校長室
学園祭に火をつけろ!
リアクション公開中!
「紅茶とショートケーキ入りまーす」 「はーい」 友見が注文を伝えに帰ってくると、プレシアが早速注文の品物を準備し始める。 「あの、友見さん?」 「あ、はい」 「私、何をお手伝いすれば…………」 「えっと、でしたらこれをお客様にお運び下さい」 「わかりましたわ」 受け取った紅茶とケーキを盆に乗せ、今度はラナロックが客席へと向かった。 「羨ましいですよね、あの人」 「あら、どうしてです?」 「だって美人だし…………」 プレシアがふぅ、と息をつくと、友見が笑顔になってプレシアへ声をかけた。 「貴女も充分魅力的ですよ。人を羨む事などありません」 「先輩…………」 友見の言葉で思わず泣きそうにプレシア。だが、実際泣きながら帰ってきた存在が役一人。 「うぅ…………」 「どうしました? ラナロックさん」 「お前違う………と言われてしまいましたわ………うぅ………………」 どうやら彼女、何かしらが違ったらしい。 「ま、まぁ………お気を落とさず…………」 「まだまだお仕事はたくさんありますから」 懸命にラナロックをなだめている二人。と、そこで買い物からから帰ってきた勇刃が首を傾げながらその光景を見ていた。 「あ、健闘さん。お帰りなさいませ」 「お帰りなさいませ、お兄ちゃん」 「ただいま………って、これどんな状況なんだ?」 「あ、あの………別に先輩を泣かせたのは私たちではなくて」 「いや、てかまず何でラナロックさんが此処に? そして何故あっちの方でカルミちゃんがいじけてるんだ?」 友見とプレシアが代わる代わる、順を追って説明する。当然この間も店は空いているので、説明していない方が店番を行う、と言った感じだ。と、漸く説教が終わったのか、しょんぼりしているカルミと、まだ何処か言い足りなさそうな様子の結がやってきた。 「あれ、勇刃さん。おかえりなさい」 「ただいま。いや、カルミちゃんの暴走を止めてくれたんだって」 「うん。結構ギリギリだったけど」 「…………………そ、そうか」 と、そのタイミングで一組店にやって来る。 「メイド喫茶……本では読んだことあったんですけど初めてですね」 「我も初めてだ。ふむ、最近ユーリカが学んでいるという『めいど』が見られるのか」 「あたしは今日、しっかりとメイドさんを学ぶのですわ! 主に此処で」 「アルティシアも興味津々なのございます」 「あれ? 近遠さんだ! いらっしゃい! あ、じゃなかった、おかえりなさいませ!」 やって来たのは非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)、イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)、 アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)。結が出迎える形となり、その姿を見た四人がぽかんと口を開けていた。 「結さん、ですよね」 「うん」 「これはもう、正しくメイドさんですわ。まさかこんな身近にメイドさんがいるとは………」 「うーん、今日だけなんだけどね、私の場合」 「随分と可愛らしいのだな、めいどというのは」 「ありがとっ」 「なんだか面白そうでございますね」 「そう、かな? まぁ私は面白いけどさ」 丁寧に一人一人の言葉に返す結は、はっとして席を引いた。 「ま、まぁ兎に角ゆっくりとおくつろぎください。ご主人様にお嬢様!」 「お、お嬢様と!? この我が、か!?」 「うん! じゃ、なかった。はい!」 「男の人には『ご主人様』、女に人には『お嬢様』ですわね」 真剣な様子で、ユーリアは何処から出したのかメモを始めた。 「皆さん、とりあえず注文決めちゃいましょう。何にしますか?」 「あたしは何かジュースが良いですわ」 「我は紅茶だ」 「アルティアもお紅茶をいただきたいですわ」 「はーい、少々お待ちくださいませ」 注文を取り終わった結が奥へと消えていき、近遠たちはまじまじと店内を見渡す。 「それにしても、今日はやっぱりすごい人ですね」 「そうだな。我としても警戒をしっかりせねば」 「そんな事よりも次どこに行くかを決めておきませんか? ボクたちもお客で来たわけですし」 と、そこで直樹が店へと戻ってきた。なにやら面白そうな情報を仕入れて着たのか、顔が心なし含みのある笑顔に彩られている。 「おかえり、お兄ちゃん。どうしたの?」 「今ね、ウォウルさんたちに挨拶してきたんだけど、隣はこれから面白そうな出し物をするらしいよ。で、ウォウルさんたちからの伝言ね。ちょっと大きなめなBGMが流れてくるかもしれないけど、気にしないで欲しい。だって」 「へぇ! 何やるのかな、BGM…………ライブとか?」 「うん、急遽やることになったんだってさ」 「ほんとにっ!?」 結が大声に、店内の客が結たちの方へと向いた。 「結、声が大きいよ……」 「あ、ごめんなさい」 「どうしたんですか、結ちゃん」 「何かあったですか?」 彼女の声は店番をしていたプレシアとカルミにも当然届いていた訳で、不思議そうにやって来る。 「うん? どうしたんでしょうね、結さんたち」 「さては……何か危険なことが!?」 「イグナさん、今の声色からすると悪いような事ではないように思いますが」 首を傾げる近遠と、その声に目を細めるイグナ。彼女の考えすぎである事を伝えるアルティアは、特に慌てるようすもなく紅茶を啜っている。 「ねぇ、みんなで見に行ってみようよ」 「いや、結。僕たちは店番があると思うんだけどさ」 「お客さんをごと連れていってしまえば良いのでは?」 「それは違うと思うのですよ、プレシアちゃん」 と、そんなやり取りをしているところにラナロックと友見がやってきた。 「ら、ラナロックさん!? その格好………」 「あら、直樹さん。ご機嫌よう」 「それより、どうしました?」 どうやら心配になってやってきた二人に、結とプレシアが事情を説明する。 「あら、でしたら私たちが店番やってるので、見てきたらどうでしょう。ねぇ、ラナロックさん」 「ですわ。私も少しはお役にたちたいですし、皆様で楽しんでいただければそれが一番ですわ」 と、どうやら数名の客にもその話が聞こえていたのか、近遠が微笑みながら呟いた。 「お隣で何やら催し物をやるそうですよ」 「何をやるんですの?」 「何でも、ライブとか」 「ほう、音楽か」 「あまり激しい曲調は苦手なのですがね、アルティアとしては」 「ならば、こちらで漏れてきた音をBGMに楽しみましょう」 再び紅茶を啜った近遠の顔は、柔らかなそれのままである。