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すいーと☆ぱっしょん

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すいーと☆ぱっしょん

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「こちらで調べた事は皆様にメールで送るのであります。それまでは少し時間がかかるので、皆様も動いていただきたいのであります」
 スカサハは一度全員を見てそう言うと、再び画面へと目を向けた。
 それからはセイニィが見回るグループを分け、それぞれどこに向かうかを決めた。作戦も形を持ち始め、作戦会議は終了した。
「さて、それでは無事、行動指針も決まりましたし、私用を果たすとしましょう。朔さんとスカサハさんはマスクをお持ちですか?」
 突然、七日がそんな事を二人に尋ねる。
「持ってますけど…」
「スカサハも持っているでありますが」
 「ならば」と、七日はどこから手に入れたのか、呪いのキャンディを取り出した。一同、不思議そうな表情を浮かべるが、すぐさまそれが呪いのキャンディとわかり、慌てて一同部屋を出る。七日の質問の意味がわかったのか、朔とスカサハは焦る事無くマスクをつけて再び作業に取り掛かった。
 七日が飴を食べると、隣で立っていた由唯と雲母は苦笑を浮かべ、既に用意してあった、溶けた飴を取りだす。
 どうやらこの二人、七日に何かを頼まれたらしかった。


 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は、美緒がいるラナの家に来ていた。当然、美緒とラナに会いに来たわけである。が、そこにはラナはいない。当然美緒は、飴になってしまっている為、ノックをしても誰も出てくるはずもない。おかしいと思った小夜子は、仕方なく無断で家の中に入ったわけだが…。
「これは?…」
 部屋に入った途端、鼻につく甘い香り。美緒を探して家の奥へと進む小夜子は、リビングで飴となっている美緒を見つけた。
「美緒さんが飴になってる!?」
 慌てた小夜子だったが、気付くと彼女の胸を舐めていた。
「あ…いけないわ。これ、チョコの時と一緒ですわよね。だったら舐めては駄目ですわ」
 言いながら、近くにあったタオルで目から下を覆い、暫く考えこんでいた。すると、ノックなしでドアの開く音を聞いた小夜子。警戒しながら、彼女は玄関へと踵を返した。
「誰ですか?」
 意を決して侵入者らしき者の前に踊り出小夜子は、驚いた顔の正悟で構えを取ったままに返事を待つ。降参、の姿勢で苦笑を浮かべる正悟は、小夜子に今起っている状況を説明する。その間ずっと構えを解かなかった彼女だったが、正悟が敵ではないとわかったのか、彼に背を向けて、リビングへと戻っていった。
「うわぁ…本当にキャンディになってるよ」
「やっぱりこれ、美緒さんなんですか?」
「うん、俺も自分の目で見たわけじゃないんだけどさ。前置きなしでこれ見たら、俺どうにも出来ないかも」
 再び苦笑を浮かべる正悟の顔には、いつの間にかマスクがしてあった。当然小夜子も先ほど部屋に入ったときに巻いたタオルで口と鼻を隠したままである。
「この匂い、結構遠くまで届くみたいだからね、気をつけないと」
「私も微かに家の外から匂いを感じましたから、結構まずいですね」
 言いながら、二人は窓と言う窓、ドアと言うドア全てを閉じて回る。これはセイニィたちからの頼みであった。
「そう言えば、正悟さんは何故此処へ?」
「昼前だったか、ラナさんを見かけてさ。困ってるみたいだったから声をかけたんだ。そしたら美緒さんがこうなってるって聞いて、何とかしないと、と思ったんだ」
 正悟はそれから、誰が今この事件で協力関係にあるかを伝え、何故自分が此処に来ているのかを順を追って話していった。当然、戸締りをしながら、である。
「で、セイニィさんたちの作戦会議が終わってから、俺はこっちにきたってわけ」
「なるほど、では正悟さんと私で美緒さんを死守すればいいのですね」
「話では俺一人だったから、小夜子さんがいてくれると心強いよ」
 どうやら全ての窓、ドアの戸締りが済んだのか、二人は再びキャンディとなってしまった美緒の前に並び、まじまじと見つめる。
「早く治ってくれるといいね」
「そうですね」
「ん?気のせいかな、彼女の左胸、少し解けてる様な」
「あ、そ…それは」
 慌てながら、小夜子は氷術を使って美緒を冷やす。
「何も知らずに入ってきてしまったので、つい…」
「ま…まぁまぁ、前回同様みたいだし、キャンディを塗って治しちゃえば大丈夫だろ。時間は暫く、掛かりそうだしね」
 申し訳なさそうな表情を浮かべる小夜子と、苦笑しながらも彼女の肩に手を置き、励ます正悟。二人はキッチンへと向かい、修正する為に使う普通のキャンディの製作に取り掛かった。


