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【2020年】ハロウィン・パティシエコンテスト

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第3章 細やかな作業はパートナーと協力しなきゃね

-PM14:10-

「はぁ〜、椅子と暖炉の分のパーツだけは出来たね」
 テーブルに並べたクッキーを指差しながら、足りないところはないか郁乃が確認する。
「アイシングを作っておきますね」
 クッキーのつなぎように桃花は卵白と砂糖、レモン汁を混ぜて作る。
「私、何もやることなくなっちゃった・・・」
 まだ材料作りをしているマビノギオンをちらりと見ていた郁乃は、ちょっとだけいいなと思ったがコンテストだし仕方ないかとふぅっと息をつく。
 桃花と灌の方を見るが、手が足りてそうに見えてしょんぼりとする。
「でしたら壁作りを手伝ってくれませんか」
「そうしようかな!」
 優しく声をかける桃花に元気よく頷き、ドイツの伝統的なクッキー、レープクーヘン作りを手伝う。
「崩れないように今回はバターは入れないんだよね」
 蜂蜜を火にかけて80度くらいまで加熱する。
 火からおろしてスープンでくるくると混ぜ、少しだけ温度を下げるために冷ます。
 小麦粉とライ麦粉、スパイス類をふるい蜂蜜とレモンピールを混ぜて冷蔵庫に寝かせる。
「(うぅ、眠気が・・・)」
 こんなに難作業になると思わなかったマビノギオンは、うとうとと眠りかけながら無塩バターに砂糖をすり混ぜる。
「(皆頑張ってるのに、あたしだけ眠るなんて出来ませんねっ)」
 灌はふるふると頭を振り、眠気を飛ばして卵黄と小麦粉を順番に混ぜ、冷蔵庫の蓋を開けて生地を入れる。
「―・・・はぅ、チョコを刻まないと・・・あっ!」
 あまりの眠さに一瞬意識が飛んでしまいクーベルチュールチョコレートが、手からテーブルへ滑り落ちてしまう。
「眠ってしまったら・・・完成に間に合わなく・・・。―・・・」
「大丈夫?1時間くらい眠っておいたほうがいいよ。手を怪我しちゃうかもしれないし」
 郁乃は倒れかかる灌の身体を支え、心配そうに顔を覗き込む。
「すみません、大丈夫です。早くチョコを溶かさなきゃ・・・」
「無理しないでちょっと休んで。さすがに48時間以上なんて起きてられないよ」
 作業を続けようとする彼女の手から、ぱっとチョコを取り上げる。
「じゃあ、お言葉に甘えて少しだけ休みますね」
「うん、お休みーっ!桃花たちも適度に休んでね」
「はーい分かりました郁乃さま。桃花もひと段落したら休憩します」
 お菓子の家のパーツを作りながら彼女の方へ顔を向けてニコッと笑う。



「生地を十分寝かせたから次はそれにバターを包むんで折っていくんだが、俺のやり方を見て同じようにやるんだ」
 鬱姫とタルトに、ホロケゥが手本を見せる。
「きゃあっ、生地が手についちゃって上手く折れませんっ」
 ベトベトと手についてしまい、鬱姫はあわあわとパニックになる。
「両手に薄力粉をつければつきにくくなるぞ」
「そうなんですか?―・・・あ、生地が手につかなくなりました」
 袋の中の粉を摘み、手につけた彼女はもう1度チャレンジしてみると、今度はきれいに折ることが出来た。
「ホロよりは上手く出来ませんけど・・・。どうですか?」
「まぁそんな感じだな。タルトも出来たみたいだし、今度は底部分だけ焼くんだ。焼きすぎに気をつけろよ」
「焼き加減が難しいですよね」
「タイマーをセットしておいたから心配するな。―・・・よし、もうそろそろ焼けただろ?生地はとりあえずトレイの上へ乗せておけ」
「乗せましたよ、次はどうするんですか?」
「カラメルを作るんだ、バターは入れるなよ」
 ホロケゥは説明しながら水と砂糖を鍋の中へ入れる。
「焦がすっていっても飴色程度だ。黒く焦がさないようにな・・・言っている傍からタルト!火が強すぎだっ」
「む・・・?これでは失敗なのか」
 黒に近い焦げ茶色になってしまい、タルトはカラメルを作り直す。
「生地が足りないかもな。今日1日、生地とカラメル作りに集中するか」
「そうします?数が足りないと、食べられない人がいるかもしれませんし」
 彼に教わった通りに鬱姫はパートナーたちと試食する者の分も作る。
「次はリンゴをいくつか4等分にして、皮と芯をとって剥くんだ」
「包丁ならわらわにとって難しいことはないのう♪」
 タルトはしゅるると器用に皮を剥く。
「それが出来たら今度は、カラメルに並べて窯に入れてくれ」
「うむ。こんな感じかのう?む、リンゴが入りにきらないのじゃ」
「もう少しこっちに寄せてくれ。そうすれば入るだろ?」
「おお〜!」
「焼き始めるから途中で蓋を開けるなよ」
 ホロケゥが窯をパタンッと閉める。
「美味しそうな匂いがしてきたのじゃ」
「まぁ、後少し待っていろ」
「―・・・まだかのう?」
「まだだな。蓋を開けたりするなよ?」
「くっ、駄狼め・・・」
 早く完成させたいタルトが窯の傍へ寄るが、ホロケゥに行く手を阻まれてしまう。
「よし・・・」
「出来たのかのう!?」
「いやまだだ。もう1度焼かなきゃいけないからな」
 リンゴを窯から出したホロケゥは別の中へキレイに並べ直し、残った汁をリンゴ並々まで入れ焼き直す。
「―・・・もういいだろう。カボチャお化けの顔は包丁で切り抜くんだ」
 焼いたリンゴを底部分になる生地を乗せてひっくり返し、細工部分となるやつを乗せ、包丁で目と口部分を切り抜く。
「やっと出来たのう!こういうものは人に出す前に、味見をしないといけないのじゃ」
 もう我慢なんぞ出来ないといわんばかりに、タルトは出来立てのタルト・タタンをひったくるように掴み、もぐもぐと美味しそうに頬張る。
「仕方ないな、あまり食べ過ぎるなよ」
「もう少し味見を・・・」
「食いすぎだ」
「(わらわから奪うとは駄狼め!うぅ、もっと食べたいのじゃー・・・)」
 自分の傍から遠ざけられてしまい、しょんぼりとする。

