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クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…

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第25章 恥ずかしくてもマジメにバイト

「はぁ、いくら相手がいないからって・・・これはどいうことだ」
 充実したクリスマスを過ごそうとしても、悲しいことにその相手がいない境野 命(さかいの・みこと)は仕方なくサンタの衣装を着て、園内でアルバイトをしている。
 ぴくりと片眉を持ち上げ、ムスッとした顔で売店のレジの担当をしている。
 この日に限ってはサンタの格好をするのは問題ない。
 ならいったい何が不満なのか。
「なぁ・・・何か言わないのか?これについて」
「えっ、やっぱり突っ込みを入れた方がいいですか?」
 古ノ 館(いにしえの・やかた)は頬から冷や汗をたらりと流し、ボクが言わなきゃいけないんですか・・・というふうに言う。
「衣装を借りてきたのは雨藻だろ。なら言う相手1人だ」
「そうですけどね・・・」
「やっぱり命も館も女の格好が似合っているぜ!命はキレイ系で館は可愛い系だ。惚れそうになるぜ?」
 サンタの衣装を借りてきたその本人、天ヶ淵 雨藻(あまがふち・あまも)は2人の姿をじろじろと眺めてニヤつく。
「ってオイ!なんでオレがミニスカサンタ衣装でお前が男物なんだ!?」
 とうとう命は自分で雨藻に突っ込みを入れ、怒りを込めてダンッと足を踏み鳴らす。
「オレはス―ス―した格好したくないから男性用がいいんだ。見た目に合わせるのって大事だしな!キレイなんだからいいじゃないか」
「言ってることおかしくないか?変だと思わないか?見た目も実際も、俺はお・と・こ・だ!」
 雨藻の言葉に眉をぴくぴくとさせて苛立つ。
「ふぅ〜ん。今、男の娘とか流行っているから別によくね?」
「よくないしっ。だいたいそっちの方向へ転換する理由なんて、ミジンコほどもないからなっ」
「はぁ〜いお嬢さんたち、当店へようこそ。アクセサリー2点で100Gだな、風船をどうぞ〜♪」
 文句を言う命の代わりにレジをうち、雨藻が女性の接客をする。
「くっ、聞いてないしっ!」
 憤怒のオーラーをぶつけても、スルー怪人の雨藻に右から左へ聞き流される。
 むしろ雨藻は女性に対して丁寧に接客をしてマジメにアルバイトをしている。
「ちゃんとバイトしないと給料引かれるぞ」
「分かってるって。まったく・・・。あ、えっと・・・ペン5本だな。全部で100Gだ・・・。あの、この風船、当店のクリスマスプレゼント・・・。(あぁ〜恥ずかしい)」
 男の客に命が女なのか女装なのか気になられてしまい、思わず恥ずかしそうに顔を俯かせる。
「これやっぱりミニスカートなんですね、ボクも一応男なのですが」
 スカートの裾を摘んで館は顔を顰める。
「うっそぉ〜、そうだっけ?いいじゃないか、外見が女の子っぽいんだし。男の娘ってことで」
 初めて知ったかのように雨藻は目を丸くして驚くものの、館を新たな道に導こうとする。
「だから言ってるじゃないですか・・・ボクは男だって。え?っていうか男の娘・・・?それ、よく分からないんですけど」
「まったくちゃんレジ担当しない者でごめんな。帽子をお買い上げありがとうっ!はい、お嬢さんにも風船をプレゼント♪何か分からないことがあったら遠慮なくオレに聞いてくれよ」
 館たちを退かしてカタカタとレジうちをし、雨藻が買ってくれたお客さんにプレゼントする風船を渡す。
「ボクもスルーするんですか!?」
 すびーんっとショックを受けた館が涙目になってしまう。
「おっとごめん。接客で忙しくてな。可愛い館は泣かない〜泣かない〜♪」
 泣きそうになる彼の頭をよしよしと撫で撫でする。
「うぅ、そこで可愛いって言われると余計泣きたくなりますって」
「あの子可愛いね、一緒に写真撮ってくれない?」
「しゃ、写真ですか!?は、はい。いいですよ。えへへ」
 小柄な女の子に声をかけられ、館はそそっと傍へ寄り照れながら写真に写る。
「ねぇ、薄い感じのイエローと明るい感じのピンク、どっちがいい?」
「そうですね・・・ピンクが似合うと思いますよ」
「じゃあそれにするわ!」
「はい。80Gになります。まいどありがとうございました、クリスマスの風船をどうぞ」
 館は客が着ている服を基調に選び、レジうちをして袋に入れて渡してあげる。
「ほら館はあの可愛い格好で堂々と接客してるぜ。命だってキレイなんだからいいだろ。それとも、可愛いって言われたか?」
「もう我慢の限界だ。せめて俺と衣装を交換しろ、雨藻!」
 散々キレイだの可愛いだのという言葉を浴びせられ、プッツンとキレた命が怒鳴り散らす。
 店内の客に見えないようにレジの下へ引きずる。
「やかましい!オレがそっち着てもし似合わなかったらどうしてくれるんだっ。それにスースーするからイヤだっていってんだろ!」
「俺だってこんなスカートイヤだ!ずるいぞ雨藻!!」
 命は雨藻の服を掴み、衣装を剥がそうとする。
「衣装がこの3着しか余ってなかったんだ、仕方ないだろっ」
「ウソをつけ、ウソを!」
「本当だって。おいマジでやめろ、脱げるっ脱げるって。公衆の面前でオレに羞恥攻撃するつもりか!?ていうかそんな趣味があったのか!!?
「じゃあそういうことにしてやる」」
「なっ何だと!?早まるなっ。いいか、そんなことしたら命が捕まるんだからな?分かったらその手を離せぇええー!!」
 服を脱がそうとする彼の手を必死に振り払おうと抵抗する。
「俺たちに化粧させたあげく、ミニスカサンタの服で女装させるなんて。もし・・・ハイナさんにこんな姿見られたら・・・」
「ほぉ〜噂をすればなんとやらだな」
 服を取られそうになりながらも雨藻がニヤッと笑う。
「んなっ!?はっ・・・!!」
 雨藻の視線の先を見ると、店の外に命が憧れを抱いている女性がいる。
「しまった・・・こんな格好見られたら、俺は・・・っ」
 それが夢でも幻でもないことが分かった瞬間、相手から手を離してしまった。
「はぁ〜まったく、マジメにバイトをしないなんて。店長に言うぞ」
 さっと命たちから離れた雨藻は、フンッとそっぽを向く。
「(あぁ・・・そんな目で俺を見ないでくれ・・・!!)」
 羽織を着たハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)が眉を顰めて命をじっと見つめる。
「そこのバイトの子。扇子を買いにきたんでありんすが、選んでくれないか」
「(お、俺に言っているのか!?)」
 慌てて周囲をキョロキョロと見回して命は自分を指差し、“もしかして俺?”みたいにジャスチャーをする。
「そうでありんす、わっちの新しい扇子を選んで欲しい。今持っているのは古くなってしまってな」
「(そそそそんなぁ、こんな格好で接客出来るわけないって!ハイナさんにそっちの趣味があるのかなんて疑われた日にはーーーっ!!)」
 命はさぁーっと顔面を蒼白させ、慌てふためきレジの奥にあるスタッフルームへ逃げ込む。
「あっ!行ってしまった・・・。他の店で探すとするか」
 なぜ突然逃げてしまったのかと不思議そうに首を傾げ、ハイナは店を出て行ってしまった。