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リアクション
「重要な事?」
トマスの問いに、テノーリオは「あぁ、そうだ」と答えた。
テノーリオが顔を向けた先には小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がいた。彼女がパートナーのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)に「どう?」と訊くと、「残念ですが、明確な悪意を感じます」と答えた。彼女のディテクトエビルが少年の悪意を感じ取ったようだ。
「やはりそうか」
「何だ? 何だってんだ?」
「良いタイミングだった、これ以上ない絶妙のタイミングだった、がしかし!」
テノーリオはビシッと少年を指さした。
「いかに時代が変わろうと、ある日森の中でお嬢さんに出会って、気安く話しかけていいのは、くまさんだけだっ!!」
「………………」
「………………」
「………………はあ?」
「ある日森の中でお嬢さんに出会って−−−」
「繰り返すなっ!」
「……バレたっ?!!!」
「はぁ?! っってオイ!!」
血煙爪の唸り声が聞こえてきたと同時にチェーンソー坊やが飛び込んできた。そして茂みからは多勢のパラ実生たちが一斉に飛び出してきた。
「出たな〜」
『バイコーン』が姿を見せた段階で協力者も潜んでいると想定していた。秋月 葵(あきづき・あおい)は誰よりも早く冷静に『変身』した。
「愛と正義の突撃魔法少女リリカルあおい☆ 悪い心は改心させちゃうよ〜」
名乗りが聞こえたのだろうか、チェーンソー坊やが向きを変えて向かってきた。
「可愛らしい娘はみんな頂きだよっ!!」
刃と刃が激しく弾ける音がした。
「物騒な事を言うな」
血煙爪を弾いたのは長原 淳二(ながはら・じゅんじ)だった「俺が相手だ」
「へぇ〜、でも僕には仲間が居るんだよ〜、ねぇみんな〜?」
「ひぃやぁっは〜〜〜!」
「くわはぁ〜〜〜!」
「だあぁぁりゃ〜〜〜−−−あっ」
明らかに下っ端だろうに、な男が葵の背後から飛びついた。が、到る前に地に伏した。
的確な狙撃を見せた鬼崎 朔(きざき・さく)は黒薔薇の銃を下ろしながらに男を見下した。「乙女に殴りかかるとは、人の風上にもおけんな」
「同感だ!」
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は軽やかに妖精の靴で地を蹴り駆けた。
「一気に薙ぎ払ってやる!!」
現れ集まっていたパラ実生の中へ、容赦なくサンダーブラストを放った。
雷鳴と悲鳴が一帯に轟く。そして雷光はもっと速くに射し抜けて、男のスキンヘッドを映え照らして−−−
「俺の頭を光らせるんじゃねぇよ」
パラミタつなぎを着たスキンヘッドの男が『石化薬』を振りまいた。「まぁ、おかげで楽に一匹手に入ったがな」
液体を全身に浴びて『石化』したのはティンダロス・ハウンド(てぃんだろす・はうんど)。彼女は迫りくる男を視界に捉えても、一切の悲鳴もあげることなく抵抗することなく『石化』する事さえも受け入れた。しかしそれは、彼女の『個性』だった。
「ケッ、こんな時まで抵抗しないのかよ。おぉっと」
ラムズ・シュリュズベリィ(らむず・しゅりゅずべりぃ)の肩が揺れて、肩に乗っていたクロ・ト・シロ(くろと・しろ)は振り落とされそうになった。まったく、冗談じゃない。
「オイこらハゲ!! テメェ何してくれてんだ! ああ゛!!」
「ん? あぁ、猫はいらねぇ」
「なァんダトてめぇコラ!! 上等だぁァアア!!」
「待ちなさい、クロ。それよりも今は、」
怒りを噛み殺してラムズは大声で呼びかけた。
「みなさん! 彼らは『石化』を促す薬を所持しています!!」
声は届いた、が、実際に目にしなければ瞬時には信じられなかった。長原 淳二(ながはら・じゅんじ)も、そのうちの一人だった。
「おまえも、持っているのか?」
「さぁ〜ね、どうだろねぇ〜」
雅刀はチェーンソーの根本を打ち捕らえていた。力比べの鍔迫り合い。チェーンソーを軽々と振り回すだけの腕力はあるようだが、チェーンソー坊やは次第に顔を歪めていった。
「その体だ、持久戦は避けたいのだろうが。そうはさせない!」
「くぅぅ〜そうだよね〜させてくれないよね〜〜じゃあ、そろそろ負けちゃおうかな〜」
「なっ」
チェーンソー坊やが激しく回る刃を一気に傾けると、割れるような衝突音と共に雅刀は弾かれた。体勢を整えるべく後方に跳んだ淳二が次に見たのは、飛んでくるチェーンソーの本体だった。
斬るか、いや…打ち落とす!
腰を回したその時だった。チェーンソー本体の影から現れたチェーンソー坊やの蹴りが胸に入り、淳二の体は茂みの中へと吹き飛んだ。
「なんてねっ。負けてなんかあげないよ〜」
縄を引いて飛び寄せたチェーンソー本体をしっかり受け止めると、チェーンソー坊やは再びに刃を回転させて駆けだした。
乱戦の中にあって、ひときわ派手に戦っていたのは桐生 円(きりゅう・まどか)だった。彼女は魔鎧であるアリウム・ウィスタリア(ありうむ・うぃすたりあ)を装していた。
アリウムの『軽身功』を発し、パッフェルが放つ拡散波動弾を追い駆けた。
彼女の拡散波動弾は巨大な波動弾が幾つにも分裂して飛騨するというものだが、その性質上、拡散した弾を細かく操ることは出来ない。故に、運良く逃れる者もいるのだが、それらの残党狩りを円が行っていた。これまで常にパッフェルと共に戦い、彼女の能力と性質を理解した円ならではの戦い方だった。
ふと、円の瞳がそれを捉えた。次弾を放った刹那のタイミングでパッフェルの背後からバトルアックスが振り下ろされている。左方から迫る男は迎撃できるだろう、だが後方の男への対応は恐らく、間に合わない。
「くっ」
波動弾を追うではなく、一気に切り返して身を投げ出した。それは見事にアックスの柄を蹴りとばしたが、迎撃体勢に入っていたパッフェルの目の前に飛び出してしまっていた。
「それならっ」
アリウムの鎧脚力も使い、そのまま腰を回して蹴りを放った。
勢いのままに体を回転させて着地したとき、降ってくる液体が見えた。液体はティンダロスを『石化』させた液体だった。
畳んだ膝には体重がかかったままだ、避けられない!せめてアリウムだけは……。
円が魔鎧の解除を実行しようとしたとき、メイド服のヒラヒラが覆い被さってきた。
「パッフェル!!」
目の前でパッフェルが倒れ込んだ。抱き上げた体はすでに、『石化』が始まっていた。
「パッフェル! パッフェル! どうして…」
「…………円も……」
紫色の髪がみるみるうちに石化してゆく。そして瞳も頬も。
「……大切な人だから……」
指先、ふともも、靴の端まで。あっという間に全身が石と化してしまった。
「…………………………」
「桐生!!」
パッフェルを抱いたまま動かない円にパラ実生が迫っていた。
「散れっ!!」
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は『サンダーブラスト』を放って護撃したが、雷光の中をスキンヘッドの男が逆走していた。
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