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【金の怒り、銀の祈り】うまれたひ。

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【金の怒り、銀の祈り】うまれたひ。

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*別れ*




 ボタルガに到着した朝野 未沙たちは、そこで町中を探索しているニーフェ・アレエ一行に出会った。

「ニーフェさん!!」

 朝野 未羅は飛びつく勢いで抱きついて、その後に秋月 葵も続く。再会と、情報交換を済ませる頃には、町長の屋敷がまた何者かの痕跡があるのを見つけた。小鳥遊 美羽と、辿楼院 刹那が足を踏み入れ、誰もいないのを確認すると捜索隊一同をそこに集めた。

「ここに、機晶姫があったな……よくおぼえちょらんが、おそらくあの機晶姫が……」

 シルヴェスター・ウィッカーがカプセルに入っていた機晶姫がなくなっているのに気がついた。他の装置は放置なのに、機晶姫だけがなくなっていた。
 既に閃崎 静麻たちからの連絡で、『アルディーン=機晶姫』の公式が成り立とうとしていた。

「だとしたら、消される直前、あるいはそれより前に、この機晶姫に記憶を移していたのかえ?」

 辿楼院 刹那が破壊された装置を眺めながら問いかける。憶測だが、それが正しいだろうというのはその場の沈黙が示していた。 

『ニフレディ、貴様も我と共にこい。姉のそばにいたいだろう?』

 声が聞こえた。
 それは、あの機晶姫のものだった。そう誰もが認識するよりも早く、

「イヤです! 姉さんを返して下さい!!」

 と、ニーフェ・アレエは叫んだ。歓声が沸き起こると、足元からスライムたちが湧き出てきた。

「こんなこともあろーかと!!」

 すかさず七瀬 歩が盾になり、ニーフェ・アレエを守った。にこっと笑う彼女は、何よりも頼もしかった。
 そしてニーフェ・アレエはいまさらになって武器を持っていないことを思い出した。それを知っている一同は、ニーフェ・アレエを護ることを最優先としていた。
 レイディス・アルフェインのツインスラッシュが決まると、エリシア・ボックが火術で焼き尽くす。クラーク 波音やアンナ・アシュボードは呪文を唱え始め、ララ・シュピリはニーフェ・アレエをぎゅっと抱きしめる。

「撤退だ」

 短く、誰かが指示しているのが聞こえた。
 この場所を知る者たちは聴いた覚えがあるような気がしたが、霞のように消えてしまった人物を追う術を、今は持っていなかった。

 

 

 遺跡を出たイシュベルタ・アルザスたちの前に、赤毛の機晶姫が立っていた。パワースーツは先ほど受けた情報の、偽ルーノである可能性が高かった。

「偽者であろうとなかろうと、ちょっとやそっとじゃ倒れない、だろ!」

 トライブ・ロックスターが駆け出し、一撃を加えると王城 綾瀬がその背後に回りこみ、首筋を狙うが、背後から来る攻撃に邪魔される。
 バロウズ・セインゲールマンはグレートソードを叩きつけそこね、大きく息を吐いた。アリア・オーダーブレイカーは、大地を蹴ってそのランスでエレアノールを狙った。だが、エレアノールは腰に携えていた剣を抜いてそのランスの起動だけをそらした。

「凄い! あの動きだけでよけさせるなんて」

 カチュア・ニムロッドは同じヴァルキリーとして羨望の眼差しを向けていると、足元にスライムたちが沸いて出てきた。

「これは!」
「アルディーンおねえちゃんの魔法と同じです!」
「ヴァーナー、よけろ!」

 名前を呼ばれて、とっさに脇によけると樹月 刀真がスライムを切り刻む。そして漆髪 月夜が確実にスライムたちの中心を射抜いていく。

「いつの間に」
「捜索してたら、いつの間にかな。ボタルガに近くなればなるほど、スライムが増えてた」
「そうか……ボタルガに、いるってことか?」
「とりあえず、こいつらをはかせたほうが早いんじゃないか?」

 トライブ・ロックスターがそういいながらも、バロウズ・セインゲールマンの剣を受け流す。割って入るようにして、冬山 小夜子が隙を作る。そして止めといわんばかりに、霧雨 透乃が拳に力を込めたが、急に相手は戦線を離脱し始めた。

「逃げる!?」
「にがさな……」
「私たちは、兵器ではありません」

 きっぱりと聞こえた、それはルーノ・アレエの声だった。赤毛の機晶姫から発しているようだった。口元はマスクで覆われ、動いているのかは確認できなかった。

「私と、協力してこの世界を、滅ぼしましょ」
「そんなこと、彼女がいうはずがない!」

 エヴァルト・マルトリッツは鋭く叫んだ。その声に、ジーナ・フロイラインが飛び出し、赤毛の機晶姫を打ち倒した。二人の人影はいつの間にか姿を消していた。

「ジーナ、どうしていきなり飛び出したんだ?」
「……ルーノ様と特別親しいわけではありません。ですが、アレをしってなお、世界云々というような方ではないと、ワタシも思ったからです」

