シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

リアクション公開中!

【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

リアクション

 
 平安時代末期、平家と源氏の対立は激化し、そして1180年、以仁王は平家追討の令旨を各国の源氏に発し、源頼政と共に挙兵する。これは平家により鎮圧されるが、各地で平家打倒の気運が高まった。
 信濃国で挙兵した源義仲は、1181年に平家方の大軍を横田河原の戦いで破り、勢力を拡大していった。その後一進一退の攻防が交わされ、そして1183年6月、平家7万騎余の兵が布陣する砺波山へ、義仲は僅か5千騎余の兵を率いて出陣する――。

 夜も更けた獣道を、数百の兵が音も立てずに駆けていく。兵は皆屈強な男性……などではなく、顔立ち幼げな幼女ばかりであった。
「この先に平家のロリコン部隊が布陣してるのよね、巴ちゃん?」
「はい、そうですー。敵は眠りこけているはずですから、一気に襲ってしまえば簡単に勝てるはずですよー」
 先頭を進むフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)=源義仲が、傍らのリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)=巴御前に尋ねる。自ら魔法少女として、同じく魔法幼女隊を率いる巴御前と共に平家の宿営地を目指す義仲の瞳は、『平家を皆魔法少女に萌えさせる!』という使命に燃えていた。
 やがて、平家の宿営地が見えてきた。巴御前の言う通り、見張りの兵を除くその殆どが眠りこけているようであった。おそらく兵士は幼女と戯れながらキャッキャウフフする夢でも見ているに違いない。これから実際に幼女に遊ばれるとは、彼らは思ってもみないだろう。
「炎天皇女ヘクセル・フーラが、みんな纏めて萌やしちゃうぞ☆ 巴ちゃん、火幼女の計の準備はい〜い?」
「オッケー、いつでもいけますよ、義仲さん」
 巴御前が配下の魔法幼女に命じ、上げた掌の上に炎を生み出させる。これを掲げたまま兵士に「あそぼあそぼ〜」と吶喊する、これこそが『火幼女の計』の全貌であった。
「モモ缶将軍を萌やした娘にはご褒美よ! いざ、出撃ー!」
「よーし……蒼氷幼女アイシクルリース! 私の氷は簡単には溶けないぞ☆ 魔法幼女隊のみなさーん、敵に向かって進撃ですよー!」
 義仲と巴御前が飛び出し、後ろを甲高い声を上げながら、幼女たちが駆け出す――。

「な、何!? 源氏が攻めてきただと!? は、早くこちらも兵を出さないか!」
 ぐっすり眠りこけていたところを叩き起こされ、フォン・アーカム(ふぉん・あーかむ)=平維盛=モモ缶将軍が慌てて兵士に迎撃を命じる。
「そ、それが、敵は僅か数百の年端ゆかぬ稚子で……得体の知れぬ攻撃に兵は混乱しきっております!」
 報告を受けて、維盛の頭に疑問符が浮かぶ。『とりあえず見てみればいいんじゃないかな?』と目で訴えてくるセオドア・アバグネイル(せおどあ・あばぐねいる)=平忠度に急かされ、陣を出た維盛は、そこで驚愕の事態に直面する。
 
「わーい、お兄ちゃんあそぼあそぼ〜」
「か、かなちゃん!? かなちゃんじゃないか、お兄ちゃんだよ……ぎゃあ!!」
 
 とてとて、と駆け寄ってきた幼女の放った火弾の直撃を受けて、夢の続きと勘違いした兵士が万歳した格好のまま萌やされる。数の差では百倍とも言われる差がありながら、平家の兵士はほとんどがロリコンであることが災いし、戦況はこの時点で平家に不利に傾いていった。
『うわー、すごいすごーい! 僕もあんな炎吐けるかな?』
「バカ言ってんじゃねえ! なんだよあれ、非常識過ぎるだろ!? どうしてこの時代に魔法少女なんて出てくんだよ!」
 魔法幼女たちの繰り出す炎に喜ぶセオドアを叩いて、フォンが戸惑いと怒りを露にする。彼だけが異常な事態に乗せられずにいたのだが、だからといって一人で事態を解決出来るほどの力はない。そもそも維盛は武将としては致命的に能無しの役立たずで、さらに相手が相手である。そうこうしている間にも兵士は逃げ惑い、その大半が倶利伽羅峠の断崖に迷い込み、次々と落下していった。
「あなたがモモ缶将軍ね! 私の炎を受けて萌えつきなさい!」
「敵の大将を萌やすのは私ですよー」
 義仲と巴御前が兵士の隊列を吹き飛ばし、維盛へ炎弾と氷柱を見舞う。大将をやらせまいと盾になった兵士がそれぞれ炎と氷に包まれ、どこか恍惚とした表情で倒れ伏せた。
「も、もうダメだ……なんだよこいつら……く、来るな、来るなよー!」
 女性恐怖症な維盛はすっかり腰が抜けて、一目散に戦場を脱しようとする。
『ねえ、僕お腹すいた』
「こんな時に何言ってやがる! 食料なんてモモ缶しかねーよ!」
『じゃあそれちょうだい』
「これは俺の大事な食料――」
 維盛がそう言った直後、忠度の吐いた炎が維盛を直撃する。
『うわーん、お腹すいたお腹すいたお腹すいたーーー!』
「ああもう、うるせえな! このままじゃ俺が焼かれちまう、命には代えられない!」
 忠度にモモ缶を渡し、維盛はその後何度もセオドアの炎と魔法幼女たちの炎に焼かれたり萌やされたりしそうになりながら、命からがら戦場から脱したのであった。

