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狙われた村

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狙われた村

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 特務隊のステラと途中で合流した白百合団員と共に、鈴子が救護班の元に到着する。
 鈴子は団員達に礼を言いながら、パートナー達の下に駆けつけた。
 ライナはまだ眠ったままで、ミルミはアルコリア達に慰められ落ち着いていた。
 だけれど、鈴子を見た途端、ミルミは泣き出してしまう。
「ありがとございます」
 鈴子はアルコリアと特務隊のメンバー達に礼を言い、「頑張りましたね」と、ミルミをそっと抱きしめた。
「神楽崎、俺に挨拶は?」
 その様子をほっと見守る優子の腕を、ぐいっと引っ張ったのは――ゼスタだ。
「ああ、すまない。協力に感謝する……と言いたいところだが、これは偶然か?」
 優子の問いに、ゼスタは意味ありげな笑みを見せる。
「白百合団と鉢合わせたのは、偶然だ。彼女達だけではなく、今日は訪れている契約者が多かったようだな」
「で、お前が分校生をここに連れてきた理由は?」
 優子は軽く目を光らせて、小声でゼスタに問う。
「スイーツの材料を守るためさ。それと、ちと確認したかったことがあったんだが」
 ゼスタも声を低めて、こう続けた。
「お前の分校に裏仕事を任せられそうなヤツは、いないかもな」
「……」
 優子は眉をぴくりと揺らした後、黙り込む。
「まあ、奴等楽しそうだし、これでいいのかね」
 ゼスタは捕らえた盗賊の下で、雄叫びを上げたり騒いだりしている分校生達に目を向けて、にやにやと笑みを浮かべる。
「お前の紐の番長はイケメンだし」
「………………………………………は?」
 優子はものすごく怪訝そうな顔をした。
「C級四天王の分校だっていうのに、S級四天王様も顔を出しているみたいだし」
「まさか。人違いだろ、若葉分校はそんなに規模は大きくない」
 ありえないと優子は首を左右に振る。
 そして、もしそのような人物が来ているのなら、会ってご挨拶をしなければならない、などと真顔で言う。
 固い女だと、ゼスタは声を上げて笑った。

「ヒャッハー! 俺のお宝は元気かー!」
 確保して入り口に保管しておいたお宝――村の女性達の下に、南 鮪(みなみ・まぐろ)が戻ってくる。
「げ、ゲェー! 優子さんンンン!?」
 白百合団に介抱されながら泣いている彼女達に近づこうとした鮪は、ここにいるはずのない人物を発見し、青くなる。
「ん?」
 背を向けてゼスタと話し込んでいた優子が、鮪に気付いて振り向いた。
「へへへ、べ、別にこいつらは俺が拉致ったんじゃ無いぜ?」
 慌てながら、鮪は言い訳をしていく。
「優しくしようとしたてだけだぜ?」
 もちろん、エッチなことをだけど。
「わかってるさ」
 優子は爽やかな笑みを見せる。
「頑張ってくれたようだな、生徒会の書記として」
「セート界? あ、いやそれはもう、当然さ。ヒャッハー!」
 会話はまるで成り立ってなかったが、鮪はとにかくその場から逃げ出した。
 ……もちろん、女性達をここに連れてくる最中に一番の宝(パンツ☆)はゲット済みだ!

 南西方面ではなにやら牛が暴れまわっているようだったが、それが盗賊達の西側への逃走を阻んでいた。
 北西の方では、レンノアと情報を交換しながらの指示により、たまたま遊びに来ていた契約者達が力を合わせて盗賊を捕らえていった。
 負傷した者もいたが、死者が出ることはなく、村に入り込んでいた盗賊を逃すこともなかった。

 全ての盗賊の捕縛を終え、薬の影響もなくなった後、分校生達は「ドーナツを食うぞ!」と大声を上げて、村人達を引っ張って村の中へと戻っていく。
 元気な彼等の様子に、白百合団員達にも笑みが溢れる。
「では、テントを片付けた後、私達もご馳走になりましょう」
 ティリアはそう言った後、ライナを起こしている鈴子に目を向ける。
「ええ。皆さん、本当にありがごうとざいました。捕らえた盗賊に関しては、私達に任せてください」
 2人の言葉に白百合団員達は微笑みを浮かべながら「はい」と返事をしていく――。

〇     〇     〇


 白百合団の団長の桜谷鈴子と、副団長の神楽崎優子は、手配した荷馬車に盗賊達を乗せて一足先にヴァイシャリーに戻ることにした。
「わたくしが見かけた盗賊達は全て捕縛できているようですわね。グループ全員が今回の作戦に加わっていたとは限りませんから、事後処理もきちんと行っておきませんと」
 エレンは、ひとりひとりの顔を確認して、そう言った。
「手配写真はいらないようですね〜」
 エレアは念写で盗賊達の写真を作り出していた。
眞綾さんも、主に入り口付近ですがビデオを録ってくださっていましたので、資料として一緒に軍に提出いたしますわ」
 鈴子がそう答えて、写真のデータを受け取っていく。
「……じゃあ問題は解決したんですし〜、また楽しく美味しいミルク飲んだり、葡萄食べたり、ドーナツ食べたりしましょ〜」
 そうほんわりとエレアが言うと「おお〜!」と声があがる。
「おっきなドーナツ作るのである〜!」
 まだ体験していなかった、ドーナツ作りにプロクルは興味津々だ。
「うん行こう」
 アトラもそう言いながらも、彼女はドーナツよりエレンの新たなパートナーであるエレアに興味を持っていた。
「それでは、行きましょう。今日は休日ですものね」
 エレンは鈴子達と頭を下げあうと、パートナーを連れて村の方へと向かっていく。