 少し寂しげに、ジーナ・フロイラインは笑った。後ろにいる緒方 章はいつもならその仲よさそうな姿にやきもきするのだが、今日はむしろそのライバルの姿がすがすがしく見えた。












 時間を置いて、ようやく合流したニーフェ・アレエは、イシュベルタ・アルザスとエレアノールに叱られていた。だが、久しぶりに会えたうれしさか、泣きながらその説教を聞いていた。

「あの機晶姫が連れて行ったのは確からしいな。それと、まさか綾織が向こうにつくとは」
「でも、きっと考えがあるんだと思います。それに、彼女は……あの機晶姫さんは、なにか嘘をついているといってました」
「嘘?」
 
 ソア・ウェンボリスの言葉に、一同は小首をかしげた。

「なんだろうな。気になる」
「そうだ、俺念のためこれもって来てたんだけど……エレアノールさんにみてもらえるかな?」

 緋桜 ケイは以前遺跡から持ち出した、石碑を見せる。エレアノールは一通り眺めて、ため息をついて首を振った。

「すみません、見覚えがないように思えます。まだきっと、ちゃんと記憶が戻ってないのかと……」
「みんな!」

 如月 佑也が鋭く叫び声をあげた。そこには、ルーノ・アレエがたっていたのだ。その服は、百合園女学院の服だった。ぼろぼろになっており、今にも倒れそうだ。ラグナ アインが駆け寄ろうとすると、それを拒絶するかのように、ルーノ・アレエはしっかりと大地に足をつけた。
 そして、ラグナ アインは違和感を見つけた。

「私は、彼女と、オーディオと行きます」
「ど、どうして?」
「人は、とても残酷な存在です。彼女は、この世界の人を消してくれます」
「そんなことありません!」

 ニーフェ・アレエがが進み出て声を張り上げた。それに続いて、エメ・シェンノートも届くように叫んだ。

「あなたの胸に宿っているのは、私たちの想いだと、あなたが言ったじゃありませんか! 人は確かにひどいことをするかもしれません……でもそれだけじゃありません!」
「エメ、あなたの言葉が本当に正しいなら、私はきっとあなたを消さなくてすみます……」
「姉さん!!」
「ニーフェ……? あなたが愚かな人間と生きるというなら、私はあなたを消さなくてはいけません」

 
 その瞳はとてもうつろで、光を映していないようだった。近くまで寄ってみた彼女は、ルーノ・アレエが本人であることを証明できる。

 だが、ラグナ アインは違和感を持たずにはいられなかった。
 胸元には、ガーネットのペンダントがなかったのだ。
 そして、さらわれる直前につけた腕輪も、なかった。
















 誕生日会場は、とても沈んだ空気に包まれていた。用意された食事は、これから戻ってくる捜索隊を迎えるためのものになった。
 主賓がいない誕生日は、これにてお開きとなろうとしていた。九条 葱は不安そうに、浅葱 翡翠の顔を見つめる。

「パパ……ルーノさんは、戻ってこないの?」
「……いいえ、戻ってきます。彼女が、そんなことを言うはずないです」
「ええ。彼女は、私たちの大事な友達です」

 ロザリンド・セリナは言い聞かせるように呟いた。






担当マスターより

▼担当マスター

芹生綾

▼マスターコメント

※9月24日 一部修正を加え、リアクションを再提出しました。
  自由設定読み間違えるという初歩的なミスをしてしまい、真に申し訳ございませんでした。



 お疲れ様でした。
 最後に出てきたガーネットのペンダントは、シナリオ:金葡萄杯にて、ラグナ アイン様から戴いたプレゼントです。


 ルーノ・アレエはオーディオという機晶姫にさらわれました。
 憶測ではありますが、オーディオ=アルディーンであると思われます。

 その背後には、何人かのPCがかかわることになりました。
 今回強く関わった方々は、次回作に招待させていただきます。

 次回は、可能な限り近いうちに公開いたします。

 ルーノ・アレエからの宣戦布告、機晶姫たちの反乱を予定しています。
 皆様、動かないものでも、魂が宿ると言われます。 

 機晶姫は機晶石によって生きていますが、皆さんにとっては、どんな存在でしょうか?


 今回、招待枠の方以外には、うっかりネタバラししてしまいそうなので、個別コメントは控えました。
 ご了承くださいませ。
 ですが、参加してくださった全ての皆様にはいつもありがとうの気持ちでいっぱいです。
 幸せになるようにがんばってくださる皆様の気持ちがありがたくて、いつも涙ながらにアクションを読んでます。

 また、次回作でお逢いしましょう。