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第七章 オルディオンとの邂逅
「おーし、こっちだぜ! このまま進むと――思った通りだ。二つ並んだ切り株があった」
 サラマンディア・ヴォルテール(さらまんでぃあ・う゛ぉるてーる)が先導し、土御門 雲雀(つちみかど・ひばり)エルザルド・マーマン(えるざるど・まーまん)に道案内をしている。
「西回りのルートだが、このまま進めば奥に着くぜ」
「すげぇ……サクサク進むな……」
「いやぁ、森の案内なんて聞いたときはびっくりしたが……何とかなるもんだな。チビ」
 ポンポンと雲雀の頭を撫でる。
「チビゆーなっ!!」
 サラマンディアの手の下からプリプリ怒る雲雀。
「悔しかったらもうちょい成長しろ。キノコ食えキノコ」
「国民的アクションゲームの主人公か! あたしはっ!!」
 二人漫才を続けていると、
「ふっ、雲雀は雲雀であるだけで愛らしいのに……。そんなこともわからないなんて。ああっ、これだから美意識の狂った馬鹿は困るんだ……」
 エルザルドの皮肉に、サラマンディアの顔が引きつる。
「……こんなちんちくりんを可愛いとか言ってるやつに美意識どうのこうの説教されたくねぇよ。このロリコンが」
「ああっ、やっぱり分かってない。雲雀は今のままで十分魅力的なんだよ。キノコ――もとい成長なんてしなくてもいいんだっ!」
「熱弁すんなっ! この変態ホストがっ!」
 ますます勢いを増していく二人を、雲雀が制した。
「二人ともやめろっ! 瘴気がプンプンしてる森の中で口喧嘩。コメディショーの撮影に来てんのか、あたしらは!? 違うだろ!? 少しは落ち着きやがれっ!!」
 軽くマジギレしかけていた雲雀に叱られ、双方口を止める。
「ちっ、まぁいいや。このままついて来な」
 再びナビを続けるサラマンディア。
 進むべき道へと振り返る。

「くっそーーーーー。しつけぇぇぇぇぇ!!!」

 絶叫しながら走ってくる二つの人影が見えたのは、そのときだった。
 リリィとカセイノである。
 さらに、彼らの後ろから、三人の男たちが殺到していた。
「カセイノさん、今ですわっ!」
 リリィの合図と共に、立ち止まる。そして、振り返りざまに槍を繰り出した。
「くらえっ! 名付けて、偽ランスバレストッ!!」
 すぐ後ろにいた男二人は、急に立ち止まられたため足のブレーキが効かず、そのまま穂先へと突っ込んだ。
 相手の勢いを利用した、カセイノのオリジナルスキルであった。
「うおりゃあああっ!!」
 カセイノの動きは止まらない。刺したまま突進し、最後の一人を貫いた。
「だんご三兄弟の出来上がりだ。こんちくしょう!」
 男たちの死体を踏みつけながら、槍を抜こうとする。が、力の入れ方を間違えたのか、途中でバキッ、と折れてしまった。
「あちゃ〜。まぁもう一本あるからいいか」
「リリィさん、カセイノさん」
 戦闘を終えていた二人に話しかける雲雀。
「ん、ああ。おまえらもいたのか。騒がしくしちまってすまねぇな」
「大丈夫ですかー!?」
 騒ぎを聞きつけた、ミルザム、アルツール、いるみん、ヴァル、ゼミナーが駆けつける。
 どんどん数を増やす仲間に、びっくりする雲雀。
「みなさん……なぜここに?」
「オルディオンを探しにここまで来たんです。ヴァルさんの情報を頼りにして」
「ああ。西の方にオルディオンがいるって書き込みがあったからな。やはりユビキタスはいいな。ビバIT!」
 今来た道を指し示すミルザムと、親指を立てるヴァル。
「そうでありますか。自分たちも西回りで来たのでありますが、偶然でありましょうか」
 ミルザムとは別の道を指差す雲雀。
「みなさんオルディオンを探してるんですか?」
「ええ。ここまで移動する間に会うことは出来ませんでありましたが……」
「あっ、私たちもオルディオンを探していますが、まだ会ってませんよ」
 リリィもまた、意見を述べる。
「ふむ……全員が別々の方から来ていて、全員が見かけていない……」
「すると、今まで誰も通ってない道を進めばいいということになるな……」
 アルツールの言葉を接いで、ゼミナーが推理をまとめる。
「よし、ならこっちの道を進みながら捜索してみようじゃないか!」
 いるみんが、元気に提案した。