-PM18:00-

「ふぅ、やっと完成しましたね。これでどうですか?」
 子敬は作った設計図を広げてトマスに見せる。
「こんなに時間がかかるなんて、50cm四方くらいでもあなどれないなぁ」
「聞いた通りに作るためには結構かかりますよ」
「上面図やパーツの位置が書いてある仕様書がないと作りづらいからこれくらいいるな」
 傍からテノーリオが覗き込み作り方を確認する。
「なんていうか砂浜でお城作るみたいなノリだなぁ。けど崩れたらそこだけ作り直しとか難しいから慎重にやらないとな」
「そうですね、細かいところは特に気をつけなきゃいけませんね」
「えぇ、それくらい滑らかにしてくれれば大丈夫ですよ。設計図も出来たことですし、私はスポンジとクッキーを作りますね」
 パックから卵を取ってボウルに割り菜箸でほぐし、砂糖を加えミキサーをかけて、湯煎で生地を人肌程度に温める。
「さっと手際よくやりませんとね。残りの作業が大変になってしまいますから」
 温まった頃合を見て生地を高速で一気に泡立て、リュバン状になったら低速にしてゆっくりとキメを整え、少し高いところから薄力粉をふるい入れ空気を含ませるようする。
「たしか練ってはいけないんでしたっけ・・・」
 ゴムベラを使って切り混ぜ、切るようにおろし生地をすくい落とす。
 溶かしたバターを熱いまま入れ、数回に別けて度きり混ぜていき、ケーキ型に流して暖めたオーブンで焼く。
「出来るまで20ちょっとかかりますから、その間にクッキーを作りますか」
 バターに砂糖をすり混ぜ、卵と混ぜ合わせた子敬は粉類をまとめて入れて混ぜる。
「生地を寝かせなきゃいけませんけど、スポンジが焼けるまで砂糖人形を作る材料だけ用意しておきましょう」
 粉ゼラチンと粉砂糖を別々の器に入れておいた後、20分ほど手を休める。
「―・・・あ、オーブンから出しても大丈夫そうですね」
 もうオーブンから出してもよさそうだと、外気で急激にしぼまないくらい中に置いておいたスポンジを、型から外してまな板の上に置く。
「切る前にクッキーを焼かなきゃいけませんね」
 オーブンが冷えないうちに生地を乗せた鉄板を入れて焼き始める。
「さてと、土台用のやつを用意しますか」
 出来立てのふわふわのスポンジを包丁で刻む。
 数十分後、焼きたてのクッキーをクラッシュし、子敬とテノーリオがスポンジを刻みこんでいれたカボチャペーストと、そのクッキーで土台を作る。
 地面の感じをクッキークランチで表現する。
「とりあえずこれで今日の分は終わったね。そこの椅子のところで仮眠するか」
 トマスたちはソファーのようなやわらかい椅子の上へドサァッと倒れこみ仮眠する。

-PM20:00-

「ふ・・・んーっ。皆ー、起きて!」
 仮眠をとっていた郁乃が目を覚まし、パートナーたちを起こす。
「作業を始めますか」
 結局、仮眠とってもチョコを刻み終わったところでダウンした灌は、たっぷり眠って作業に戻る。
 湯煎でとろ〜りと溶け、ふんわりと甘い香りが漂う。
「まずは植木鉢の下の方から固めておきませんと、それらしく出来ませんからね。マビノギオンさん、氷術で冷ましてくれませんか」
「厚みが出来るように、中に金型を入れられる程度にしておきますね」
 金型の中のチョコを氷術の冷気で冷やす。
「ありがとうございます」
 冷やしてもらった中へさらに金型を入れてチョコを流し込む。
「固まるまでの間、花を作っていましょう」
 指でマジパンを摘み花びらの形を整える。
 30分後、冷蔵庫から出したチョコの型を外し、彫刻刀で土らしく見えるように中を削る。
 真ん中にくぼみを作り、マジパンで作った花の茎の下をくぼみへ埋めようと削ったやつをかけ、指につけたお湯で溶かして固定する。
「(灌さまの作業は大丈夫そうですね)」
 郁乃と壁を作りながら植木鉢を作っている彼女の様子を見る。