リアクション
卍卍卍 「どうしよう、ここドコなんだろう?」 天御柱学院からやってきた水鏡 和葉(みかがみ・かずは)は、マホロバ城内で遭難していた。 彼は確か大奥とは反対のほうへ進んでいたはずだ。 しかし、マホロバ城は他にも執政を執り行う表、将軍の居住する中奥と、巨大な建物が連なる。 また、歴代将軍が自分の趣味によって増改築を繰りかえしており、さながら『違法建築の玉手箱や〜!』である。 そして和葉は、自分が迷子であることを認めなかった。 「ボクは断じて迷子じゃないよ。ちょっと足を踏み外してるだけだよ」 「和葉……そっちは大奥へ繋がる廊下で、将軍しか通ることができない御鈴廊下ですよ。将軍にもし見つかったら……それこそ人生の足を踏み外しそうですよ」 マホロバ人の神楽坂 緋翠(かぐらざか・ひすい)が声をかけるが、和葉は聞いてないらしく、ひとりでふらふらと奥へと進んでいく。 緋翠が追いかけて和葉に追いついたとき、和葉は目の前の立派な着物を着た若者に道を尋ねていた。 「すみません、なるべく大奥から離れてて花火の良く見える場所、ご存知ですか?」 若者は答えず、じっと和葉を見つめている。 「あれ? お兄さん、何か悩んでる?」 和葉は、顎に手をあてて考え込んでいる背中をぽんと軽く叩いた。 「よく分からないけど、難しいこと考えすぎて自分のしたいことが出来なかったら、疲れるだけだよ? なんていうか『粋』じゃないよね! もっと、人生楽しまないと!」 「あなたは楽しみすぎですよ、和葉。……申し訳ありません、そのいでたち。あなたはもしや鬼城 貞継(きじょう・さだつぐ)様では?」 緋翠に名前を呼ばれ、貞継ははっと正気に戻ったようだ。 「(何だかさっきから変な感じだが)……いかにも、鬼城貞継だが?」 「え!? そうなの?もしかしていきなり有名人に会っちゃった? あ、ボク? 水鏡 和葉だよ! よろ……(ふがふが)」 緋翠は慌てて和葉の口をふさいだ。 彼の顔は若干青ざめており、最敬礼でお辞儀をする。 「この者はまだ子供ですから……どうかご容赦を!」 「まあ、今宵は無礼講だ。花火を観にいくのだろう? ついて参れ」 そういわれて、貞継の後を付いていく和葉と緋翠。 流石は将軍の知った廊下だ。迷いがない。 「ところで、大奥に行こうとしてなかったか?」 突然くるり振り返った貞継に、二人は全身で全否定していた。 「めっそうもない!」と、緋翠。 「そうだよ、女の集団なんて怖くて近づけないよ!」とは、和葉。 つい本音を口走った和葉だが、貞継は笑っていた。 「まあ、一理あるかな(さっき、うさぎ女にさんざん弄られたような気がする……)さて、花火を見るならもっと近くがいいだろう……」 |
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