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【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

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【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

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 1600年、『ヒール延々(1600)関ヶ原』、関ヶ原の戦いが起こった。この戦いで、豊臣秀吉没後に生じた家中の対立は、徳川家康の手によってまとめられることとなる。
 関ヶ原の戦いに至るまでには、石田三成の隠退から挙兵、小山評定、上田会戦や杭瀬川の戦いなどの前哨戦を経ており、それらの流れを追うことを軽視してはならないのだが、ここでは10月21日、関ヶ原の地にて西軍と東軍が激突した場面だけを追うことにしよう――。

「報告いたします! 松尾山の小早川秀秋が謀反! 大谷吉継がこれに当たるも、脇坂安治、小川祐忠、赤座直保、朽木元綱ら四隊が相次いで謀反を起こし、大谷吉継は自刃! 宇喜多秀家も奮戦を続けておりますが――」
 物見からもたらされる報告は、西軍が優勢から一転、覆しようのない劣勢へと追い込まれたことを裏付けていた。宇喜多秀家に次ぐ兵力を有していた小早川秀秋という駒を失い、今その駒に自陣を襲われた時点で、勝敗はほぼ決したと言っても過言ではない。
「もうよい。……裏切りとは姑息な真似をしよる。再び会いまみえた時には、我の雷光にて仕置きをせねばならぬの」
 物見を退けさせ、サティナ・ウインドリィ(さてぃな・ういんどりぃ)=石田三成が立ち上がる。その表情には敗北を悟った諦念と、しかしこのままでは終われぬという決意、そしてどこかこれからの推移を楽しまんとする感情に満ちていた。
「左近!」
「はい、ここに」
 三成の声に応じて、サー ベディヴィエール(さー・べでぃう゛ぃえーる)=島左近が傍に控える。
「我は負けるのは嫌じゃ。お主はどうじゃ?」
「私が剣を取り戦う時は、主に勝利を捧げる時。……それに、私としては、一つ暴れてみたいというのもございますわ」
 べディヴィエールの答えに、サティナが満足といった笑みを浮かべる。
「奇遇だの。我も一つ、この絶望的な戦況をひっくり返してやろうと思うての」
 サティナがゆっくりと腕を広げ、掌に電撃が迸る。
「円卓の騎士に名を連ねし者の武……とくとお見せいたしますわ」
 優雅な口調を崩さないまま、べディヴィエールが槍を頭上で豪快に振り回し、突いた槍から地響きが起こる。
「行くぞ、左近」
「御随意に、三成様」
 背中合わせに立った二人が、微笑を浮かべて陣を飛び出していく。向かってきた東軍の兵士へ、サティナが雷を見舞いべディヴィエールが槍の薙ぎ払いを浴びせれば、数十人規模で兵士が吹き飛び、戦闘不能に陥らされていった。

 一気呵成に攻めかかった兵士の頭上で、放たれた爆炎が降り注ぎ、多くの兵士が炎に焼かれ倒れ伏せる。なおも怯まず進んだところへ、今度は氷塊が坂を転がり落ちてきて、兵士を次々と押し潰していく。
(凄い……! これが戦場というものなのか……!)
 飛び交う怒号と爆音、目の前で繰り広げられる『戦』というものに、緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は燃え立つような感覚を味わっていた。
 彼は西軍一の奮戦を繰り広げた宇喜多秀家配下として、歴史の影で暗躍していた魔法少女たちを率いていた。裏切った小早川秀秋を中心とした兵が襲いかかり、兵力差は約3倍、戦力差は9倍もの開きがある中、それを微塵も感じさせない奮闘ぶりは、ひとえに遙遠と魔法少女たちの魔法攻撃が支えていたといっても過言ではなかった。
 伝令が遙遠に、新たな敵への援護を要請する。指示されたそこでは、長蛇に続く兵士が味方の陣の側面から攻撃をかけようとしていた。ほんの僅かの間に遙遠は、いかに相手の行動を阻害し、こちらの行動を自由にさせることが大切かを学んでいた。そして今回も、回り込もうとしている敵に対して最も効果的な戦法、出足をくじき混乱させるために、遙遠は魔法少女たちに命じて雷電魔法の準備をさせる。一直線に駆ける雷撃を恐れれば、兵士は散開せざるを得ない。そうすれば敵の突破力は大きく減じられ、付け入る隙も生まれるであろう。
「……よし、撃て!」
 遙遠が号令を発し、魔法少女たちが雷電魔法を見舞う。一部の兵士が直撃を受けて吹き飛び、その他の兵士は恐れをなして散り散りに後退していった。

