欲しかったの!」
「このお魚さん…かわいい」
 ノルニルとレアティータは、同じぬいぐるみを気に入ったということで、すっかり仲良くなっていた。
 二人はそれぞれ、巨大鮪のぬいぐるみをお買い上げし(正確には、パートナーに買ってもらい)おそろいだと言ってはしゃいでいた。

 何事もなかったかのように、パッフェルは別のコーナーへとやって来ていた。
 オセロ、将棋、トランプなど、アナログゲームを専門に扱っているコーナーだ。

「これはすごいな!」
 アナログゲームコーナーで、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)はホクホク顔をしていた。
「チェス盤だけで、こんなにも種類があるなんて!」
 色合いが異なるものや、折りたたみ可能なものまで、様々なチェス盤が並んでいる。
 チェス用の駒も、天然石を使っているものや、木製、ガラス製のものまで、ありとあらゆるタイプが揃っていた。
「これだけあると本当に、目移りして困るな」
 その時、人の話す声が耳に入った。
 アナログゲームコーナーには自分しかいないと思っていたため、涼介は少し驚いた。
「……パッフェルさんだよな?」
「……そうだけど」
 会話をしている二人のうち、一人はパッフェル。そしてもう一人は神代 正義(かみしろ・まさよし)だ。
 正義は、『ヒーロートレーディングカード』を求めておもちゃ売り場に来ていた。
 そこで偶然、パッフェルを見つけて声をかけたのである。
「パッフェルさんも、カードゲームが好きなのか?」
「……いえ。ここを通ったのは、偶然」
「なんだ残念。もし興味があるというのなら、ここでカードバトルを申し込もうと思ったのに」
「カードバトル……」
「このトレーディングカードを使った遊びだ。ただのカードゲームと思うなかれ。かなり熱くなれるんだぜ!」
「そういう遊びもあるんだ……」
「少しでも気になるなら、今度教えてやるよ」
 そんな会話を、少し離れたところから聞いていた涼介。
「十二星華の、パッフェルか……」
 声のする方に目をやると、パッフェルの方もたまたまこちらを見たため、目があった。
「……」
 ぺこり。
 黙って会釈だけをして、涼介はその場から離れた。
「今日はそれどころじゃないもんな」
 涼介は、チェス盤と駒を一通り選び終えると、続いてダイスのコーナーへと足を伸ばした。
 既に買い物かごにはチェス関連だけでなく、様々なボードゲームなどが隙間泣く詰め込まれていた。
「まだまだ買うぞ!」
 涼介の買い物は、そのまま閉店直前まで続いたのだった。