百合園女学院

リアクション

被告人たち

＜ペルディータ・マイナ＞

百合園推理研究会のペルディータ・マイナよ。
現時点での情報を整理すると、ガーデンのギルドが行う裁判で、捜査参加メンバーのうちの七人が、被告人として法廷に立たされることが確定しているの。

シェイド・クレインさん・・・ニコ・オールドワンドくんへの暴行容疑よ。目撃者が多数いるらしくて、本人は、黙秘中。罪状を否定も肯定もしていません。弁護人は、ミレイユ・グリシャムさん。

赤羽美央さん・・・殺人未遂容疑です。被害者は、ニトロ・グルジエフさんとＩＤＥＡＬＰＡＬＣＥの管理人をしているガーネットさん。瀕死の状態の二人を雪だるまに隠した疑いをかけられてるの。
美央さんは、犯行を否定しているけど、状況的に二人をその時間にその場所に隠せたのは、美央さんだけだと言われています。弁護人は、ファタ・オルガナさん。

九条ジェライザ・ローズさん＆シン・クーリッジくん・・・死体隠蔽容疑です。パールさんの死体を隠した疑いをかけられてるけど、本人たちは全力で否定してる。弁護人は、ラムズ・シュリュズベリィさんとラヴィニア・ウェイトリーさんのお二人。ラヴィニアさんは、九条さんたちを罠にはめた真犯人を知っていると言ってるわ。

ゲドー・ジャドウさん＆ジェンド・レイノートくん＆シメオン・カタストロフさん・・・集団暴行、集団自殺、集団ヒステリーを指揮した容疑。ガーデンの住民たちをアパートメントの一室に集め、洗脳、恐喝等により、精神的に追い込み、殺し合い、自殺を行わせた、と言われています。
いまは本人たちが半狂乱状態。三者三様に、己の無実を声高に叫んでいるわ。
弁護人は、被告人からの依頼で、月詠司さんと推理研のウォーデン・オーディルーロキくん、それにこの二人のパートナーのパラケルスス・ボムバストゥスさんが務めます。
ガーデンの裁判のくわしいシステムは、よくわからないけど無作為に選ばれた十二人の陪審員によって、被告人の罰が決まるみたいなの。
地球の普通の刑事裁判における検察側の役割は、ガーデンのギルドの主要メンバーが行います。
開廷は、今夜十時、見学は自由よ。

今回の調査は、通信機器がほぼ使用できないせいもあってか、個々に分断されて、それぞれがまるで別の世界にいるみたい。

「ブリジット代表や春美さんたちとも連絡が取れないし、みんな、どうなっているのかしら」

「いくら巨大とは言っても、同じのアパートメントの敷地内にいるはずなのに、時間的、空間的に他のみんなとすごく離れている気がするのはなんでだ」

あたしとパートナーの蒼也は、カフェＣＨＲＯＮＯＭＥＴＲＥＳで休憩しながら、情報の整理と今後の捜査の方針を話しあっているところ。

「ペルディータ」

蒼也の雰囲気が変わったわ。お店の空気も。あたしたち以外のお客さんもそれを感じているらしくて、さっきまでにぎやかだった店内が、海の底に沈んだみたいに、静かに、重苦しくなった。
お店に、あの人たちが入ってきたの。
暗い赤のゴシックロリータのドレスと、服の同じ色の瞳をした無表情な少女たち。

ノーマン・ゲイン？

彼女たちは、小柄で変装好きな犯罪王が装う外見にとても似ているようにみえたわ。
一人なのにたくさん、は、彼のキャッチフレーズのようなものだし。

「よう。推理研の子か。そんなコワイ顔しなくて大丈夫だぜ」

「ああ。こいつらは、あいつは違うらしんだ。いまんとこ、俺とヒゲも襲われてねぇし」

彼女たちと一緒にＰＭＲの比賀一くんとハーヴェイン・アウグストさんもやってきたの。

「俺らもはじめこいつらをみた時は、だと思ったんだけどな」

「違うっぽいつうか。でも、なんか、違和感もあんだけど。だから、こうしてこいつらの行動をみてるんだけどさ。
こいつら、ガーデンの内の飲食店ヘルプをしてまわってるんだよ。
個人営業の店も多いから、休憩要員みたいな感じでな」

たしかに、彼女たちがきたら、普通のスタッフは姿を消して、いまは、彼女たちがウェィトレスをしたり、カウンター内で料理を作ったりしているわ。
あたしがあんまり見ていたからか、一人があたしの側にやってきました。

「お客様。どうかなされましたか」

「ごめんなさい。なんでもないわ。あなたたちが知っている人とあまりに似ているから、つい、みてしまって」

彼女は無機質な赤い瞳を、すぐ近くであたしにむけた。

「左様でございますか。私たちは、ａｒｔｉｆｉｃｉａｌ　ｒｕｂｙ。
ｔｈｅ　Ｂｌｕｅ　Ｃａｒｂｕｎｃｌｅ（青いルビー）では、ございません」



「ぶーとれぐ　ストーンガーデン　黒と青」前編終了