 場所は変わって空京。此処でエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は首を傾げていた。隣に佇むファニ・カレンベルク(ふぁに・かれんべるく)は、エヴァルトがずっとその姿勢のままでいるのを、同じく首を傾げて見つめている。と、そろそろファニの方が首が疲れてきたのか、口を開く。
「ねぇねぇ、これは一体なんのおまじないなのかな?」
「何のまじないでもないけどな。ただ気になる事があるんだ」
 ファニの言葉に返事を返すエヴァルトは、そのままの姿勢で話を続けた。当然、その話を聞いている間、ファニも同じ体勢をしている。二人で並んで、同じ報告に首を傾げているのだから、傍から見れば異様以外のなにものでもない。
「気になる事って、どんな事?」
「今、ティセラさんからもらい物をしたんだが…何故、この貰い物を受け取った瞬間から『女王の加護』が反応してるんだ」
「ティセラさんって、あの、ロイヤル・ガードの、ティセラさん?」
「ああ、そうだよ」
「うわぁ、エヴァルト君って凄いんだねぇ、ロイヤルガードの人からプレゼントなんて」
 そこまで話して、ようやくエヴァルトが頭を元の位置に戻す。
「でも、なんかおかしいだろ。だってティセラさん、この中身なんて言ってた?」
「キャンディ」
「キャンディ作るのに絆創膏を使う様な傷、作るのか?普通」
「んー、ちょっと考えられないかもね」
 言い終わると、エヴァルトが元の体勢に戻っている事に気付いたファニも、慌てて首を起こす。と、その光景が先ほどから気になっていたらしく、二人声をかける青年がいた。
「すまないが」
「うん?」
 いきなり声をかけられたので、少し身構えながらファニが青年の方を向いた。
「我は草薙 武尊(くさなぎ・たける)と言う者だが、貴殿らは何か悩んでいるのか?」
 少しの間、エヴァルトとファニは黙っていた。その様子を見た武尊は慌てて補足を入れる。
「何、我は決して怪しい者ではない。ただ貴殿らが何か悩んでいた様に見えたのだ、力に我が少しでも力になれるのならば、助力しようと言うだけの話なのだよ」
「…なら、少し聞いてもらおうかな。俺はいきなりプレゼントを貰った。中身は飴って事なんだが、これを貰った瞬間に『女王の加護』に反応があって、あまり俺にとっては良いものじゃあ、ないらしいんだ。どうしたものかと思ってたところなんだが」
 掻い摘んでエヴァルトは武尊に説明をする。話を聞きながら、彼は暫くの間真剣な顔をして聞いていた。説明を聞き終わった後は、数回頷き、口を開く。
「なるほど、お困りの内容は大体ではあるが把握した。我が思うに、それは恐らく毒の類ではないだろうか。だから――」
 彼の言葉に被る様に、エヴァルトの携帯がメールの着信音を伝える。
「鬼崎さんからの、メールか。何々――…」
 彼がメールを読んでいく。全ての内容を読んだのか、簡単に返事を作成すると、それを朔へと送り、ファニと武尊を交互に見た。
「これが何だか、判った」
「ほう」
「飴、じゃないんだよね?」
「飴は飴であってる。が、呪いの飴だ。食べたら呪いでキャンディになってしまう。そんな呪いの掛かったキャンディらしい。食べなくて正解だったな」
「成る程。が、だとしたら厄介ではなかろうか。貴殿らはそれを口にはしなかったから良かったものの、このままではその飴は大勢の人の手に渡るだろう。そうすれば−−」
「被害が拡大って感じだねぇ、実際既に、被害は出てそうな感じだし」
 武尊に続いてファニが言った。
「どうやら既に、知人が数名キャンディになってしまったらしい。でも変だ。ティセラさんはそんな物を配るような人じゃないし、でも俺が貰ったのはティセラさんだった筈…」
「偽者、じゃないの?」
「その線は濃厚だと思うが」
 ならば、と、エヴァルトは暫く考えてから、提案をする。朔からのメールと、これからの行動を確認しながら、提案した。
「まずは武尊、どうせなら、俺たちを手伝ってはくれないか?」
「それは構わないが」
「俺はエヴァルト・マルトリッツだ。これから犯人を捕まえに行こうと思う。まずはこれを俺に渡したティセラさんのところに行こうと思うんだ」
「私、ファニ・カレンベルクって言うよ。なんだか凄い事になってるみたいだけど、エヴァルト君と一緒に頑張って!私も応援するから」
 二人は簡単に自己紹介を済ませると、武尊の言葉を待った。が、武尊自身はさして悩む様子もなく、即答に近い程の間で首を縦に振った。
「先ほどの言葉の通りだ。助力できるところはどこまでも助力するとしよう。ならば早速追うとしよう」
 エヴァルト、ファニと握手をし、先を進もうと歩みを進めた。が、肝心のエヴァルトはその場で固まっている。
「うん?エヴァルト殿、どうしたか」
「いや、これを貰ったのは、そこまで新しい話じゃないんだ。今からざっと、一時間ほど前だった気がするんだが」
「い、一時間と!?」
「そうだね、エヴァルト君、結構考え込んでたもんね。私に言ってくれれば一緒に考えたのにさ」
「それで、ずっとあの体勢だった訳だったか」
 思わず武尊は苦笑を浮かべた。が、ファニとエヴァルトは協力者の中に情報戦を得意とする朔と言う存在がいる、と言う事。そして彼女と連絡が取れると言う事を武尊に伝えた。三人は少し話し合った末、連絡がないまでは比較的遠い場所でティセラらしき存在を待ち伏せるとし、連絡を貰い次第現地に集合する事にした。