「何故だ……小早川秀秋がこちらに寝返った時点で、雌雄は既に決しているはず……」
 東軍の本陣で戦の行方を見守っていた徳川家康は、もたらされる報告が徐々に東軍不利に傾いている事実に驚愕の表情を隠せずにいた。特に宇喜多秀家と石田三成が率いる軍勢の勢いは凄まじく、宇喜多秀家が小早川秀秋などの軍勢を引きつけている間に、周囲の軍勢を蹴散らした石田三成が側面から攻めかかるのでは、といった憶測が家康の脳裏に浮かんできた。
「ふふ、おぬしが動じるなぞ珍しい。……だが、歴史が変わろうとしているのであればさもありなんやもしれぬか。しかして、歴史を変えようとするのであれば是非に及ばず!」
 突如声が聞こえ、南蛮甲冑姿にマントをなびかせ、仮面をつけた織田 信長(おだ・のぶなが)が家康の前に現れる。
「お、おぬしは織田信長……な、何故ここに……おぬしは本能寺に消えたはずでは……」
「ええいこの腹黒狸が! わしは信長ではない! 通りすがりの真の天下人『戦国天下仮面』である!」
 高々と宣言する信長であるが、仮面以外の特徴は信長以外の何者でもないため、家康を始め誰一人として信じなかった。
「おいオッサン! ワケわかんねーうちに戦国時代来ちまったけどよぉ、これじゃ豊美のパンツの歴史が分からねーだろが! 豊美の姿も見ねーし、さっさとズラかろうぜ」
「やかましいわ、わしは歴史を弄ぼうとする小童に仕置をせねばならぬのだ――」
 信長に連れ回され、本来目的にしていたエリザベートの拉致や豊美ちゃんのパンツの有無の確認を行えずにいた南 鮪(みなみ・まぐろ)と信長が言い争っているところへ、銃声が響き信長の身体が大きく揺らいだ。

「30年後にまた遭ったな、信長……!」

 天幕の影から、レン・オズワルド(れん・おずわるど)=杉谷善住坊が姿を見せる。彼の手には、かつて信長を狙撃し損ねた、そして今は見事に信長を撃ち抜いたスナイパーライフルが握られていた。

「フ……フフ……よもやおぬしが……フフフ……是非に、及ばず……」

 ぐらり、と信長の身体が傾き、地面に倒れる。
「あぁ!? おいオッサン、こんなとこで寝てんじゃねーよ! ……待てよ、ここでオッサンを連れて行けば、豊美はオッサンに注意が向く……ヒャッハァ〜、豊美ぃ、おまえのパンツの歴史は俺が暴いてやるぜぇ〜――」
 悪巧みの時は数倍に機能する頭の中で計画が組み上げられ、鮪が信長を担いでいこうとしたところで、何やら良からぬ気を察したレンの銃が火を噴き、鮪を地面に伏せさせた。
「な、何だったのだ一体……」
 まるで狸に化かされたような気分の家康は、次にもたらされた報告にさらに疑念を深める。
 猛威を振るっていた石田三成の軍勢が、何者かによって鎮圧されたというのであった。

「べディさんもサティナさんも、歴史をめちゃくちゃにしちゃ駄目なのですよー」
「お嬢様、これはお嬢様に勝利を捧げるためと――あ、痛いですお嬢様、申し訳御座いませんっ」
「むぅ、せめて裏切り者に一撃を――わ、悪かった伊織、もうせぬから怒るでないぞ」
 二人で2000もの兵を倒れ伏せさせたべディヴィエールもサティナも、主である土方 伊織(ひじかた・いおり)には手も足も出ずにズルズルと引き摺られて戦場を後にさせられたのであった。