「お疲れさまでした!」
 真っ先に、ドーナツ作りの手伝いに名乗りを上げた橘 美咲(たちばな・みさき)が、出来立ての特大ドーナツを、でん、とテーブルの上に置いた。
「おおー」
「切って食おうぜ!」
 若葉分校生は手でちぎって、我先にと食べ始める。
 一部、浮かない顔で後ろの方に立っている不良少年達もいたが……。
「どうぞ」
 美咲がナイフで切って、ペーパーで包んで渡すと、喜んで受け取り食べ始めるのだった。
「こちらはチョコレート味のドーナツです。どうぞ」
「ようやく戴けるのですね。では、こちらと、そちらと、あちらも戴きます」
 七日も席について、沢山のドーナツを要求する。
 ほっとした表情で皐月は七日の隣に腰掛けて、若葉分校生達が群がっているドーナツに手を伸ばして、少しだけいただくことにする。
「はい、ライナちゃん。イチゴドーナツだよ!」
 ミルミは貰ってきたドーナツを、ライナに渡した。
 自分から誰かの為に貰いにいくなどということは、ミルミは普段しないのだけれど。
 少しずつ、姉のような自覚が芽生えていた。
 だけど、並んで美味しそうにドーナツを食べる2人の様子を見ながら、浮かない表情をしている子もいた。
 ……班長の、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)だ。
 ヴァーナーは、鈴子に、ライナと一緒いてあげて欲しい、褒めてあげて欲しいなどと、お願いしたことがある。
 ライナがとっても懸命に、鈴子の役に立とうとしていたから。寂しそうに思えたから。
(……ボクのせいなのかな……。どうしたらよかったのかな……)
 自分の発言のせいで、より辛い目にあわせてしまったのではないかと、ヴァーナーは沈んでいた。
(どうしてがんばってはたらかずに、人をおそったりする人はいなくならないのかな……)
「あっ、ヴァーナーお姉ちゃん、はいっ」
 ヴァーナーの姿を見つけたライナが近づき、ミルミから貰ったドーナツを差し出してきた。
「ありがと、です」
 ヴァーナーは少し悲しげながらもちゃんと微笑んでドーナツを受け取る。
「あのね、今日、鈴子お姉ちゃんがここにつれてきてくれたの! ぶどうとか、いっぱいたべたんだよ。牛さんやお馬さんもいてね、いっしょに乗ったりしたんだよっ」
 目を輝かせてライナは楽しかった今日の思い出を、ヴァーナーに話していく。
 ずっと眠っていたので、怖い思いも、辛い思いも彼女はしていなかった。
 楽しい思い出だけが、彼女の中に刻まれていた。
「すっごくたのしかったの……!」
「はい……。よかった、ですね……っ」
 ヴァーナーは両手を広げて、目を輝かせているライナをぎゅっと、ぎゅっ……と抱きしめた。

「皆さんも、席の方へどうぞ。テーブルを囲みましょう!」
 美咲は、ドーナツを配り歩き、席へと皆を導いていく。
 エレン、プロクル、アトラ、エレアの3人もまずは試食をしようと、席につく。
 取り合うように食べる分校生達の姿にも、美咲は微笑を向ける。
 これが百合園ならマナーが悪すぎて、不快になる人もいるかもしれないけれど。
 気の合う仲間、美味しい料理、そして笑顔があれば、此処は最高の食卓だと思うから。
「そこのサングラスのお兄さんも、一緒に食べましょう!」
 少し離れた位置で、見守るかのように超然と佇んでいるレンの元にも、美咲は満面の笑顔とドーナツを運んだのだった。

 村に笑いの花が咲いていく。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

若葉分校生も、白百合団員も、偶然居合わせた人達も、ドーナツにトラウマのある不良達も、この後、一緒に楽しい時間を過ごしたのだと思います。
今回は盗賊騒ぎでしたが、この村でほのぼの過ごす皆様の姿も書いてみたくなりました〜。

今回は、事件の解決の為に動く行動の他に、NPCと個人的なことを話すというダブルアクションがとても多かったです。
目的がNPCとの会話な方も多かったのですが、シナリオに関係のある行動の方を描写させていただきました。
返答を求めているわけではなく、ただ、NPCに伝えたかったことがあっただけの方が殆どだと思いますので、伝えたということにしていただいて構いません。私も記憶に留めておきます。

貴重なアクション欄を割いての私信等、ありがとうございます。余力がなく、あまりお返事がかけず申し訳ありません。

それではまたのシナリオでお会いできましたら嬉しいです。