 未踏の道へと歩みを進めるミルザムたち。人数は、十人という大所帯となっていた。捜索には適しているが、敵や魔物に見つかりやすいというデメリットも伴っていたため、出来るだけ静かに行動していた。
 していたのだが――
「おうおう! お前らももしかしてオルディオン捜索組か〜!?」
 豪放な声が上がる。
 その場にいた十人全員が声のしたほうへと視線を動かす。
 そこには、永谷、ルース、功平、由宇、アレン、ラルクの六人がいた。
「ちょ、ラルク、声がでかいぜ!」
 宥める功平の声も、十分大きかった。
「おっとすまねぇ――と、俺たちも協力するぜ! ミルザム様よぉ」
「助かります……しかし、私たちもさっきから探していますが、なかなか姿を現さなくて困っているんです……」
「それなら心配ないぜ。俺の博識を使えば……」
 眉間に人差し指を当て、オルディオンが隠れる場所を思い出す。
「そうそう、木よりも岩陰のほうに行くんだったっけ……。この辺で隠れられるくらいの岩っていったら……あそこか」
 周囲を見渡し、それらしきものを発見する。
 早速その岩に向かう一行。
 だが、捜索対象の存在は、自ら姿を現した。
「あっ――」
 見た瞬間、言葉を詰まらせるミルザム。
 頭に二つの角を生やした獣が、そこにはいた。
雪のような、混じりけの無い白い毛並みを纏ったそれは、大きな犬のようにも、狼のようにも見える。
「私を探している者たちというのは、そなたたちか……?」
「ほんとに喋ったぁ……」
 驚きの声を上げる由宇。ふと我に返ったミルザムは、その場で頭を垂れた。
「お会いできて光栄です。オルディオン。単刀直入に申します。私たちに協力してください。パラミタに危機が迫っているのです!」
 ミルザムは、バルジュ兄弟のことを掻い摘んで説明した。
「そうだったのか……しかし、そなたたちを簡単に信用するわけにはいかん」
「なっ、なぜですか!?」
「何百年前か……。ある者がそなたたちと同じようなことを言ってな。その者は多くの無辜なる民を救うためと言って、私に敵の居場所や強力な兵器の在りかを聞いてきた。もちろん、その者は後に民を救った。しかし、頂点に座したときから、その者は変わってしまった。都合の悪いことを隠匿するためや侵略のために私の力を利用するようになったのだ。そのことに気がついた私はその者を諌めようとした。だが――」
 寂しそうに顔を俯けるオルディオン。
「だが――その者は耳を貸すどころか私を追放したのだ。利用できるだけ利用し捨てる、そんな人間を、簡単に信用などできんよ」
 オルディオンの心中を知って、押し黙ってしまう一行。
「恐れながら、私たちはあなたのおっしゃる者のような裏切りは行いません。あなたを幽閉したり、あなたの能力を悪用したりしません」
 真剣な眼差しで見据え、再度願うミルザム。
「むしろ、あなたの力を悪用しようとしているのは、この森に潜んで不埒を働く者たちです」
「……それは、邪悪な兵器を持ってこの森の魔物たちを蹂躙している者たちか? 幾度か追いかけられたが、まさかあやつらが……」
 思案顔をするオルディオン。
「俺からも頼むよ。悪いようにはしない。約束する」
 功平も頭を下げて請う。
「あいつらに捕まるほうが危ないと思うぜ。オルディオン」
 と言うのは永谷。
「そなたたちは、奴らの仲間ではないのだな?」
「まさか。ゴースト兵器なんて持ってねぇし。つかそのゴースト兵器持ってる奴らを倒したばっかりだぜ。何なら見せてやるぜ。証拠」
 カセイノは折れた槍の穂先を取り出すと、オルディオンに見せた。
「血がついてるだろ? 襲ってきた奴らのだぜ。 まぁ人間の血なんてみんな似てるから、信用できないかもしれないが……」
 槍の匂いを嗅ぎ、しばらく考えるオルディオン。
「いや、ほんの少しだが、この血からは邪気が感じられる。ふむ――」
「お願いします。オルディオン」
 ミルザムたちの熱意に、ついにオルディオンは折れた。
「わかった。とりあえずはそなたたちを信じよう」
「ありがとうございます!!」
「さぁ、やつらが来る前にとっとと安全な場所に行こうぜ!!」
 ラルクが先を促した。