シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…

リアクション公開中!

クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…
クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき… クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき… クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…

リアクション


第29章 消えそうな灯火でもパートナーの傍に・・・

「これが遊園地っていうところなんだ!?よーし、いっぱい乗り物に乗るぞーっ」
 緋王 輝夜(ひおう・かぐや)に来るのは初めてで、どれから乗ろうかとはしゃぎ回る。
「―・・・・・・我も、・・・遊園地・・・初めて・・・です・・・ね。姉君・・・一緒に、・・・・・・回りましょう・・・」
 ぼそぼそと小さな声音で言い、ネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)は輝夜の後について行く。
「あまり走ると転びますよ?そんなに急がなくても乗り物は逃げませんって」
 ぱたぱたと走っていく2人の後をエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)が追いかける。
 ゆっくりパートナーたちと過ごそうと、クリスマスの日を選んだのだ。
「謎のアドベンチャーに行ってみようっ」
 最初からかっ飛ばしていこうと、輝夜は絶叫ものを選ぶ。
「姉君が・・・行く・・・なら・・・我も・・・・・・」
 入園開始から急いでアトラクションへ走り、1日パスを使って時間予約を取ったチケットを使って入る。
「ワタシハ、乗リ物等ニハ搭乗デキマセン。皆様、楽シンデキテクダサイ。ココデ待ッテイマス」
 アーマード レッド(あーまーど・れっど)の重量ではさすがに乗れず、出口で待機していることにした。
 彼以外の3人はゴンドラに乗り、緩やかな川くだりから激流ゾーンへ突入する。
「いきなり流れが速くなったぞ!?」
「これが・・・絶叫と・・・いうもの・・・です・・・・・・か」
 ゴンドラから落ちないように、2人は必死に安全装置らしき縄にしがみつく。
「ちょっと、これって安全装置なんですか!?」
「もし落ちそうになってもオレらが助けるから大丈夫だぜっ」
 テンションの上がった漕ぎ手は丁寧口調から雄々しい喋り方へ変わり、安心して落ちそうになっていいぞというふうに、エッツェルへニカッと笑顔を向ける。
「それならいいんですけど・・・おーっと、あぁっ」
 本当に滑り落ちてしまいそうになり、ひょいっと身体を抱えられて漕ぎ手に助けられる。
「ふぅ〜、ちょっと冷や冷やしましたね。ありがとうございます」
「まぁ気にしなくていいさ」
「なんか、あれ楽しそうじゃないか?」
「―・・・はい・・・・・・我も・・・試しに・・・」
「やめてください、漕ぎ手さんがハラハラしっぱなしになってしまいますから」
 落ちそうなフリをしてみようとする輝夜とネームレスをエッツェルがストップをかける。
「わぁああ、化け物の鳥が追いかけてくるぞ!噛まれたら終わりだーっ」
 コマドリだったソリットビジョンが怪鳥へ変貌し、輝夜たちに襲いかかる。
 映像に対してなぜそんなに騒いでるのかというと、触れた感覚があったからもしかしたら噛まれたらヤバイじゃないかと、大騒ぎしているのだ。
「ククク・・・この・・・スリル、・・・楽しい・・・です・・・・・・ね」
 喉元へ届きそうで届かない牙を見つめてネームレスが不気味に笑う。
「このゴンドラ、ジェットバイク並の速さで進んでるんじゃないかっ。このスピード感、いい感じだ♪」
 化け物がなかなか喰らいつかないと見るや、輝夜も速度を落とさず怪鳥を避けるゴンドラを楽しむ。
「さぁ、もうすぐ出口だぞ。元気のいい姉さん、どっちを選ぶ?」
「私か!?じゃあ・・・右にする!」
 出口の行き先を選ぶように言われた輝夜が迷わず即答で選ぶ。
「右?本当にいいんだな」
「え・・・そんこと言われると迷うじゃないか。うぅ・・・じゃぁ、左にチェンジだ!」
「ほぉ、そっちでいいのかな」
「もうっ。どっちもでいいって。左、左に行って!」
「しっかり捕まってな」
「速いな、もう出口・・・って、ぁあああぁああーっ!!?」
「ふぅ。いいオチです」
 やっぱりこうなるのかというふうにエッツェルはため息をつく。
「うぁああぁぁああーーっ」
「アーメン・・・・・・でしたっ・・・け、ククク・・・」
 祈るように十字を書き、ネームレスは悲鳴をあげる輝夜を見てクスリと笑う。
 ゴンドラが直角の滝へ滑り落ちていく。
 ドバシャァアアンッ。
 乗る前に従業員から借りたレインコートがびしょびしょになってしまう。
「あ〜っ、右の方がよかったのか」
「でも、・・・左の・・・方が・・・楽しかった・・・です」
 悔しそうにする輝夜の姿にネームレスはまたもやクスリと笑った。
「―・・・それに・・・姉君、・・・あれは・・・・・・ソリットビジョン・・・です・・・よ。制御・・・してある・・・のです・・・から。―・・・あんなに・・・怖がらなく・・・ても」
「うっ・・・。そっそんなこと分かっているに決まってるじゃないか」
「ククッ・・・では、・・・そいう・・・ことに・・・して・・・おき・・・・・・ます」
「次行こう、次っ!」
 反論出来なくなってしまった輝夜は、別の場所に行こうと大きな声で言う。
「向こうでライブパフォーマンスやってるぞっ」
 ドラムやエレキギターで演奏をしている従業員たちを見つける。
「・・・テンペスト・・・です・・・か?」
 リズムカルに演奏されるテンペストの曲をネームレスは思わず聴き入る。
「ピアノやオーケストラもあるんだっけ?こういうのもいいな!」
 ズズタタタッ、ダダンッ、ジャジャジャカンッ。
「おぉ〜まさに嵐だなっ」
 演奏者たちは風の鎧を纏いブリザードの吹雪や、凍てつく炎で荒々しい嵐が表現され、輝夜も曲を聴きながらその光景を眺める。
「よかったぞ!」
 パチパチッと拍手をすると、彼らはぺこりとおじぎをする。
「さてと。ジェットコースターが面白そうだから行ってみるか」
「我も・・・それに・・・乗りに・・・・・・行きます」
「私はちょっと疲れてしまいましたから、少し休憩しますね」
「そう・・・です・・・か。では・・・姉君の・・・ところ・・・へ・・・・・・行って・・・来ます」
 ネームレースは輝夜の後を追い、ジェットコースターの乗り場へ走っていく。
「楽しそうですね、2人とも。いつまでもこの生活を続けたいものですが・・・」
「・・・体組織ノ侵食、止マリマセンカ?」
 レッドがベンチに座りぽつりと言うエッツェルの傍に寄る。
「ええ・・・まあ、あと数年は持つでしょう・・・いえ、持たせますよ、少しでも永く・・・ね」
 いつまで自分がその居場所にいることが出来るか、沈んでいく夕日を見つめて呟いた。