 こうして、史実通りに東軍は西軍との戦いに勝利した。
 ……しかしこの後、彼らはもう一つの試練に突き当たる――。

「やっぱり負けちゃったわねー。凄い張り切ってたからこのままいくかと思ったんだけど」
 散り散りになって逃げていく西軍の兵士、その後姿を『雪だるま王国』連絡要員として戦場を駆け回っていた四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)フィア・ケレブノア(ふぃあ・けれぶのあ)が見送る。彼女たちの姿は、他の兵士には見つけることが出来なかった。
「唯乃、これからどうするのですか?」
「とりあえずは王様……というべきなのかしら、に報告かしらねー。味方がいなくなっちゃったんだからこれ以上戦っても仕方ないはずだし、私たちも早く逃げないと、囲まれて袋叩きだわ」
 唯乃が呟いてる間にも、東軍の兵士が続々と通り過ぎていく。その先には赤羽 美央(あかばね・みお)率いる『雪だるま王国』の本陣があるはずであった。
「そうと決まれば行きましょう、唯乃」
 フィアがスコープを覗き、周囲に兵士の姿がないのを確認して、そして唯乃と共に飛び出す。あちこちで煙が上がり、倒れ伏せる兵士の脇を駆け抜け、二人は無事に雪だるま王国本陣へと到着する。
「……話は分かりま……ったでござる。つまり私たちは、この戦場にあって孤立しかけているということでござるな」
 唯乃から報告を受けた美央は、腕を組んでしばし考え込んだ後、ゆっくりと立ち上がる。
(このまま逃げたとしても、無事に逃げられる保証はないでござる……ならばいっそ死中に活を求め、雪だるま王国の名を少しでも知れ渡らせることが出来れば、この後も国は生き残るかもしれないでござる……)
 決意を固めた美央は、唯乃とフィアに他の者たちを集めるように告げる。ほどなく雪だるま王国の精鋭、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)マナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)秋月 葵(あきづき・あおい)イングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)ルイ・フリード(るい・ふりーど)リア・リム(りあ・りむ)シュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)鬼崎 朔(きざき・さく)スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)咲夜 由宇(さくや・ゆう)ルンルン・サクナル(るんるん・さくなる)が美央の前に並んだ。
「これより私たちは、国に帰るでござる! でもただ帰るだけじゃありません、ここを真っ直ぐ進んで、向こうの総大将である家康さんに挨拶をして帰るでござる! 記憶に名を残し、後世まで語り継がれることこそが、私たち雪だるま王国の天下取りでござる!」
 美央の立てた作戦は、常識的に考えれば無謀に過ぎる作戦であった。しかし確かにこれが成功すれば、『東軍に負けなかった軍』として名が知れ渡り、それは国を守ることにも繋がるだろう。そして何より、美央に付き従う臣下にその作戦を恐れるような者はいなかった。皆が皆美央を慕い、国を立派に守り抜こうとしている。
 今こそ、彼らは武士であった。

「いざ、出陣!」

 美央が高らかに告げると、雪だるまの紋様が刻まれた旗がなびく。
「こうなったらやるしかないわね。フィア、先陣切って一発かましてきなさい」
「任せるのです。エルから受け継いだ技をお見舞いしてやるのですよ」
 言ったフィアが両手を前に、そこからガイドとなるレールが伸び、機晶石が電気エネルギーに変換され電圧を生む。前方には東軍の旗をなびかせた兵士が、手勢僅かの雪だるま王国軍を粉砕せんと攻めかかる。
「超電磁コレダー!!」
「その名称は色々とマズくない!?」
 唯乃の疑問をよそに、フィアから放たれた電撃は前方の兵士を吹き飛ばし、後には電撃を受けてぴくぴく、と痺れる兵士の姿が残った。

「……な、何!? 僅か14騎の軍勢が、こちらの軍勢を敗走に追い込みながら真っ直ぐこちらに向かっておるだと!?」
 報告を受けた家康は、飛び上がって驚かんばかりに声を上げる。先程僅か2騎で2000余りの兵を屠った事例を鑑みれば、彼らは1万5千、いや下手すれば2万以上の軍勢となりうる。寝返った小早川秀秋の軍勢が1万5千余りであることを考慮すれば、十分戦況をひっくり返せる脅威を秘めていると言っても過言ではない。
「敵は何者か!? 西軍に組する者なれば、何としても止めねばならぬ……!」
 苦渋の表情を浮かべた家康に、報告の者は戸惑いを浮かべながら報告を続ける。
「そ、それが……一線を交えた者らは一様に、『魔法少女』という言葉を発しており……」
「魔法少女……何なのだ、西軍のカラクリか?」
 到底聞き慣れない言葉に家康が首をかしげたところで、前方で大きな爆発が生じた――。