 こうして、倶利伽羅峠の戦いは、義仲の『火幼女の計』が功を奏し、源氏の圧勝に終わった。
 平家は大半の兵を失い、もはや義仲の進軍を止めることは出来ず、京を落ちて九州へと向かう。
 一方義仲は破竹の勢いで、ついに上洛を果たした。しかし、折しも京は連年の飢饉に見舞われ、物資が極端に不足していた。
 そこへ義仲率いる魔法幼女隊が乗り込んできたため、京の治安は一気に悪化の一途を辿った――。

「お兄ちゃん、これちょうだい?」
「そ、それはなけなしの食料、それだけは……」
「……ちょうだい?」
 にっこりと笑顔を浮かべたまま炎を掲げる幼女に臆して、町民が持っていた食料を差し出す。都のあちこちでこうした無邪気な強奪が繰り広げられていた。
「みんなダメだよ、町の人が迷惑してるよ?」
「いいんですよー、私達いーっぱい頑張ったんですから♪ 私は誰にたかりに行こうかなぁ〜……あっ、そういえば戦続きで、私達全然夫婦らしいことしてませんでしたよねー。せっかくですから何か夫婦らしいことしましょうよー」
「夫婦らしいこと……って、何をするの?」
「そうですねー、たとえば……合体とか?」
「合体ってそのあの、ええと……」
 『合体』の意味をよく分かっていないまま言う巴御前に、何となく意味を察した義仲が慌てふためく。
「だめじゃないか、町の人たちに迷惑をかけちゃ! これでは平家打倒も為せなくなるぞ!」
 そこへ、鎌倉からようやく合流を果たした如月 正悟(きさらぎ・しょうご)=源義経=おっぱい将軍がやって来る。
「やばっ、おっぱい将軍が来ちゃった! 義仲さん、逃げなきゃ!」
「お、おっぱい、将軍様、お説教長いのよね……! うん、逃げましょ、巴ちゃん!」
 義経の姿を認めた巴御前と義仲は逃げようとするが、義経の身のこなしにあえなく捕らえられ、義経の前に正座させられる。
「いいですか、タカる相手は平家です。町の人に迷惑をかけてはいけません。それとおやつは一日200円です。バナナはおやつに入りません。遠足は家に着くまでが遠足です」
 義経の説教は、太陽が地平線に沈んでもなお続いた。
「いいですか、魔法少女の原則はミニスカートです。ロリ巨乳か、ロリ貧乳、どちらのタイプで進むのかで色とポジションが決まります。後は決め台詞をしっかりと練習しておくように」
「うん、それはもうバッチリですよー。豊美さんも認めてくれるはずですー」
「そういえば、豊美ちゃんはどこに行ったのでしょう? こっちに来てから姿を見ていませんね」
 最初からまともでは無かった説教は、いつしか魔法少女の話になり、最終的には胸の話へと飛躍していった。
「最終的に、何が言いたいかというと、結局おっぱいが正義なのです」
「はーい、巨乳だけどぺったんこも好きな私はどうしたらいいでしょうー」
「うーん……小さくは出来ないから、パットでもつけた方がいいのかしら?」
 どうやら巨乳好きらしい義経と、ロリ巨乳な義仲と巴御前が、さて話はこれくらいにして夕食にしましょうと話を切り上げたところで、すぐ脇を魔力の奔流が通り過ぎ、背後で巨大な爆風を巻き起こす。

「皆さん……
 随分と勝手なことをしてくれたようですねー?」


 巻き起こる風でスカートが捲れてぱんつが見えるのも気にせず、豊美ちゃんが一行の前に立ち塞がった。その並々ならぬ気配に、一行はすっかり身動きが取れずにいた。
「倶利伽羅峠の戦いまではまだいいとして、京の町での振る舞い、いたいけな子供に何てことをさせるんですか! 本来はお仕置きをするはずの義経さんまで黙認して、その上胸が正義だ巨乳だ巨乳だと……私もう怒っちゃいましたよー!」
「ま、待って豊美さん、俺は二人に説教するつもりで――」
「え? あれって説教だったの?」
「最初はそうかと思ったけど、結局胸の話になってたわね」
「ふ、二人とも、今そのようなことを言っては――」

「……お仕置きです!!」

 京の町にまた新たな道が穿たれる。
「もー、胸の大きい人はしばらく見たくないですー。魔法少女としては認めてあげますから、これから精進してくださいねー」
 ちゃんと魔法少女だけは認定して、豊美ちゃんがその場を立ち去っていく。

「……ふ……命からがら京に戻ってこれたと思ったら、魔法幼女に身ぐるみ剥がされ、おまけにこの有様か……」
『ねえ、お腹すいた』
「もう何もねえよ……おまえにゃミルクがあるだろが」
『あれおいしくない』
「我慢して飲め……俺は少し寝る……」
 静かになった町、魔力の奔流が通り過ぎた跡が残る地面に、大の字になって横たわる維盛の姿があった。
「魔法少女……萌え……」
 その言葉を言い残して、維盛の意識は闇に落ちた――。