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リアクション
数では圧倒できると思っていた。しかし、兵力という意味ではほぼ同数といったところだろうか。
「このまま開戦と洒落込むのも面白い……が」
万願・ミュラホーク(まんがん・みゅらほーく)が敵を見据えて言った。「恐らく、人質を盾にするだろうな」
「忘れたのか?! こっちには人質が居るんだぜ! テメェらの大事な大事な女どもがなぁ」
バイモヒカンの男が叫んだ。全く、期待を裏切らない輩である。
「という事は、『乙女』たちを攫っていたという事を認めるんだな?」
「ハッ、こんな現場を見られてんだ、いまさらバックレるかよ」
「石にしたのは何だ? 体にかかる量によって石化する速度にだいぶ開きがあるように見えたが?」
「よく見てんねぇ。上出来だ。でもなぁ、図に乗りすぎだ。全員大人しく武器を捨てて這いつくばりなぁ!」
バイモヒカンの男は顔は歪めたままに目をつり上げた。
「石にした奴らを壊しちまうぞ! 死ぬぞ!! あ゛あ゛?!!」
石にされたまま破壊されれば、たとえ元に戻せたとしてもその部位は破壊された時の状態のままである。臓器が破壊されれば恐らくは死に直結するだろう。
「女はとりあえず石にしろ! 男は追って来れねぇように片足を切っとけ! 薬は使うなよ、勿体ねぇからなぁ!!」
「待て」
パラ実生たちの間を静かに歩み抜けて、ルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)がバイモヒカンの男と向き合った。パッフェルに同行していながら、先の戦いにおいて『ヒプノシス』で一行を眠らせた男である。
「何だ。テメェは確か新入りだったな」
「『追って来れねぇように』とはどういう事だ。この場を離れるつもりか?」
「この場所がバレたんだ、当然だろ」
「一体どこを目指す? 何かと移動ばかり… 我にはイタズラに場所を変えているようにしか思えない」
「黙れ。全ては金の為だ、『あの女』に渡さなきゃ金にならねぇ、それまでは何があっても石像を守り抜く!! それだけだ!!」
「その『女』は一体いつ姿を見せる? ここ数日同行したが、そんな気配は一切見えなかった。本当はそんな『女』居ないんじゃないのか?!!」
「何だと?」
「場所の移動は仲間内に『石像』の数を混乱させるため、実はその『女』とは秘密裏に連絡をとっていて、勝手に売りさばいていた。当然、報酬は独り占めだ」
鼻の尖った男が目を剥いて男を見つめた。否定を強めたいのか、バイモヒカンの男は更に声を張り上げた。
「馬鹿を言うな! あの『女』にこちらから連絡を取る事は出来ねぇ、出来るならとっくにそうしてる!!」
「いいや、信じられない。チームのトップであるお前が『女』の連絡先も素性も知らないなんて事があるわけが−−−」
「連絡はこの携帯にかかってくる! 黒いフードを着た女! 純潔な女を集めてる! それだけだ、お前たちだって知ってるだろ?!!」
鼻の尖った男に同意を求めたが、疑いの色は消えていない。
「いいや、まだだ。『女』はこれまでに数体の『石像』を高額で買っている、『石化薬』を渡したのもその『女』、『バイコーン』を連れてきて『乙女』捜しに加えたのもその『女』だったはずだ。なぜそれを言わない!」
「だからそれはテメェ等も知ってる事だろうが」
「我らが知っている情報のみを挙げるのは難しい事じゃない」
「もぅいい! 黙れ!!」
男がルーツの首もとにバトルアックスを突きつけた。
「これ以上くだらねぇ事を言ったら殺す」
「それでは何の解決にもならない」
「黙れと言ってる。殺すぞ」
「…………仕方がない、最後に……………………。本当に『女』とは連絡が取れないのか?」
「しつけぇ野郎だ。知らねぇものは知らねぇ、それだけだ」
「…………………………なるほど。だ、そうだ」
「よく分かったわ、ルーツ。ご苦労様」
師王 アスカ(しおう・あすか)が笑顔で応えた。
「何が分かったんだ?」と訊くミュラホークに、アスカは「私たちが石にされることも、男性陣が地面に這いつくばる必要もないって事よ」と答えた。
「彼らは黒幕の『女』に連絡を取ることはできない、そして連絡が来たら『乙女の石像』を渡さなければならない、つまり商品である『乙女の石像』には手出しはできない。人質は人質の意味を成していないのよ」
「馬ぁ鹿が!! 『石像』の中には『男』のものも混ざってんだ! 『男』の像なんざ、どうなったって知ったこっちゃねぇ、痛くもかゆくもねぇ。sぁ! 粉々にされたくなかったら大人しく−−−」
「それはどうだかな」
パラ実生の輪から歩み出した蒼灯 鴉(そうひ・からす)はアスカの傍らに立ってから言った。
「報告しただろ?、『男の像はみんな捨てて来た』ってな。まぁ、正確には『おまえ等の手の届かない安全な場所に捨ててきた』だったけどなぁ」
鼻の尖った男がバイモヒカンの男と顔を見合わせた。
「ア、アンタまさか初めから……?」
「今頃かよ、めでてぇ奴らだ。あぁそういえば、『石像』に傷が付けば報酬はゼロなんだよなぁ。テメェ等が柄にも無く慎重に運んでる様は笑えたぜ」
「キィィィィイイイーーーアンタ! 許さないよ!!」
「それは、こっちのセ・リ・フ」
牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)は『七枝刀』と『奪魂のカーマイン』を構えた両腕を見せつけるようにあげると、妖しく笑んだ。
「人質が居ないなら、好きにやらせて貰いましょーっと。シーマ!!」
「了解した」
飛び出したシーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)はパラ実生の一人に蹴撃を叩き込むと、続けて脚部から『六連ミサイルポッド』を撃ち込んだ。
一帯に爆音が響くと、戦いの幕が切り落とされた。
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