校長室
学園祭に火をつけろ!
リアクション公開中!
帰ってきたウォウルを見つけたティセラが、彼と話していると、廊下の方からティセラを呼ぶ声がした。 「ティセラねーさんじゃねーか!」 そう言って店の中に入ってきたのはシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)。彼女の後ろからはリーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)が、申し訳なさそうに着いてくる。 「あの、シリウス? お店に勝手に入っていくのはその――」 「あぁ、気にしないで結構ですよ」 シリウスを止めようとしているリーブラに、ウォウルはいつもの調子で声をかけた。 「は………は、そ、ですか」 「それで、ねーさんは此処で何をしてんだい?」 「わたくし、この方に急遽このお店の出店を頼んでしまいましたの。厳密にはわたくしではないんですけれど………それ、頼んだ手前、様子を――と思いまして」 「へぇ、んじゃあたしらも何か手伝える事があったら言いなよ」 「そうですの!? ありがとうございますわ」 そこで、シリウスが思い出したように呟く。 「そうだ、話は違うんだけど、この前リーブラがシャンバラのクラシックの楽譜を持ってきたんだ。ちょっとやってみたんだけどさ、今度聴かせるよ」 「それは楽しみですわね」 笑みを溢しながら会話をしている二人を、ニヤニヤと見詰めているウォウルはそこで、何かを閃いたらしい。一層口元を歪めて二人に声をかけた。 「ならばこの際、此処でそれを彼女に聴かせる、と言うのはどうです?」 「え? いつのはなしだよ。ってかあんた誰」 「僕の事などこの際どうでもいいでしょう。兎に角、折角ですから今から此処で、演奏会でもしてみましょうよ」 「あら、面白そう」 「えぇ! ねーさんまでそんな――」 「協力、していただけるんですよねぇ?」 「……………………わかったよ」 丸め込まれた感を残しつつ、シリウスが協力に承諾した。 「いやぁ、良かった。調度素敵なBGMが欲しかったところですし、助かりますよ」 「っとによ! じゃあその代わり、何か奢ってよ。此処喫茶店なんだろ?」 「し、シリウス………!」 「お嬢さん、先程からお気遣いありがとうございますねぇ、でも大丈夫ですよ。貴女もほら、そこにお掛けになって寛いでください」 「本当に、申し訳ありません………」 「いえいえ、こちらとしても協力いただけるんですから、そのくらいの事で目くじらを立てたりなど、しませんよ」 「良かったな、リーブラ。話のわかるにーちゃんで。で、あんた誰」 「困りましたねぇ、またそれですか」 「わたくし、お茶いれてきますわね」 早速、と言った様子でティセラが提案すると、リーブラが席を立つ。 「わたくしもお手伝いいたしますわ!」 「おやおや、気苦労の多い方だ。貴女のパートナーさんも」 「はんっ! で、なんだって此処でやれなんて急に言うんだい、にーちゃん」 「お忙しそうですから、ティセラさんも。貴女もそれを気にかけているようですし、チャンスがあるなら時間は惜しみ無く使うべきだ」 「……………それって、あんたまさか――」 「さぁ? 少なくとも僕は、BGMが欲しかった、ただのそれだけですよ」 二人きりになったウォウルとシリウスの会話は、そこで終了する。紅茶を入れてきたティセラと、彼女の手伝いをしに行ったリーブラの登場によって。